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わびしい、けど、あくまで前向き カソウスキ

2008年03月06日15時06分

 最近注目されている新鋭作家、津村記久子さんの中短編小説集『カソウスキの行方』(講談社)が刊行された。芥川賞候補にもなった表題作は、わびしいOLの暮らしをユーモラスに初々しく描き出した好編だ。

写真津村記久子さん=安藤由華撮影

 津村さんは大阪市在住。05年、「マンイーター」で太宰治賞を受けてデビュー、受賞作は『君は永遠にそいつらより若い』(筑摩書房)と改題して刊行された。

 中編「カソウスキの行方」は、余計な世話を焼いたせいで郊外の倉庫勤務に左遷された28歳の会社員が、人生への意欲を高めるため、同僚で唯一の独身者であるさえない男性を〈仮想的に好き〉になる話。

 津村さんは「私は誤解を受けやすく、自分を悪く思っているんじゃないかという仮想敵を設定しがちなんです。でも、そのことで〈好き〉を相対的に高められ、生活が楽しくなる」と語る。「仮想敵を設定して味方の団結を強めるのは、社会でもよくあることです」

 主人公は別にヤケなのではなく、あくまで前向き。哀感と笑いを絶妙に調和させながら、ユニークな“恋”のてんまつを描く。

 「内にいたらしんどいことも外から見たら面白い。人に言われたのですが、私は『困り方が面白い』らしいんです。困惑や心配、疲れることが多いのは認めた上で、どんなふうに生活するかを書いてゆきたい」

 英国のコメディーグループ「モンティ・パイソン」が好きだという。

 「おかしなことが積み重なって、混乱したまま終わる。普通の人生でもトラブルは重なるもので、きれいに収束はしない。きれいに終わらないことを書きたいです」

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