パレスチナ自治区ガザでのイスラエル軍とイスラム原理主義組織ハマスとの戦闘は、国連安保理の即時停戦決議後も収まらない。イスラエルが兵を引く決断を、米国や国際社会は促すべきだ。
イスラエル軍は停戦決議の八日以後も連日、ガザ全域への空爆に加え、人口密集地に戦車や歩兵部隊を接近させている。予備役も投入し、市街戦拡大の恐れが出てきた。ハマス側もロケット弾攻撃をやめない。パレスチナ人死者はすでに九百人を超し、負傷者は四千人近い。自治政府の調査では、半数近くは女性と子供という。
悲惨な事例も伝えられた。数十人のイスラエル兵が、パレスチナ人百十人に銃を突きつけて誘導した建物を砲撃し、子供らを含む約三十人が死亡したことを国連人道問題調整事務所が報告した。高熱を発し、人道上、問題視される白リン弾を使った疑いもある。虐殺行為で、国連人権理事会が非難決議を採択し、世界各地で抗議行動が高まっている。今回の安保理の停戦決議も国連の難民救済機関運営の学校三カ所が、イスラエル軍に砲撃され、避難していた住民ら五十人近くが死亡したことが引き金となった。
イスラエルにとっては、国際世論を敵に回してでも、この機会にハマスの武器弾薬を破壊し、武装勢力を掃討するのが狙いだろう。米国はイスラエルに不利な安保理決議はつぶしてきたが、今回ばかりは拒否権を使えば非難が避けられぬと、採決には棄権した。しかし、米下院ではイスラエルの自衛権を認める決議をしている。
ブッシュ米政権は親イスラエルの姿勢を崩さず、終始中東和平には消極的だった。今回の空爆や地上侵攻にしても米国の後ろ盾という安心感があったからだ。
だが、自国民の防衛といってもやり方には限度がある。今回は度を越したと言うべきだろう。イスラエル軍はハマスのロケット弾が隠されているとされるガザの市街地侵攻を検討しているとされるが、市民を巻き込む市街戦ともなれば犠牲者はさらに膨れ上がる。軍事的に圧倒的優位なイスラエルをいかに抑えられるか、一週間後発足するオバマ米新政権にとっても試金石となろう。
武力主義を譲らないハマスも再考すべき時である。これ以上の泥沼化はガザ市民の苦境を深めるだけだ。潘基文国連事務総長やエジプトの仲介努力に日本も含め国際社会は一致協力せねばならない。
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