週刊・上杉隆

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【第61回】 2009年01月15日

それでもやらないよりはマシだ。
定額給付金への反論に答える

 この種の反論の誤謬は、おそらく納税について「所得税」だけでものを言っていることから起きるのだろう。消費税を含む納税者にも行き渡ることを考えれば、むしろ定額減税よりも、定額給付金の方が弱者救済の意味合いも強まる。たとえば、定額減税だと納税していない生活保護受給者や定額所得者は恩恵を被らないが、定額給付金だとその限りではない。景気対策というよりも、社会保障という観点でいえば、なおさら給付金の方が有効である。

〈前代未聞の愚策。世界の笑い者だ〉

 定額給付金に近い政策は、少なくとも米国、ドイツ、フランス、韓国、オーストラリアで実施、もしくは検討されている。

 あらゆる方法で内需拡大を目指すということは、昨年11月のG20による金融サミットの合意事項である。だからこそ各国政府は、さまざまな景気刺激策を講じて、合意に近づけようと努力をしているのだ。むしろ、日本政府の対応が遅すぎるのである。

 ちなみにこの主張も、当コラムですでに指摘している。
http://diamond.jp/series/uesugi/10055/

〈定額給付金の2兆円は、将来の消費税に上乗せされる〉

 今回の定額給付金を含む第二次補正予算案と消費税はまったく無関係の予算案だ。定額給付金を実施したからといって、消費税率が上がるということは一切ない。そもそも定額で一回きりの2兆円給付のために、恒久的な消費税増税を行うこと自体が税制の理論からもナンセンスだ。

 また、言ってしまえば、そもそも定額給付金を配ろうが配るまいが、2011年からの段階的な消費税の増税は決まる方向にあるのだ。

〈給付金支給の事務経費に、850億円もかかるのだから辞めてしまえ〉

 これがもっとも多い反論だ。不思議なのは事務経費が国民個人の負担を増すものではないのにこうした議論が蔓延っていることだ。確かに事務費では850億円程度かかる計算だ。だが、そうであっても1万2千円は必ず配布される。事務費は、受給者への直接の負担ではないし、このような税の使い途について心配する必要もないのである。

〈2兆円は別のことに使えばいい〉

 この意見への反論はきわめて簡単だ。

 定額給付金を減らさなくても、節約できる予算は別にあるわけであるし、単に原資を別に求めればいいだけの話だ。

 その具体例のひとつを道路財源として前回のコラムの中でも示している。定額給付金を削るのではなく、より無駄遣いしている予算から2兆円を捻出すればいいだけの話である。

関連キーワード:景気 政治

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執筆者プロフィル

写真:上杉隆

上杉隆
(ジャーナリスト)

1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。テレビ局、衆議院議員公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者などを経て、フリージャーナリストに。「ジャーナリズム崩壊」「官邸崩壊 安倍政権迷走の一年」「小泉の勝利 メディアの敗北」「田中真紀子の恩讐」など著書多数。

この連載について

永田町を震撼させる気鋭の政治ジャーナリスト・上杉隆が政界に鋭く斬りこむ週刊コラム。週刊誌よりもホットで早いスクープ情報は、目が離せない。