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社説:企業倒産急増 資金繰り支援にもっと力を

 昨年の企業倒産が03年以来の水準となった。民間信用調査会社の東京商工リサーチの調査によると、件数は1万5646件で前年比11%増、負債総額は同2・1倍の12兆2919億円である。

 一般的に企業倒産は景気後退の最後の局面で急増するといわれている。ところが、今回は景気後退が本格化した08年初めからその現象が表れた。それだけ、企業の置かれている状況は厳しい。

 08年は上場企業の倒産が33件と第二次世界大戦後最多となったように大型倒産が目立った。それ以上に特徴的なのが、不況型倒産の増加だ。要因別では販売不振が1万196件と全体の約3分の2を占めている。とくに、米国の金融危機の日本経済への波及が鮮明となった08年夏以降、倒産は件数、負債ともに増加が目立ち、不況型の割合も増えている。

 政府経済見通しによると09年度の実質成長率は0%である。ただ、民間シンクタンクの多くが予測しているように、マイナス成長の可能性が高い。国際機関の09年予測も軒並みマイナス成長だ。景気がすぐには回復しないとすれば、企業倒産は増えることはあっても減るとは考えにくい。

 このところ、目に付くことは資金繰りがつかなくなり、倒産に至るケースだ。08年は全体の約3割を占めている。黒字倒産も少なくない。

 なぜ、昨年来、資金繰り難を原因とする倒産が増加しているのか。金融機関の貸し渋りを指摘しなければならない。また、大手企業が株式・債券発行など直接金融のめどが立たないため、金融機関からの借り入れに回帰したあおりで、中堅・中小企業に資金が回りにくくなっている。

 資金繰りがつかず、経営破綻(はたん)に立ち至れば、雇用も失われかねない。国民の安心を維持する観点からも、対策を講ずることで避けられるのであれば、早手回しに実施する必要がある。

 政府は08年度の第1次補正予算で中堅・中小企業を主な対象とした資金の緊急保証を実施している。第2次補正予算案でも、新保証制度の導入や政策金融対策が盛り込まれている。

 2次補正予算案は定額給付金切り離しを求める民主党などの要求に与党が応じず、参院での審議には入っていない。景気状況が悪化の方向にあることを直視すれば、雇用対策や中小企業金融対策などの景気対策は早期に実施されなければならない。与党もメンツにこだわらず、柔軟に対応すべきだ。さらに、必要ならば追加対策も実施すべきだ。

 民間金融機関も必要な資金はできる限り供給する役目を果たすべきである。血液の流れが滞ってしまえば、経済全体が機能不全に陥ってしまう。それは金融機関にとってもいいことではないはずだ。

毎日新聞 2009年1月15日 東京朝刊

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