東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 政治 > 今日の読み物(スコープなど)一覧 > 記事

ここから本文

【今日の読み物(スコープなど)】

スコープ “無駄の象徴” 皮肉な再評価 不況で促進住宅、職業訓練活用

2008年12月28日 紙面から

 無駄が多いとの批判を浴びて、廃止が決まった独立行政法人「雇用・能力開発機構」。雇用環境の急激な悪化を受け、政府のさまざまな雇用対策を担うことになり、再評価を受ける皮肉な事態となっている。 (古田哲也)

 雇用・能力開発機構は、雇用保険を財源に五百八十億円かけて職業体験施設「私のしごと館」を造った上に、赤字運営を続けていたことが問題化。政府の独法改革で「無駄の象徴だ」とやり玉に挙がり、整理合理化の対象になった。

 政府は今月二十四日に同機構を廃止し、高齢・障害者雇用支援機構と統合して新たな独法を設置し、職業能力開発業務の一部は地方移管することを閣議決定した。

 その一方で、政府が来年の通常国会に提出する二〇〇八年度第二次補正予算案や〇九年度予算案には、開発機構が関与する雇用対策が、いくつか盛り込まれた。

 失業者の住宅確保支援では、開発機構が保有する雇用促進住宅約三万戸を活用。同住宅は二一年度をめどに廃止が決定しているが、舛添要一厚生労働相は決定の見直しを検討する意向も表明した。

 企業の雇用維持支援では、企業が「派遣切り」や解雇に踏み切る前に、労働者を同機構の職業能力開発促進センターなどへ職業訓練に出した場合、大企業なら給与の五割、中小企業なら八割を国が雇用保険から助成する。

 同機構が脚光を浴びたことを背景に、二十二日の自民党総務会では「雇用対策は政府が大きな予算を組んでいるのに(同機構を)切ってもいいのか」「職業訓練は非常に大事だ。行政改革だけの視点でいいのか」など、政府の廃止方針への疑問が続出。最終的に廃止は了承されたものの、「雇用・能力開発」の名称は、新たな独法に極力残す方向で調整することになった。

 一方、同機構を廃止しても、看板の掛け替えに終わるとの懸念も強い。

 甘利明行革担当相は「より少ない国民負担で、より大きな成果が挙がるようにしたい」と、効率化と職業能力開発機能充実の両立を目指す考えを示している。

 

この記事を印刷する