金融危機による世界的な景気悪化で企業倒産が増えている。東京商工リサーチの発表によると、二〇〇八年の全国の企業倒産件数(負債一千万円以上)は前年比11・0%増の一万五千六百四十六件に上り、五年ぶりの高水準となった。
負債総額は前年の約二倍の十二兆二千九百十九億円で、戦後七番目の規模。アーバンコーポレイションなど不動産や建設業を中心に上場企業の倒産は戦後最多の三十三件に達した。経営環境の急激な悪化に追い付けず、販売不振や資金難に陥って破たんする企業が続出する実態が浮き彫りされたといえよう。
業種別では、農・林・漁・鉱業を除く九業種で件数が前年を上回り、特に金融・保険業や運輸、不動産の増加が目立った。実体経済の悪化が業種や規模を問わず企業を直撃、不況型倒産の様相を見せている。年度末にかけ、経営が行き詰まる企業が増える可能性もありそうだ。
金融機関の貸し渋りなどで、中小企業の資金繰りは厳しい状況だ。日銀が昨年十二月に発表した企業短期経済観測調査(短観)でも、大企業、中小企業とも、資金繰りが苦しくなっていると判断する企業が増えた。
改正金融機能強化法が昨年暮れに施行された。地域金融機関などに公的資金を注入して融資余力を高めることで、中小企業への貸し出しにつなげるのが狙いである。しかし、現状を見る限り、有効に活用されているとは思えない。不良債権の増加を避けるため、金融機関が融資に慎重になっていることに加え、公的資金を受け入れれば国の監視下に置かれるとの懸念が根強いためだ。
苦境に立たされている企業の手元に資金が円滑に供給されるよう、公的資金の積極活用を促すべきだろう。金融庁は年度末を控え、金融機関が中小企業向け融資について適切に相談に応じているかどうか監視を強化する必要もあるのではないか。
政府は中小企業の資金繰り支援として昨年十月末に「緊急保証制度」を新設した。経済産業省によると、同制度による信用保証の承諾額は昨年末までに累計で約十七万件、約三兆九千億円に上った。政府、与党は保証枠を二十兆円に広げる方針だ。財源の裏付けとなる二〇〇八年度第二次補正予算の成立を急がねばなるまい。
倒産の増加によって、一層の雇用悪化も懸念される。早期の景気回復は見込めないだけに、金融の目詰まりをできる限り解消することが急がれる。
二〇〇七年十月に堺市で起きた小型ヘリコプター墜落死亡事故で、無資格の乗客を機長席に座らせ操縦レバーを操作させていたとみられることが、運輸安全委員会の調査で分かった。非常識さにあきれるばかりだ。
この事故は、大阪航空(大阪府八尾市)の小型ヘリが同市の南海高野線の線路上に墜落して炎上、機長と乗客の二人が死亡したものである。操縦訓練の希望者を対象に、訓練を受けるかどうかを決める下見的な飛行での悲劇だったという。
事故機は左右両方の席から操縦できる構造になっている。無資格者が座る際には操作できないよう一部を取り外すなどの処置が必要だが、講じられていなかった。安全委は、機体姿勢が変わった際に乗客が急激な操作をしたためメーンローター(主回転翼)がたわみ、機体の尾部を切断、墜落したとみている。機長は訓練飛行を指導する資格を持っていなかった。
同社は、十年以上前から無資格の乗客に操作させていたことを認めている。しかも、航空法に抵触していることを認識していたという。操縦訓練を受けたいと思わせるための行き過ぎたサービスだったのか。
乗り物の操作は慎重さの上にも慎重さが求められる。とりわけ、空の上では気象の変化などどんな突発的な事態が起きるか分からない。墜落事故にでもなれば、地上での巻き添えの危険性も生じる。堺市のケースでも、事故の数分前には上下線の電車が現場を通過していた。一歩間違えば、大惨事になっていたところだ。
決められたルールをきちんと守ることは、生命を預かるものの基本である。「これくらいなら」といった気の緩みは禁物だ。あらためて安全意識の徹底を求めたい。
(2009年1月15日掲載)