今月からさよなら公演がスタート。昼夜に人気演目が並んだ。
昼の最初が富十郎の翁(おきな)、梅玉の三番叟(さんばそう)、松緑と菊之助の千歳(せんざい)による「式三番叟」。
続いて「俊寛」。自分の身代わりに千鳥を赦免船に乗せる提案を退けられ、瀬尾に足げにされた俊寛が殺害を決意する際の一瞬の表情など、幸四郎が心情を細やかに見せた。芝雀の千鳥がかれんで成経を思う一途(いちず)さが出た。染五郎の成経、歌六の康頼、彦三郎の瀬尾、梅玉の丹左衛門と周囲もいい。
次が「十六夜(いざよい)清心(せいしん)」。気の弱い清心の変心を菊五郎がこっけいさと人間味を見せて描き、時蔵の十六夜に、はかなさがある。吉右衛門の白蓮(はくれん)に風格があり、歌昇の三次が小気味いい。梅枝の求女(もとめ)が哀れだ。
最後は玉三郎の「鷺娘(さぎむすめ)」。嗜虐美(しぎゃくび)に満ちた独特の美の世界が舞台に広がる。
夜の最初が「曽我対面」。吉右衛門の五郎が見事。高音が利いて力強く、動きもきっぱりとしている。対照的に菊五郎の十郎は低音でおっとりとし、絶妙の取り合わせだ。幸四郎の工藤、魁春の舞鶴、芝雀の虎、菊之助の少将とそろう。
続いて勘三郎の「鏡獅子」。女小姓らしい凜(りん)とした弥生から、勇壮な獅子への変化が見もの。千之助、玉太郎の胡蝶(こちょう)が愛らしい。
最後が三島由紀夫作「鰯賣戀曳網(いわしうりこいのひきあみ)」。勘三郎の猿源氏、玉三郎の蛍火が夢物語をゆったりと楽しく見せる。弥十郎、亀蔵、染五郎が好演。27日まで。【小玉祥子】
毎日新聞 2009年1月14日 東京夕刊