2−S
俺は中学時代初めての彼女が出来た。
すごく好きで、死ぬほど好きで、俺は本気で恋をした。
あいつのことが好きで、会いたくて学校に行っているようだった。
そして、今俺は耳を疑う話を聞いている。
「え? 嘘だろ?」
俺は友達の亮平と喋っている。
「本当だって!お前の彼女二股してるんだよ」
「まさかあいつが二股なんて…」
していない! と断言したかった。
しかし、あいつの言動が最近おかしいのも事実。
俺と遊ぶ時間も少なくなって、学校で喋る時間も少なくなった。
今の俺にはしていないと断言できない。
「しかも…その二股の相手が… 水野 智也」
水野智也…その言葉を聞いたとき、もう何もかもが信じれなくなってきた。
そいつは俺の幼馴染でもあり、親友だ。
あいつらがそんなこと…。
と思いながら彼女に目を向ける。
智也と楽しく喋っている姿が目に入った。
亮平の噂は今まで外れた形跡がない。
100%外れない。
=この話も本当ということだ。
放心状態。
今の俺に合う言葉はこれしかないだろう…。
涙が出てくる。
その涙を拭く気力も残っていない。
そこまでして好きだったんだ。俺は…。
あいつを愛していたんだ。
場違いだろう。こんな場所で涙を流している俺は。
男泣きとは程遠い泣き方。気持ち。
胸が痛い。なんで痛い?
愛しているからなのか?裏切られたからなのか?
分からない…。
放課後、彼女と帰り道を歩く。
「今日、風紀泣いてたのぉ?」
「まぁ…な」
いつもと同じ態度、言葉で接してくる彼女。
俺はそこまで好きなのか。
俺はそこまで愛してるのか。
何故お前は俺をここまで苦しめる。
お前は悪魔か。
お前は神なのか。
何故俺はそこまでお前に恋をしたのだろう。
「大丈夫…?」
彼女は小さく聞いてきた。
俺は何も答えられない…。
手に彼女の手が絡まる。
暖かくて、気持ちがやすらぐ。
しかし、今の俺にはその暖かい手さえ冷たく感じるのだ。
「今日…お前の家に行っていい?」
「うん! いいよ!」
笑ってこっちを向く彼女を抱きしめたかった。
そして、離したくなかった。
俺の元にいてほしい。そう思いたかったのだ。
だけど、今の俺にはそれをする勇気すらない。
彼女のうちに着き、ゆっくりと彼女は家のドアを開く。
「今日は家に誰も居ないの。お父さんもお母さんも仕事で…」
そう言って、俺を彼女の部屋の中に入れてくれる。
「じゃあ私は飲み物もって来るね!」
そう言って部屋を出て行く、彼女の後姿を見送った。
携帯を残した彼女を…。
彼女のとは言え、勝手に携帯を除くのは罪悪感がある。
しかし、真実を知るために…ごめん。
携帯をゆっくりと開く。
メールボタンを押す。
…ロック。
あいつは大体、誰かの誕生日を入れるって言っていたな…。
暗証番号4文字。チャンスは3回。
まずは…彼女の。
「違うか…」
そう呟いた時にはもう違う誕生日を入れていた。
俺の誕生日だ。
お願い…これで開いてくれ!
「暗証番号が違います」と表示された。
まさか…。
そう思いながら次の番号を入れる。
「ロック解除」
そうやって、携帯の画面に表示された。
…まさかと思ったけど心の中では最初からこの番号ではないかと思っていたのだ。
智也の誕生日…。
放心状態に近い状態だが、まずはメールをみなくてはならない。
そこにはいくつかのフォルダがあった。
家族、女友達、男友達、薫、風紀、智也。
俺は躊躇せず、智也のフォルダを確かめる。
昨日のメール数、約120件。
メールの内容を見た瞬間、俺は一気に頭の中が真っ白になった。
何通も見た。
けど、こんなことが書かれているなんて…。
亮平が言っていたことは…事実なんだ。
そのとき、彼女が部屋に入ってきた。
その瞬間、彼女は飲み物を落としながらも、携帯を俺から奪っていった。
そのとき俺は本日2度目の放心状態。
彼女も放心状態のようだ。
その後、気がついたときには家にいた。
その日から彼女とは一言も喋っていない。
智也ともギクシャクした関係だ。
あの日から一度は智也に謝られた。
しかし、俺はその謝ってきた智也を殴ってしまった。
なんて酷いことをしたんだろうと今は思う。
あの女は俺にあるものを残して行った。
女に触られるとびくってなってしまう。
一部を除いては、女と普通に喋れない。
この二つを残していった。
しかし、高校一年生になる前、ある出来事が起きた。
その人とは初対面なのに、まともに喋れる。
俺が思うには何処かしら元カノに似ているのだろう。
だから普通に喋れたんだと思うんだ。
だけど俺は今…人に恋を出来ない体になっている。
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