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2009年1月15日

◎またもや野町広小路 改善されぬ排水性舗装の弱点

 雪が降れば繰り返される同じ光景に、利用するドライバーもうんざりしているはずだ。 金沢の大動脈である国道157号の野町広小路交差点付近でまたもや踏み固められて凍結した圧雪が路面に残り、通勤時間帯の渋滞に拍車をかけた。

 原因の一つは野町広小路交差点付近の排水性舗装にあるといわれる。水を地下に浸透さ せるこの舗装は雨天時に効果を発揮する一方、融雪装置の水も吸収され、路面に雪が残りやすい弱点が指摘されていた。同様の問題が起きながら一向に改善されないのはどうしたことか。肝心な時に融雪装置が機能しないとすれば道路構造の見直しも避けられない。管理体制に甘さがあったなら道路管理者は早急に是正策を講じてほしい。

 排水性舗装は雨天時に水を吸収するため運転しやすく、水はねを防止できる道路整備手 法として普及した。騒音を抑える効果も実証されている。だが、雪国にとっては利点ばかりでない。融雪装置で散水しても水が地下にしみ込み、雪が解けにくい場合があり、雪の水分が吸収され、乾いた雪が圧雪状態として路面に残りやすい。そもそも道路の排水性の高さと散水は反する機能であり、降雪時の弱点は全国一律で進められてきた道路整備の落とし穴ともいえる。

 排水性舗装の道で融雪装置を生かそうとすれば、まとまった水量が必要となる。野町広 小路交差点付近は融雪装置の水源となる地下水が不足しており、管理する国土交通省金沢河川国道事務所によると、これ以上、井戸を掘る適地もなく、散水量には限界があるという。

 このような融雪機能が十分でない道路で除雪をぬかりなく進めるには、機械除雪や凍結 防止剤の散布などを組み合わせた臨機応変の対応が求められる。今回は融雪装置の散水量の設定や機械除雪のタイミングなどに課題を残した。

 地方分権論議では、直轄国道の国から地方への移譲が課題となっている。住民に近い自 治体ほど生活に密着した管理ができるというのがその理由だが、今回の問題は全国一律的な道路行政の発想では雪国の除雪対策はおぼつかないことをあらためて示している。

◎介護の人材確保 腰を据えて転職支援策を

 全国知事会が緊急雇用対策本部の初会合を開き、今後の取り組み指針の一つとして、深 刻な人手不足が続いている介護・福祉分野への就職あっせんを効果的に行うことが盛り込まれた。製造業などで職を失った多数の非正規労働者らの中から、介護職に就く人が一人でも多く出てくることが望まれる。

 世界的な不況で雇用環境が急激に悪化した今は、慢性的な人材難の介護労働に目を向け てもらう好機といえる。ただ、ものづくりの現場から要介護のお年寄りらの世話をする職場への転職は、適性の問題などもあって言うほど簡単ではなく、転職希望者の増加を期待し過ぎてもなるまい。

 バブル崩壊後の就職氷河期といわれたころは、介護保険制度の開始時期と重なって若者 らの間で介護職志向が高まった。しかし、雇用環境が徐々に改善する一方、介護労働の厳しさが知られるようになってから介護福祉士などをめざす若者は大幅に減少した。介護関係の資格を持ちながら離職した人も多いのが実情である。

 現在は就職氷河期の再来ともいわれ、介護職に再び関心が集まっているが、それだけに なお就労支援の取り組みが上滑りしないよう、腰を据えて介護人材確保の努力を官民一体で強めたい。

 介護職への転職支援策として、例えば東京都はホームヘルパーをめざす失業者に対し、 資格取得に必要な講習費を全額肩代わりし、資格取得者を採用した事業者に助成金を支給する施策を新年度に実施するという。雇用と介護の一石二鳥をねらう試みである。財政の問題がつきまとうが、他の自治体も失業者や学卒者を介護職に導き、定着を図る仕組みを考えてもらいたい。国の資金で各県に設けられる緊急雇用対策の基金活用策の中で検討してほしい。

 介護事業者に支払われる介護報酬が新年度から3%引き上げられることも一つの追い風 である。多くの事業者は苦しい経営を余儀なくされているが、今回の報酬引き上げを確実に介護職員の賃金に反映させるなど、待遇の改善に一層努めてもらいたい。


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