週刊・上杉隆

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【第61回】 2009年01月15日

それでもやらないよりはマシだ。
定額給付金への反論に答える

 文中にも具体的に示したはずだが、理解されなかったのだろうか。

 国会対策上、こうした反論をせざるを得ない民主党には同情を禁じえないが、本気でそう考えている人物が多いことに驚きを禁じえない。そうした論に立つ者は、役人たちが無駄に遣っている予算を減らすよりも、国民の懐を潤す予算を削る方がいいと言っているに等しい、ということに気づかないのだろうか。

 もっといえば、社会保障費、雇用対策費、学校校舎の耐震化費用などの予算が必要であるならば、第三次補正予算だろうが、本予算だろうが、別途組みなおして捻出すればいいだけの話なのである。

〈自民党の政策に擦り寄った〉

 こうした党派やイデオロギーに毒された、前世紀の遺物のような反論は、一体いつまでも存在するものなのだろうか。

 筆者は、文中でもこの政策を「杜撰な政策」だと指摘している。冒頭述べたように、法案が提出されたという「現実」を前提に論を進めたつもりだ。

 よって、自民党の政策だから賛成する、反対するなどという思考停止には一切陥っていない。党派的な人間は、ジャーナリズムが是々非々の立場を取るのだということに理解が及ばないのであろう。

〈公明党、創価学会の回し者〉

 反論するのも馬鹿らしいが、やはり同じ理由で思考停止に陥った人物の反論がこれである。政策で物事を見ないで、陳腐なイデオロギーで考える者が、こうした陰謀論に行き着くのだろう。健全なジャーナリズムとは、党派やイデオロギーを超越して、政策の中身で判断することである。その点、この批判に対しては答える必要もないと思われる。

 ついでに記しておくが、筆者は公明党員でもなければ、創価学会信者でもない。自身は無宗教だが、家は浄土真宗(西本願寺)であり、いかなる政党の党員でもないことを記しておく。

〈渡辺喜美氏の意見になぜ反対するのか〉

 渡辺氏の言うような「国民運動」にはならないと書いているのであって、氏の方針、行動を否定しているわけではない。定額給付金は、結局は国民にはプラスの政策である。そこが増税などとは違う。

 第二次補正予算の衆議院通過したきのう、反対討論を行なった民主党の細野豪志議員の語った次の言葉こそが、皮肉にも真理を突いている。

 「これまでの自民党の首相は、増税など、国民に不人気な政策を行なおうとして支持率が落ちたものだ。ところが、麻生首相は、おそらく史上初めて、定額給付金というばら撒きの“究極のポピュリズム”ともいえる政策をやろうとして支持率を落とした史上初めての首相だ。麻生首相が国民の支持を失ったのは、顰蹙を買い、その浅はかさを国民から見透かされたからではないか」

関連キーワード:景気 政治

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執筆者プロフィル

写真:上杉隆

上杉隆
(ジャーナリスト)

1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。テレビ局、衆議院議員公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者などを経て、フリージャーナリストに。「ジャーナリズム崩壊」「官邸崩壊 安倍政権迷走の一年」「小泉の勝利 メディアの敗北」「田中真紀子の恩讐」など著書多数。

この連載について

永田町を震撼させる気鋭の政治ジャーナリスト・上杉隆が政界に鋭く斬りこむ週刊コラム。週刊誌よりもホットで早いスクープ情報は、目が離せない。