1−2
ドンドンドン!
俺の部屋が叩かれる音がする。
「もうちょっと…」
俺は寝言のような言葉を言った。
「風紀君!」
可愛らしい声が聞える。
なんとすがすがしい朝なんだ〜。
…って違う。
バッとベッドの上に座るように起きた。
周りにはまだ家具は置いていない。
置いてあるのは、このベッドと箪笥だけ。
テレビは面倒くさいので後にすることにした。
「風紀君起きて!」
そして、俺はばっちり目が覚めた。
そう、俺は親のせいで女の子と同居中。
俺の高校生活どうなるんだ。
「はいはい」といいながら自分の部屋のドアを開けた。
「やっと起きたぁ〜。早くご飯食べよ!」
「え? 朝飯あるの?」
「当たり前じゃん! 朝は大事だよ?」
「分かった。あと風紀君って呼ぶのは…」
「あっごめん! つい…」
「まぁいいけど」
「ありがと! 風紀!」
そう満面の笑みを朝一番に見れる俺は幸せ者なんだろう。
そして、今日は高校の入学式。
…高校?
明日香の手料理と思われるご飯をほおばりながら俺は言う。
「俺らって傍から見れば同棲って事になるよな…」
高校にばれたら洒落ではすまないだろう。
…沈黙。
「そ、そうですね」
「やばくないか?」
「バレなきゃ大丈夫ですよ!」
こいつ…。
可愛い顔して大変な事考えてるな。
ご飯をさっさと食べ終わり制服に着替えて学校に行く準備。
高校のために引っ越したので、駅ひとつ分。徒歩20分程度の近さだ。
その道を俺たちは歩いて学校に向かう。
誰が見ても昨日初めて会った二人には見えないだろう。
「そういえば、風紀って何組?」
また、突然に明日香が聞いてくる。
「え? 俺は2組。明日…」
明日香は?と聞く前に明日香が多いな声を出した。
「えー! 風紀も2組!? 私も2組!!!」
明らかに周りの視線が自分たちに向いているのが見なくても分かる。
「席が近いといいね!」
…考えてみろ。秋本の「あ」と香坂の「こ」普通に考えたら近いだろ。
けど、ここまでは考えていなかった。
学校に着き自分たちの席を確かめる。
「なっ、、、」
「やったぁぁ!」
なんと席が隣。
またもやみんなの視線を明日香が集めている。
まぁ、可愛いからというのも含まれているだろうが…。
「あんまり五月蝿いと怒られるぞ?」と、俺が明日香に言っていると隣から聞き覚えのある声が聞えてきた。
「おい! 風紀!! その可愛い子は誰なんだ!? いつの間にか彼女を作りやがって!」
と、誤解しているのが中学校の奴で唯一俺と同じ高校を受験して受かった清水 亮平。亮平とは、小学校からの一番の友達。女好きな野郎で人の意見を参考にすると結構かっこいいらしい…。
「風紀〜この人誰?」
明日香は俺の服をちょんちょんと引っ張りながら聞いてくる。
そのしぐさが可愛くて仕方ない。
俺は、少し鳥肌がたったが。
理由は、のちに教えよう。
「えっとこいつは…」と簡単に亮平を説明した。
「わ、私は、秋本 明日香です!風紀と一…ンゴ!」
その後の言葉を言わせないように明日香の頭をもっていたかばんで軽くはたいた。
俺たちが同居しているなんて亮平に言ったら、学校全体に言っているようなものなのだ。
「アハハ! 何も無いよ亮平君。明日香と俺は今日初めて会った同士なんだ」
もう…駄目だ騙せない。
「へぇ〜そう」と言って亮平は自分のクラス(3組)に戻っていった。
…え? 騙せたのか?
そう思いながら亮平の後姿を見送った。
「お前さっき『風紀と一緒に住んでいます♪』とかいいそうだっただろ…」
「ご、ごめんなさい」
そう言って下を向く明日香の仕草。秋葉系じゃなくても一コロだな。
「けど、さっきの人優しそうに見えて…」
「あいつはああ見えてすごい男だから気をつけろ」
そして明日香はコクッっと頷いた。
キンコーンカンコーンとチャイムが鳴る。
その音が鳴り終わるのと同時に20代前半と見れる女の先生が入ってきた。
「みんな席について! ってみんなちゃんと座ってるかぁ」
と、よく分からないテンションで教室に入ってきた。
「出席とりまぁ〜〜す♪」
と、またもやよく分からないテンション…。
「1席 青木麻衣 2席秋本明日香…」
このクラスは、全部で40人。
出席をとった後は体育館に向かいらしい。
そして、入学式が始まるというのだ。
帰りには、もう明日香は友達を作っていた。
笑顔で友達に「さよなら」という明日香は…可愛い。
「風紀〜〜! ストップ!ストップ!!!」と俺を呼んでいる。
「な、何!?」
小走りでこちらに向かってくる。
「はぁはぁはぁ…」
相当疲れたようだ。あの距離で…。
「大丈夫か?」
「すぅ〜はぁ〜…もうバッチリ!」
男を悩殺する笑顔とピースで周りの視線を集める。
「で、どうした?」
俺は問う。
「え、えっと…一緒に帰ろ?」
「オフコース」
そう俺が言うと明日香は笑ってくれた。
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