2−6
「…おぉすげぇ」
またしても幸助が呟く。
別にそれほどすごくないような気もするのだが、気のせいだろうか?
棚の上には人形が置いてあって、机の上には勉強道具が少々。
テレビは最新のテレビ。
まぁ、それはすごいか。
簡単に言うと一般の女の子のような部屋。
ポスターとかも張っていない。
学校一美女だからと言っても普通の女の子と変わらないのだ。
なのに、幸助は「…おぉすげぇ」なのだ。
可笑しい。可笑し過ぎるぞ幸助。
お前はやはり女好きのエロだな。
「何、お前…俺を見てニヤついてんだよ」
だって、幸助が可笑しいからしょうがないじゃん。
「なんか明日香の部屋…シンプルだねぇ」
そうそう。沙希のような言葉があっているのだ。
シンプル最高!
何故か分からないが俺は心の中でそう叫ぶ。
「まだ引っ越してきたばっかりだからねぇ」
明日香が笑いながら言って、自分のベットに座る。それにしても、明日香の部屋は意外と片付けられている。
O型(俺が勝手に決めたのだが)の明日香は大雑把だとおもったのですが。
「結構広いね…」
亮介は周りを見ながら俺に呟いてきた。
「だな…」
はっきり言って俺の部屋より大きいかも…。
「いいなぁ。俺もこれぐらいの部屋欲しいし!」
亮介は目を輝かしている。
それほど、この大きさの部屋が欲しいのですか…。
「そういや俺、風紀の新しい家に行っていないよな? 今度行ってもいい?」
亮平が欲しいし! の後に付け加えていった。
「家は無理!」
「何で?」
「まだ…色々あってね」
「そうか…ならいいけど」
そう言って亮平は机の方に歩いていった。
「まっ、私の部屋はこんなものだからね? 6人もこの部屋には…きつくない?」
明日香が俺に目で合図をしてくる。
ん?
あぁ、この部屋からはもう出て欲しいよ合図か。
よし。俺は明日香のために一役買ってあげようではないか。
「そろそろリビングに戻らない?」
俺は明日香に言った。
すると沙希が俺に向かって「何で?」とちょっと怒り口調で言う。
「だって…ほら、幸助が興奮してきてるから…危ないだろ?」
「お、俺は興奮なんかしていない!」
ふっ…ごめんよ幸助。
一応、本当のことだから我慢してくれ。
「それなら大丈夫! 五十鈴は殴り合いなら強いから」
…あの天然でよく分からない五十鈴が?
殴り合いで強い?
「昔から…空手と、合気道と、柔道習っていたの…」
外見普通。足の細さ普通。腕の太さ普通。
…何処からそのような光景が思い浮かぶ?
「だから大丈夫だよ」
そう言って沙希は俺に向かってVサイン。
…やっぱり危険人物。
何を考えているか分からないな、沙希は。
しかし、まだ明日香は俺に目で出ようと訴えている。
この沙織を乗り越えろというのか…。
「じゃあ…俺外に出てるわ…」
そう言って俺一人外に出た。
そうした方がよかった…訳ではなく、ただ単にあそこに居たくなかっただけ。
女3人が居るあの部屋にあれ以上いたら頭がバグってしまう。
中ではどうせ「乗り悪いなあいつ〜」とか沙希が言っているんでしょう…。
お茶を自分で注いで、ソファーに座り、グダーとしている俺。
それから2分後、亮平が出てきた。
「よっ」
「おぉ亮平。お前が一番に出てきたか」
「何かあそこには居づらくてな…」
頭をぽりぽりかきながら言っている。
「それにしても、風紀は自分の家のようにくつろいでるな」
「…へ?」
思わず、いつもより1トーン高い音で返事をしてしまった。
「…だから、自分の家のようにお茶を勝手に入れて、ソファーの上でくつろいでるよな。って言っているんだよ」
…まさにその通りだな。
一人だからついつい油断をしてしまった。
この風紀・・・不覚。
「まぁ、俺は別にこういうやつだから」
無理やり笑みを作って俺は言う。
「それもそうだな」
納得したようで、俺の隣にズシッっと座る。
少しばかり納得されるのも嫌なのだが。
ソファーで噂話ではない話を俺たちがしているとき、五十鈴と沙希と明日香と幸助が出てきた。
亮平が出てきてから約5分。
幸助は一人で何をされていたのだろうか?
それとも、幸助は何をしていたのだろうか?
…謎だ。
明日香はこちらを見ながら笑ってくれた。
その顔に見とれてしまって、亮平との話も中断。
全く頭に入ってこなくなった。
さすがは学校一可愛い女の子。
俺もその笑いに笑みを返した。
…只今の時刻6時。
高校なので家が遠い子も居るからそこで今日は解散した。
俺は一応外に出て、五十鈴、沙希、幸助、亮平とは逆の方向に歩き出だした。
こうでもしておかないとあそこまで沙希に疑われたんだ。
大丈夫なわけがない。
一応近くのマンションに入るふりをして、4人が行ったのを確認した後、明日香の家…じゃなく、俺たちの家に戻っていった。
エレベーターで4階まで上がって、405号室まで行く。
ガチャと勢い良く、ドアを開けると明日香の声が聞えた。
「おかえり〜〜!」
…なんか嬉しいな。
「ただいま」
俺はそう言って家の中に入る。
「今日は疲れたねぇ〜」
「本当に…」
笑いながらそういう俺達。
それからは今日ばれそうになった危なかった話や、幸助が男子一人で明日香の部屋に残っているときの話をした。
あの時幸助はじっと明日香たちの行動を見ていたらしい。
…ある意味危険な男だな。
「じゃあ俺は一回部屋に戻るから」
と俺は言って、自分の部屋を開けようとした。
ゴン。
鈍い音。
そうだった…箪笥をドアの前においていたんだっけ。
隣の家に行かなければならないのか…。
はぁ。と一度溜息をついた後、俺は隣の部屋に頼みに行った。
ちゃんと許可を取って、俺の部屋のベランダに侵入。
窓はちゃんと開けておいたのですんなりと入れた。
「…面倒くせ」
その言葉が部屋に入ったときの最初の言葉。
そのわけは…。
部屋中に、リビング等に置いてあった私物が散乱しているため。
その部屋を直すのに1時間以上掛かったのは言うまでもないな。
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