自殺を図って未遂にとどまった人が再び自殺を試みないよう、大阪府堺市は未遂者の情報を警察署から受け、多方面から支えるネットワークづくりを新年度から始める。個人情報保護のため、警察署は情報提供前に本人から同意を得る。警察署には救急搬送した消防や病院から未遂者の情報が寄せられるが、これまで自殺予防に生かされることはほとんどなかった。内閣府自殺対策推進室は「全国的にも例のない取り組みではないか」としている。
堺市によると、医療機関、多重債務問題を相談できる弁護士会、労働相談を受け付ける労働基準監督署やハローワーク、区役所の生活相談窓口などと連携したネットワークをつくっていく。
市の担当部署は警察署から未遂者情報を受けると、個々人の心理的状態などに応じて頻度を変えて電話や面談を試みる。それぞれの悩みや置かれた状況を整理し、関係機関と連携をとって必要な支援につなげてゆくという。
各警察署には、事件性の有無を確認するなどのため、自殺未遂者の情報が関係機関から寄せられる。精神保健福祉法では、警察官は精神障害のために自らを傷つける恐れがある人を保健所に通報しなくてはならないとされているが、それ以外の未遂者については特に継続的な関与をすることはない。特に独り暮らしの場合に、その後のケアの必要性が指摘されてきた。
大阪府警西成署(大阪市西成区)は数年前から独自に、落ち着いた様子の未遂者の情報についても本人同意を得た上で地元の保健福祉センターに連絡、同センターが主にうつ病など医療面からの相談に乗っている。07年は54人、08年は28人の未遂者情報が寄せられ、うち本人同意が得られたそれぞれ19人と7人の情報をセンターに伝えた。これまでにセンターにつないだ未遂者がその後自殺で死亡したケースは確認されてないという。