東京都江東区のマンションで昨年4月、会社員女性(当時23)を殺害したとして殺人などの罪に問われた星島貴徳被告(34)の集中審理が14日、開かれた。検察側の被告人質問で、遺体がバラバラにされる様子を再現した画像が法廷で映し出され、傍聴中の遺族が号泣して退廷する一幕があった。
5月に始まる裁判員制度を控え、検察側が意識する「目で見て分かりやすい審理」の一環だが、こうした手法が遺族や裁判員に与える心理的な影響にどう配慮するのか、課題が示されたといえる。
マネキンの右足の赤黒い切断面がディスプレーに映し出された瞬間、傍聴していた遺族の女性が悲鳴を上げて泣き出し、裁判所職員に抱きかかえられるように退廷した。検察側は、被告が描いた絵も使い、遺体を切り離していった方法や順序、感触などを約3時間半かけて被告に質問。星島被告も動揺した様子で「絶対に死刑だと思います」と突然叫ぶなど、法廷は一時、騒然となった。
東京地検は公判後、「遺族にも事前に立証内容を説明して了解をもらっていたが、精神的なショックへの対処などは、今後の検討課題にしたい」と説明。ただ、「裁判員もこのような画像を見てもらう、というメッセージでもある」と意義を強調した。
東京地裁のあるベテラン刑事裁判官は「検察側は法廷で死体損壊罪を立証する責任がある。たとえ正視できない証拠でも裁判所は取り調べなければならず、市民も避けて通れない」と話す。(河原田慎一、向井宏樹)