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2009-01-15 21:14:12 stanford2008の投稿

桜井淳所長の東大駒場・本郷・弥生キャンパス巡り-新たな学問の立ち上げのために-

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桜井淳所長は、まだ、新年でもあるため、自宅と"水戸"で、もっとゆっくりしていたかったようですが、周りの雰囲気からしてひとりだけそうもできず、東京での用件が溜ったため、思い切って上京し、と言っても、特に、朝に弱い体質のために、ゆっくりと起き、水戸発9:50の特急に乗り(桜井所長は車で東京までの送迎を期待していたようですが・・・・・・)、12:15-13:00、東大駒場キャンパスで大学院総合文化研究科広域科学専攻相関基礎科学専攻(科学史・科学哲学)のR先生に合い、実り多い打ち合わせを終了し、すぐに、(いつものようにJR御徒町駅から東へ歩き、本郷三丁目交差点を右折し、東大本郷キャンパスへ)、つぎの目的地の東大本郷キャンパス法文二号館へ向かい、14:30-15:30(本当は14:00に面会の約束をしていたのですが、法文二号館の内部が迷路のようになっていたため、目的の研究室が見つからず、手間取ってしまったようですが・・・・・・)、大学院人文社会科学系研究科のH先生に会い、神学について、普段聞きたいと溜め込んでいた質問事項を一気に吐き出し、研究着手のための次のステップの模索に入り、その後、同キャンパスの最近建設された建物等を見学後、(東大本郷キャンパス正門からさらに東へ)、次の目的地の東大弥生キャンパスにある地震研究所二号館に向かい、弥生キャンパスと言っても、原子力関係の建物や施設のある弥生キャンパスには、過去、約30年間に、数十回も訪ねていましたが、今回の弥生キャンパスは、言問通りで隔たった農学部のある弥生キャンパスの方で、地震研究所は、農学部建物の東にあるグラウンドのさらに東にあるキャンパス最東端の建物で、そこで、16:30-17:30(本当は16:00の約束でしたが、J先生の会議が延びてしまい、待っていたそうですが・・・・・・)、J先生にお目にかかり、東大大学院総合文化研究科でまとめた学位論文をいただき、まとめの過程で経験したことやいまの研究テーマの地震予知について聞く等、実り多い時間を過ごすことができ、帰りは、最初、来た道を辿りJR御徒町駅までと思っていたようですが、昔と違い、やや距離を感じていたため(昔は、まったく、疲れを感じませんでしたが、今回は、やや、距離があると感じたようです)、弥生キャンパスの最東端の出口から坂を南に下り、近くの地下鉄千代田線根津駅に行き、そこから、西日暮里へ、そして、JR山手線で上野駅、そこから18:30発の特急で水戸へ向かいましたが、大変建設的な内容の打ち合わせで、これまで経験したことのない神学の研究の話等(ハーヴァード大・イェール大・プリンストン大と東大の神学研究の共通点と相違点については、いずれ、稿を改め、詳述するとのことですが・・・・・・)、刺激的な話題もあり、大変有意義な1日を過ごすことができたと神に感謝していました。

2009-01-14 14:55:09 stanford2008の投稿

桜井淳所長の最近の講演内容-ベック『危険社会』に象徴されるリスク管理社会の情報の発信法と信頼性-

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【講演要旨】


Ⅰ. PSA手法による原子力発電所の災害評価(レベル1、レベル2、レベル3、レベル4)


原子力発電所の機器・配管等の構成は、非常に大きく、しかも、複雑であるため、個々の機器等の信頼性評価を実施することが難しく、1970年代初めまで、炉心溶融の起因事象の抽出や発生頻度を評価して、環境への現実的な影響評価をすることは、できなかった(AEC 1957)。


ところが、1971-1974年、米原子力委員会(組織改正のため、途中、原子力規制委員会とエネルギー研究開発局に分離)は、原子力賠償法の再検討のため、NASAでロケット打ち上げの信頼性評価のために利用されていたふたつの解析手法であるイベントツリー(Event Tree)法とフォルトツリー(Fault Tree)法を採用し、軽水炉(PWRとBWR)の炉心溶融となる起因事象を抽出し、その発生確率を確率論的安全評価法(Probabilistic Safety Assessments ; PSA)で算出した(AEC/NRC 1975)。その研究では、炉心溶融のプロセスと発生確率の算出に成功したものの、まだ、原子炉格納容器の損傷プロセスや発生確率まで検討されていなかった。


その後、PSAの研究が進み、欧米先進国と日本では、原子力安全規制に採用されるに至っている。今日、PSAは、レベル1(炉心溶融評価)、レベル2(原子炉格納容器機能喪失プロセスと放出放射能ソースターム評価)、レベル3(環境被ばく評価)、レベル4(地震影響評価)から構成されており、レベル4については、着手したばかりであって、今後の課題として取り上げられている。


Ⅱ. AECによる「原子炉安全性研究」の概要


AECは、原子力賠償法の再検討のための参考資料にすべく、1971-1974年(佐藤 1984 152)、MITのノーマン・ラスムセン教授の指導の下に、AEC安全研究局のサウル・レビン次長が総括して、数百万ドルと延べ数百名の研究者を投入して「原子炉安全性研究」(AEC/NRC 1975)を実施した。「原子炉安全性研究」とは、当時、不可能とされていた100万kW級軽水炉の炉心溶融の発生確率を算出し、あわせて、原子炉格納容器機能喪失にともなう放射能大放出事故(代表的なPWR2型事故とBWR2型事故等)の影響を評価した歴史的画期的研究である。


その後、研究は、継続され(NRC 1990)、(1)サリー1号機(WH, 80万kW, 1972.12.22運開)、(2)セコヤー1号機(WH, 110万kW, 1981.7.1運開)、(3)ザイオン1号機(WH, 110万kW, 1973.12312運開)、(4)ピーチボトム2号機(GE, 110万kW, 1974.7.5運開)、(5)グランドガルフ1号機(GE, 120万kW, 1985.7.1運開)、について、より詳細な情報が得られるようになった(桜井 1994)。なお、サリー1号機とピーチボトム2号機においては、地震等の外部事象も考慮されている。


Ⅲ. 日本におけるPSA手法による原子力発電所の安全解析の現状と課題(桜井 1994)


以下の(1)-(8)についてはNRC 1991に記載されている。以下、簡潔に、プラント名・解析チーム及び期間・PSAレベル・解析目標及び結果の利用について記す(桜井 1994 98)。原研は、研究機関であり、独自の計算コードの開発は実施していたものの、実証解析においては、産業界より遅れていた。(1)-(8)において、レベル3まで検討したのは、(5)の事例のみであり、環境被ばく評価の情報管理がいかに難しいか証明している。


(1)ABWR(柏崎刈羽6号機と7号機) 東京電力1984-1988 レベル1と2 最適概念設計を見出すためと補足情報を提供するため。

(2)BWR-3(福島第一1号機等),-4(福島第一2-5号機等),-5(福島第一6号機及び福島第二1-4号機等等) 日本のBWR産業グループ1984-1988 レベル1と2 システムの差を評価するためと補足情報を提供するため。

(3)代表的な4ループのアイスコンデンサ型(大飯1-2号機)及び大型ドライ型原子炉格納容器(大飯3-4号機) 日本のPWR産業グループ1984-1990 レベル1と2 運転中のプラントの炉心損傷を評価するためと補足情報を提供するため。

(4)BWR-5MK2モデルプラント(福島第一6号機及び福島第二1-4号機) 原研1987-1989 レベル1 原研で開発したPSA手法の実機への適用性及び有用性を実証するため。

(5)「もんじゅ」 動燃1982-1992 レベル1と2と3 プラントの総合安全評価及び運転管理に役立つ情報を提供するため。

(6)110万kW級BWR 原子力技術機構1987-1989 レベル1と2 規制当局にPSA情報を提供するため。

(7)110万kW級PWR 原子力技術機構1987-1989 レベル1と2 規制当局にPSA情報を提供するため。

(8)130万kW級BWR(柏崎刈羽6号機と7号機) 原子力技術機構1986-1990 レベル1 許認可手順のバックアップのため。


京大炉の瀬尾健(故人)は、「原子炉安全性研究」と同時に(小出 2008)、決定論的手法でのレベル3の評価手法の開発を実施していた。そして、その手法と開発と実証解析の継続は、同僚の小出裕章により実施されている(小出 2008)。


(9)PWRとBWR 京大炉1970年代半ばから現在 レベル2と3 評価手法の開発と市民へ情報提供するため。


Ⅳ. 原子力発電所の災害評価情報の発信法と好ましい議論の仕方




Ⅴ. 信頼性の高い発生確率算出と感度解析の必要性




Ⅵ. 考察



文献

AEC 1957 ; Theoretical Possibilities and Consequences of Major Accidents in Large Nuclear Power Plants, WASH-750.

AEC/NRC 1975 ; Reactor Safety Study, WASH-1400, NUREG 75/014.
佐藤 1984 ; 『原子力安全の論理』、日刊工業新聞社。

NRC 1150 ; Severe Accident Risks : An Assessment for five U.S. Nuclear Power Plants, NUREG-1150.

桜井 1994 ; 『原発システム安全論』、日刊工業新聞社。

NRC 1991 ; Proceeding of the CSNI Workshop on PSA Application Limitations, NUREG/CP-0115.
小出 2008 ; 私信及び『科学・社会・人間』(2008年3月号)通算105号。

2009-01-13 12:28:42 stanford2008の投稿

桜井淳所長から東大大学院人文社会系研究科のH先生への手紙 -お言葉に甘えて研究室訪問いたします-

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H先生



今週の15日(木)14:00過ぎに訪問したいのですが、ご都合はいかがでしょうか。東大HPには研究室がある建物名と階が記されておりませんが、どの建物でしょうか。

同日は、12:15-13:00の間、駒場キャンパスで、学位論文の指導教官に会うことになっており、16:00以降、本郷キャンパスの人文社会科学系研究科のM先生(社会科学で学位論文をまとめる時に最初に相談した研究者)と東大地震研の友人(学位論文『プレートテクニクスの受容と拒絶』東大出版会の著者)に会う予定になっております。



桜井淳

2009-01-12 18:28:16 stanford2008の投稿

桜井淳所長から知り合いの東大のJ先生への手紙-人間と神の境界の世界に入り込みたい-

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J先生


いま、学位論文のつぎの構想を進めています。それは研究テーマ「ローマ帝国の歴史と文化及び国教としてのキリスト教」です。趣味として、楽しみながら、文献を読み、神学について、考えてみたいと思っています。変なことを言うようですが、人間と神の境界の世界に入り込みたいと念願しています。東大大学院人文社会系研究科のH先生に連絡し、目的を説明し、今月中に会うことになっています。神学の研究を楽しみながら進めたいと思っています。


桜井淳
2009-01-11 18:29:29 stanford2008の投稿

桜井淳所長の最近の講演内容-高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の運転再開の可能性と今日的意味-

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【講演要旨】



Ⅰ. 世界の高速増殖炉開発


軽水炉(Light Water Reactor ; LWR)では、燃料として、ウラン濃縮度2-4wt%の微濃縮ウランを利用するが、核分裂で発生する熱エネルギーの約80%は、ウラン235の熱核分裂により、残りの約20%のうちの約10%は、ウラン238の0.1MeVに"しきい値"を有する高速核分裂により、残りの約10%は、炉心で新たに生成されたプルトニウム239等の熱核分裂やプルトニウム240等の高速核分裂による。よって、軽水炉では、ウラン235だけが燃料になるわけではなく、ウラン238もそれなりの役割を果たしていると言える。


しかし、ウラン238を燃料として有効に利用するには、そのまま燃焼させるのではなく、高速増殖炉(Fast Breeder Reactor ; FBRの炉心の上下周囲に配置されるブランケットで高速中性子を吸収させ、効率よくプルトニウムに変換し、それを高速増殖炉の燃料にし、そのプロセスを繰り返すことによって、ウラン238を効率よくプルトニウム239等に変換することにより、軽水炉だけでウラン資源を利用すれば、100年くらいであるにもかかわらず、プルトニウムに変換できれば、数百年も利用でき、はるかに長期的に利用できることになる。軽水炉では、燃焼した燃料の60%くらいしかプルトニウムができないが(転換比0.60)、高速増殖炉では120%にも達する(増殖比1.20)。高速増殖炉を運転すればするほど核分裂性物質が増えることになる。


燃料を効率よく増殖するには、工学的・炉物理的にそれなりの工夫が必要になり、"中性子再生率"(最低2以上でなければならず、中性子1個で核分裂を維持し、もう1個でプルトニウムを生成する)の高い核分裂性物質と"中性子エネルギー領域"の選択が欠かせない。具体的には、ウラン233は、熱中性子エネルギー領域で"中性子再生率"が2を越えるため、燃料としてウラン233、ブランケットにトリウム232を利用すればよく(熱中性子増殖炉)、プルトニウム239は、高速中性子エネルギー領域の10keV以上で"中性子再生率"が2を越えるため、燃料としてプルトニウム239、ブランケットにウラン238を利用すればよいことになる(高速中性子増殖炉、ふつう、中性子を省略して高速増殖炉と言う)。


世界的には高速増殖炉の開発が進められてきた。世界で最初に試験的に原子力発電を実現したのは、軽水炉ではなく、米国のごく小型の高速増殖炉であった。しかし、高速増殖炉は、炉心冷却材に空気や水と爆発的反応を起こす液体ナトリウムを利用するため、技術的困難が付きまとい、また、核兵器転用の可能性もあるプルトニウム239を燃料にするため(商用再処理で抽出したプルトニウムでは、プルトニウム238と240の割合が多いため、それらによる崩壊熱により、現実的に、核兵器の製造は、困難と推定されており、現に、世界には、そのような物は、ひとつも存在していない)、政治的思惑もあり、米国は、核不拡散を目的に、1977年に、プルトニウム利用技術の制限策を施した。そのため、1980年代後半から1990年代初めにかけて、英仏独は試験中と運転中の高速増殖炉を廃炉にしてしまった。


現在、運転中ないし運転準備中の高速増殖炉は、ロシアと日本にしかない。韓国・中国・インドは、将来利用すべく、研究・開発中である。その意味で、日本の高速増殖炉原型炉「もんじゅ」(原子力機構保有、電気出力28万kW)の技術的位置づけは、将来の実用化を視野に入れれば、国際開発センター的な意味合いもあり、経験・ノウハウの蓄積や人材養成を行う上で、重要な役割を担っていると言える。


Ⅱ. 「もんじゅ」の現状と課題


「もんじゅ」は、順調に行けば、1995年臨界、1996年までに試運転を完了し、設計の妥当性が確認でき、残る課題として、定格運転でのプラントの信頼性の確認、それに、将来のための研究や技術開発、さらに、保守・点検・運転のための人材養成に向けられるはずであった。しかし、1995年に実施された低出力での臨界試験の段階で、二次系冷却配管で液体ナトリウム漏れが発生し、火災事故に陥ってしまった。液体ナトリウム漏れ・火災事故としては、決して、大きくなく、深刻な内容ではなかったにもかかわらず、当時の所有者の動燃の情報発信の不適切さのために、地方自治体からの不信感だけでなく、広く社会の強い批判にさらされてしまった。


純粋に技術的観点からならば、1年間で修理・運転再開が可能であったにもかかわらず、社会からの不信が解けず、地方自治体からの運転同意が得られなかったために、1995年以来今日まで、約13年間も停止を余儀なくされている。その間、動燃は、システムを維持するための電力費用等により、年間約100億円もの維持費を費やしてきた。そして、現在の所有者の原子力機構により、運転再開の準備が進められており、多くの不手際があったものの、今秋にも運転再開できそうな段階に達している。これまでに多くの安全対策のための時間があったにもかかわらず、最近、多くの液体ナトリウム漏れ検出器の不作動や排気塔の金属円筒部の減肉・腐食が発見される等、技術管理の注意力と技術力のなさが目立っている。


「もんじゅ」の開発は、"ナショナルプロジェクト"としての国産動力炉開発にもかかわらず、開発者の能力不足と責任感のなさにより、注ぎ込んだ税金に匹敵する成果がまったく上がっていない。そのため、開発者がどのような言い訳をしようと、"ナショナル・プロジェクト"としては、歴史的・技術的に見ても、失敗例と位置づけられる。「もんじゅ」の建設費は、契約当時の金額で、100万kW級軽水炉2基分に匹敵する7000億円にも達するが、現在の貨幣価値に換算すれば、1兆円にも達する。原子力産業界からは、当時、前例のない技術であったため、開発費込みの金額が上乗せされており、動燃の技術力のなさのためもあって、いいようにカモにされてしまい、適正価格の倍も騙し取られてしまった。動燃設立時に採用された"業務委託方式"による"参謀本部的役割"は、日本の技術力の総力を吸収・活用するためとの美辞麗句が掲げられたが、実際には、税金としての開発予算を合法的に産業界に横流しするための公金横領方式に他ならなかった。


Ⅲ. 耐震安全性


「もんじゅ」は、日本でも有数の地震地帯の敦賀半島先端に設置されており、一昨年から適用されている新耐震指針により基準地震動(Seismic Special ; Ss)を算出すれば、600ガルにも達する。原子力発電所の機器・配管等は、高温にさらされており、運転停止・起動を繰り返す中で、金属は熱膨張をするため(特に、「もんじゅ」の配管等は、500℃という高温であるため、30cm差もの収縮が繰り返される)、地震対策として、単純に配管等を金具で強く固定することは、できない。もし、固定すれば、かえって配管に応力集中が発生してしまい、それを繰り返すことにより、亀裂の原因になり、大規模な損傷や破断に結び付き、大事故に陥る。


「もんじゅ」の配管は、高温時に、自由に伸縮させるため、また、圧力が高くないため、配管の厚さは、驚くほど薄く、わずか数mmに過ぎず、また、延びをうまく逃すため、配管は複雑に曲げてあり、固定のない配管が地震時に激しい繰り返し応力にさらされたならば、破断の恐れがある。世界でも高速増殖炉を地震地帯に設置した経験は、なく、これからの「もんじゅ」の運転には、大きな不確実性が課せられていると言える。「もんじゅ」をいまの場所に設置したのは政策的誤りであった。


Ⅳ. 核燃料サイクルの社会学


核燃料サイクルの要の高速増殖炉と再処理施設をどのように位置づけ、将来に備えるかは、世界の政治・経済を考慮したならば、意見の別れるところであり、もし、プルトニウム利用技術の拡大を図っても、マイナスの社会的要因が生じないならば、止める必要はないが、実際には、技術的にも、経済的にも、社会的にも、政治的にも、問題が山積しており、欧米先進国のいまのような選択は、むしろ、賢明であるとさえ思える。日本が政策的に優れているとは言えないだろう。欧米の関係者は、世界の現実を直視して、途中で止める勇気を備えているが、日本の関係者は、どのような問題が生じようが、世界の状況が一変しようが、たとえ、誤りに気づいても、途中で止めようとしない。さらなる誤りと浪費を繰り返す。「もんじゅ」の運転再開は、原子力界の古い価値観の呪縛に支配されている。


Ⅴ. プルトニウムの政治学


特別な運転パターンを選択しない限り、通常のパターンの運転での商用軽水炉で生成したプルトニウムからは、効率がよくて信頼性の高い実用的な核兵器を製造することは、まず、できないと考えてよいだろう。世界には、軽水炉で生成したプルトニウムを利用して製造した核兵器は、ひとつもないことが、そのことの証明になっている。1962年に米国が実施した原子炉級プルトニウムによる核実験は、軽水炉のプルトニウムではなく、英国の軍事用・発電用二重目的炉で生成された物で、どちらかと言えば、兵器級に近い約80%のプルトニウム239組成になっていた。


困難の原因は、主に、プルトニウム238と240の崩壊熱によって、少なくとも、発熱量が200W、多くのプルトニウムを利用する大型核兵器の場合ならば、発熱量は、数百Wにも達し、たとえ、少ないケースでも、融点の比較的低いプルトニウムでは、溶けてしまう。高速増殖炉のブランケット燃料には大量の超兵器級(96wt%、兵器級は93wt%)のプルトニウム239が生成される。世界が、なぜ、殊の外、高速増殖炉と再処理施設を問題視するかと言えば、きわめて良質のプルトニウムが大量にできるためである。

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