小平市の写真家、前田敏行さん(52)が、小金井市中町4の回帰船保育所に通う子どもたちを、12年も追い続けた写真集「こどもたちの声がきこえる」(クレイン)を出版した。近くの野川や武蔵野自然公園でのびのび遊ぶ姿が140枚のモノクロ写真で表現され、「子どもたちの躍動感が伝わってくる」と評判だ。【中村牧生】
回帰船はNPO法人が運営する小規模保育所。1974年から0歳から6歳までを一つのフロアで保育する「異年齢保育」を続け、毎日のように外で遊ばせる野外保育にも力を入れている。
前田さんが撮影を始めたのは、96年に都が0歳児以外の保育に対する補助金を減らすと発表したことがきっかけ。知人に頼まれ、小規模保育所の実態を撮影するために通い始めた。小金井市が肩代わり支給することで決着し、回帰船の存続が決まったが、撮影は続けてきた。
前田さんは「野性味あふれる子どもたちの表情は新鮮で、一緒に遊びながら撮影することは、とても楽しく、大きな喜びでした」と理由を話す。子どもが犠牲になる事件の増加や個人情報の保護意識の高まりなどから、街角で子どもを撮影すること自体が難しくなっていた事情もある。「昔の子どもはワイルドでした。だんだんおとなしくなっていますね」と前田さん。
問い合わせはクレイン(0422・28・7780)まで。
〔都内版〕
毎日新聞 2009年1月15日 地方版