【萬物相】ハンバーガー難民
日本のインターネットカフェには個室席があり、共同のシャワー室や洗濯室も備えてある。このネットカフェに毎晩寝泊まりする人たちがいる。住む家がなくここで日々過ごすしかない「ネットカフェ難民」と呼ばれる人たちだ。彼らが増え始めたのはここ数年のことだ。日本政府が昨年実態を調査したところ、ネットカフェ難民の数は5400人に上り、そのほとんどが日雇い派遣と呼ばれる形で働いている人たちだった。また、3年前からはファーストフード店が24時間営業を開始したことから、ハンバーガーを一つだけ頼んだ後、テーブルにうつぶせになって夜を明かす人も増え始めた。ここではネットカフェのように1日800円から900円の利用料金も必要ない。彼らはいつしか「マック(マクドナルド)難民」「ハンバーガー難民」と呼ばれるようになった。
「マック難民」の元祖は、その多くが24時間営業を行う米国のファーストフード店だ。住む家のないホームレスたちが、自分の持ち物をカゴに詰めて持ち込み一夜を明かしている。さらに借金の返済ができず、路上で寝泊まりする人たちも珍しくなくなった。昨年米国では260万の雇用が失われた。最近はオハイオ州だけで1650の高利貸し業者が開業したという。この地域にあるファーストフード店、マクドナルド、バーガーキング、ウェンディーズなどを合計した数よりも多い。
中国では新たな貧困層を「新貧族」、金が手に入るとすぐに使い果たす人たちを「月光族」と呼ぶ。最近はここに「窮忙族」も加わった。日々休む間もなく働きながらも貧しさから逃れられない、中国版「ワーキング・プア」たちのことだ。上海や香港のファーストフード店の夜は彼らの住み家だ。国際労働機関は「今年の末までに、世界で1日2ドル(約180円)未満で生活する労働者の数が1億4000万人を突破するだろう」と予測している。
今年の冬はソウルにも「ハンバーガー難民」が現われた。ネットカフェやチムジルバン(韓国式の24時間サウナ)の利用料金を節約するため、ファーストフード店でハンバーガーやコーラを一つだけ頼んでその場に一晩中居座り、寒さから身を守ろうとする人たちだ。彼らは主に始発のバスや地下鉄を待つ労働者、客を待つ代理運転手などが多く、テーブルにうつぶせになったまま寝ている。男性よりも女性の方が多いという。女性は地下道などで寝るわけにはいかないからだろう。
ここ数日はソウルにも激しい寒波が襲い、朝の体感温度はマイナス20度という日が続いている。漢江も昨年より1カ月以上早く凍った。ただでさえ心も寒い年明けの早朝は、体までもが凍えそうだ。寒さは貧しい彼らにとってさらに残酷だ。冷たいコーラを注文して一晩過ごすホームレス、昨晩購入したハンバーガーの半分を残しておき、朝になってから食べる労働者たち。彼らにとって身を切るような寒さは、腹の底にまで染みわたってくることだろう。東京都は昨年「ネットカフェ難民支援センター」を設立し、生活資金として60万円を融資している。寒くて暗い季節であるほど、普段は目に見えないところに目を向け、また温かく見守る必要がある。
金泓振(キム・ホンジン)論説委員
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