米誌ニューズウィーク日本版(一月十四日号)に二枚の写真が、それぞれ見開きで載っている。一枚はパレスチナ自治区ガザで埋葬される少女、もう一枚はイスラエルでの女性の葬儀だ。
少女は四歳で、ごみを捨てに家を出たところをイスラエル軍の空爆に遭ったという。イスラエルの女性は三十九歳の若さであり、ガザを支配するイスラム原理主義組織ハマスのロケット攻撃で犠牲になった。
どちらの写真からも深い悲しみが伝わってくる。殺し合いのむなしさ、暴力の繰り返しに強い憤りを覚える。いつまで血を流し続けるのか、なぜもうやめようと互いに叫び声を上げないのか。
今年は、東西冷戦の象徴であったベルリンの壁崩落二十年の節目の年だ。冷戦終結は、世界が平和を手に入れると期待され、高揚感に包まれた。ところが、宗教や民族をめぐる対立が火を噴き、地域紛争が頻発するようになってしまった。
さらに、二〇〇一年九月の米中枢同時テロに襲われたブッシュ政権が、各国に敵か味方か迫り、国際社会に分裂を招いた。軍事超大国の威信にかけ、力による押し付け外交を展開した結果、深刻なあつれきが生じた。
変化を唱える新しい米大統領の就任が近い。世界は今度こそ、憎悪と暴力から和解と寛容へのきっかけにしなければならない。