物議を醸している総額二兆円の定額給付金を含む二〇〇八年度第二次補正予算案が、衆院本会議で自民、公明両党などの賛成多数によって可決し、参院へ送付された。定額給付金の切り離しを求める野党は反発を強めており、十三日に自民党を離党した渡辺喜美元行政改革担当相の動向とも相まって状況は一段と混迷を深めそうだ。
定額給付金は、政府・与党が衆院選をにらんで打ち出した二次補正案の目玉である。しかし、その目指す方向が明確でない上、高額所得者の受け取りの是非をめぐる麻生太郎首相の発言のぶれなどが批判を浴びた。民主党をはじめ野党は削除を求めたが、首相は経済効果を盾に応じなかった。
本会議では民主、社民、国民新の三党が「強行採決だ」として採決に加わらない中で二次補正案と関連法案が可決された。渡辺氏と、自民党の松浪健太内閣府政務官も採決を退席した。
衆院通過で、二次補正案は憲法の規定により参院で採決されなくても三十日後に自然成立する。だが、予算が実際に動くには関連法案の成立が欠かせない。参院では勢力を握る野党の攻勢が強まろう。与党は再可決も辞さない構えだが、造反者の数いかんで二次補正などに影響しかねない。
大きな混迷をきたしてまで定額給付金に固執するのは理解し難い。二兆円は巨額だ。細かくばらまくのでなく、新たな雇用を開き、消費を刺激するより効果的な生かし方はあろう。
共同通信社の全国電話世論調査で麻生内閣の支持率は19・2%と昨年十二月の前回調査から6・3ポイント低下した。不支持率は8・9ポイント増えて70・2%に達した。加速する「麻生離れ」の大きな要因の一つが定額給付金問題である。「評価しない」は70・5%に及んだ。二兆円を優先的に使うべき政策については、年金・医療などの社会保障、雇用対策などの回答が多い。定額給付金と答えたのはわずか3・3%だった。
二次補正案には、雇用対策や中小企業への支援策などが盛り込まれている。本来なら昨年の臨時国会に提出して迅速な実施を期すべきだった。未曾有の経済危機に苦しみ、不安を募らせる人々の憤りでもあろう。麻生首相はじめ政府・与党は国民の厳しい指摘を重く受け止め、定額給付金を切り離して早期に二次補正予算を成立させる。その上で、二兆円のあるべき使い方を与野党協力して打ち出すことが必要だ。再考を求めたい。
麻生太郎首相と韓国の李明博大統領の首脳会談は、北朝鮮核問題やアフガニスタンの復興支援などで日韓の協力を強化することで一致した。
核問題は昨年十二月の六カ国協議で、北朝鮮が核施設での科学的検証方法の文書化を拒否したため成果がないまま閉幕。非核化プロセスは、今月二十日に発足するオバマ次期米政権に引き継がれることになった。
両首脳は、核問題について「六カ国協議を通じた北朝鮮の核放棄を目指し、オバマ次期政権と緊密に連携していく必要がある」とした。
北朝鮮は最近、韓国への非難を強め、日本の拉致問題での再調査要求にも応じないなど強硬姿勢を示している。オバマ次期大統領は、北朝鮮との直接対話に積極姿勢を示すなどブッシュ政権以上に柔軟だ。拉致問題などで日本に不利に働く懸念も指摘されており、日米韓の結束を強化しておく必要があろう。
アフガニスタンの復興支援に共同で当たることや世界的な金融危機対策なども協議した。小泉純一郎元首相時代に、歴史認識や靖国神社参拝、竹島(韓国名・独島)領有権問題をめぐり対立したことを考えれば、日韓関係は様変わりした。
両国首脳が定期的に相互に往来する「シャトル外交」は、李大統領の昨年四月の訪日で再開し、今年も訪日意向を表明するなど着実な歩みを見せる。
麻生首相は「未来志向の成熟したパートナーシップ」と表現し、李大統領は「近くて遠い国から近くて近い国への発展を象徴している」と強調した。
支持率が低迷している両首脳だが、金融危機など一致して当たるべき課題は山積している。良好な関係を維持、発展させていくことが「日韓新時代」を開くことになる。
(2009年1月14日掲載)