◎二次補正衆院通過 手あかにまみれた給付金
六日のアヤメ、十日の菊という。時機を逸して商品価値が落ちたもののたとえであり、
衆院で賛成多数で可決された二次補正予算案にもそんな印象がある。二次補正の柱である二兆円規模の定額給付金は、三月支給を目指すというが、年度内支給に間に合わない市町村もあるだろう。
米国の場合、ブッシュ大統領が戻し税方式の減税を打ち出してからわずか一カ月足らず
で法が成立し、昨年八月までに低・中所得者世帯に大人一人六百ドル、子供一人三百ドルの小切手が送られた。もめにもめた定額給付金とは比較にならないスピード感である。
米国では、議会、メディア、国民がこぞって戻し税を支持したのとは対照的に、定額給
付金はバラマキなどと批判され、国民の支持が得られたとは言い難い。減税こそ景気対策の柱と見る欧米の「常識」は日本では受け入れられず、時間の経過とともに、せっかくのアイデアが色あせ、手あかにまみれてしまった。
定額給付金は景気対策として、妥当なのかどうか、もっと効果的な方法がないのかとい
う肝心な点が国会でまともに論議されなかったのは残念だ。政府・与党にすれば、麻生太郎首相はじめ閣僚がもらう、もらわないといった話に矮小化(わいしょうか)されたのは不本意だっただろう。だが、世論にソッポを向かれた最大の原因は、麻生首相が景気回復を見定めたうえで、三年後をめどに消費税の引き上げをお願いすると発言したことにあった。給付と引き替えに大増税を求める政治センスには、あ然とさせられる。
二次補正は憲法の規定で、参院で採決されなくても二月十二日に自然成立する。関連法
案は、野党が参院で採決に応じない場合、「六十日ルール」で、三月十四日以降に衆院で再可決が可能になる。ただ、渡辺喜美元行政改革担当相が離党するなど自民党内には「造反」の動きもくすぶっており、成立には不確定要素も残っている。
定額給付金は、早々に実施していれば、景気刺激に大いに役立っただろう。景気がこれ
ほどまで悪化した今では、どこまで効果があるのか疑問もある。昨年中の成立が見送られたツケは重い。
◎給食の地産地消 安定供給に一段の工夫を
石川県の学校給食で地場産の食品が使われる割合(食材数ベース)は17・2%で全国
平均(23・3%)を下回り、地産地消の掛け声の割には伸び悩んでいる実態が浮かび上がった。文部科学省の二〇〇七年度調査では、十四道県が政府目標の「30%以上」に達する一方、20%未満は七都府県にとどまっている。これらは東京、大阪、埼玉、神奈川など都市圏が多いことを考えれば、食材の豊富な石川が低迷しているのはもどかしい。
学校給食で地場産の使用率を高めていくことは家庭の関心を促し、ひいては地域全体の
地産地消を推進することになる。県教委は一年を通して大量の食材を安定供給できない難しさなどを指摘しているが、生産者と学校側が食材の種類や出荷時期などの情報を共有して上手に調整すれば、まだまだ利用拡大の余地はあるだろう。地域の中で給食独自の流通システムをつくれないか知恵を出し合ってほしい。
食育基本法に基づく「食育推進基本計画」では、地元の食材については新鮮さや安全性
の面だけでなく、子どもたちが地域の自然や文化、風習などを理解する「生きた教材」と位置づけている。生産者サイドにとっても、子どもたちの給食で採用されることは品質や安全性への意識を高めるきっかけとなり、将来の消費者を育てる点でも大きな意義がある。
学校給食のようにまとまった量の食材を調達するには、既存の効率的な市場流通システ
ムに依存せざるを得ない面もあろう。それとは別に給食への納入ルートを定着させようとすれば、生産者側も調理方法や衛生上のルールも含めて給食の特性を理解し、それに合わせる努力がいる。
県内でも地場産の食材を取り入れた給食に工夫を凝らしているが、全体の量を計画的に
増やしていくとなると、栄養士や調理員など給食現場の努力だけでは限界がある。自治体が前面に立ち、生産者や農協、漁協、学校、教委などの関係者が定期的に意見交換できるような組織を地域ごとに機能させていく必要があろう。