ニュースタッチスクリーン人気に視覚障害者が懸念iPhoneが火付け役になり、タッチスクリーンが人気だが、目で見て操作しなければ使いこなせないこともあり、視覚障害者の懸念を呼んでいる。(ロイター)2009年01月09日 16時59分 更新
AppleのiPhoneが火を付けたタッチスクリーンガジェットのブームを受け、家電製品が視覚障害者の手が届かないものになるのではないかという懸念が高まっている。 モータウンの代表的アーティスト、スティービー・ワンダーなど、視覚障害者の権利擁護派は今週、ラスベガスで開催の世界最大のガジェット展示会Consumer Electronics Show(CES)を訪れ、メーカー各社に視覚障害者のニーズを考慮するよう求めた。 スティービー・ワンダーは同イベントで、実現してほしいものとして、彼が自分で運転できる車――実現には「ほど遠い」だろうと彼自身も認めている――や、自分で操作できるSirius XMの衛星ラジオなどを挙げた。 「皆さんがもう数歩踏み出すことができれば、われわれにガジェットを使うことの興奮や喜び、自由を与えられる」と彼は語った。 一部の企業は自社の製品を視覚障害者にも利用できるようにしており、場合によっては意図せずにそうなった場合もあるとスティービー・ワンダーは話した。彼はお気に入りのガジェットとしてiPodとResearch In Motion(RIM)のBlackBerryを挙げた。 権利擁護派は、製品設計者が視覚障害者のニーズを考慮に入れれば、視覚障害のない人にも使いやすい製品ができるだろうと主張している。 喜ばしいのは、メーカー各社がアクセシビリティのある製品を製造するのに、多額の費用を掛ける必要も、革新を断念する必要もないということだと、National Federation For The Blind(NFB)の広報担当者クリス・ダニエルセン氏は言う。 「技術の進歩を止めようとは思わない」と同氏。「われわれが主張しているのは、シンプルになるようにインタフェースを考えて作ってほしいということだ。製品のユーザーインタフェースがシンプルであるほど、視覚障害者のある人でもない人でも、より多くの人に訴求する」 タッチスクリーンで操作が難しくタッチスクリーン人気により、テレビやステレオのようなかつては単純だった製品が、視覚障害者にとって使いにくいものになっている。そうした機器をうまく使いこなすには、複数のメニューを目で見て操作する必要があることが多い。 「新しいデジタルデバイスでそれが問題になってきている。メニューやサブメニューの下に埋もれる機能を次々に加えるのは簡単だ」とアクセシビリティある選択肢に取り組むNational Public Radio(NPR)のCTO(最高技術責任者)マイク・スターリング氏は言う。 メーカーは電卓や腕時計からコンピュータ、音楽プレーヤーまであらゆるものにタッチスクリーンを導入している。 視覚障害のあるSendero Groupのマイク・メイ社長は、「私はスキーで時速60マイルで滑り降りることができるが、電子レンジのフラットパネルは操作できない」と冗談を言う。同社は視覚障害者向けに音声出力を備えたGPSナビゲーション機器を製造している。 電話のメニューを音声で読み上げる機能もあるが、NFBのアクセス技術ディレクター、アン・テイラー氏は、タッチスクリーン携帯を使うときにはまだ役に立っていないと指摘する。 同氏は、タッチスクリーン携帯が目で見なくても使えるようになれば、視覚障害のない人々が運転中に使ったり、視力が悪くなりつつある高齢者が使うのに便利だろうと語る。 画面読み上げソフトは300ドル以上出せば買えるが、一部の携帯電話、たいていは高額なスマートフォンでしか機能しない傾向がある。Senderoは、アクセシビリティ技術は高価であることが多く、米国の全盲者の約70%は無職だと指摘する。 テイラー氏は、視覚障害のある人にもない人にもメリットがあると思われる製品設計をベンダーに提案する場としてCESを利用している。 例えば、簡単に使えるやり直しボタン、メニューごとに異なるサウンド、優れた触覚フィードバック付きのコントロールなどをメーカーは取り入れるかもしれない。 前進もベンダーはタッチスクリーンのトレンドをあきらめないだろうが、彼らが障害のある消費者を考慮する姿勢を高めているかもしれない兆候がCESの前に幾つか見られた。 Googleの開発者は、Androidソフトを搭載した端末も含め、視覚障害者にも使えるタッチスクリーン携帯を作り出す方法に取り組んでいる。 NPRは、デジタルラジオを動的な点字作成デバイスに接続する特別なラジオ受信技術とソフトを発表した。その日の新聞を読み上げるデジタルラジオチャンネルも設けた。 Dice Electronicsは、NPRの技術を取り入れたラジオのプロトタイプを開発した。NPRのスターリング氏は、2009年に商品化されると期待している。 同氏はまた、NPRの技術の採用を期待して、CESでほかのメーカーとも会合した。情報を求めても無視されることが多いが、今年は反応がずっと活発だったという。 不況で主流の製品への需要が弱まる中で、メーカーの中には、自社の製造施設でこの種のデバイスを作るところもあるかもしれないと同氏は言う。 「全般的に、アクセシビリティが新たな市場になる可能性があるという見方があるのかもしれないと思う」(同氏) [ニューヨーク 9日 ロイター] copyright (c) 2009 Thomson Reuters. All rights reserved.
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