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2009年1月14日

◎二次補正衆院通過 手あかにまみれた給付金 

 六日のアヤメ、十日の菊という。時機を逸して商品価値が落ちたもののたとえであり、 衆院で賛成多数で可決された二次補正予算案にもそんな印象がある。二次補正の柱である二兆円規模の定額給付金は、三月支給を目指すというが、年度内支給に間に合わない市町村もあるだろう。

 米国の場合、ブッシュ大統領が戻し税方式の減税を打ち出してからわずか一カ月足らず で法が成立し、昨年八月までに低・中所得者世帯に大人一人六百ドル、子供一人三百ドルの小切手が送られた。もめにもめた定額給付金とは比較にならないスピード感である。

 米国では、議会、メディア、国民がこぞって戻し税を支持したのとは対照的に、定額給 付金はバラマキなどと批判され、国民の支持が得られたとは言い難い。減税こそ景気対策の柱と見る欧米の「常識」は日本では受け入れられず、時間の経過とともに、せっかくのアイデアが色あせ、手あかにまみれてしまった。

 定額給付金は景気対策として、妥当なのかどうか、もっと効果的な方法がないのかとい う肝心な点が国会でまともに論議されなかったのは残念だ。政府・与党にすれば、麻生太郎首相はじめ閣僚がもらう、もらわないといった話に矮小化(わいしょうか)されたのは不本意だっただろう。だが、世論にソッポを向かれた最大の原因は、麻生首相が景気回復を見定めたうえで、三年後をめどに消費税の引き上げをお願いすると発言したことにあった。給付と引き替えに大増税を求める政治センスには、あ然とさせられる。

 二次補正は憲法の規定で、参院で採決されなくても二月十二日に自然成立する。関連法 案は、野党が参院で採決に応じない場合、「六十日ルール」で、三月十四日以降に衆院で再可決が可能になる。ただ、渡辺喜美元行政改革担当相が離党するなど自民党内には「造反」の動きもくすぶっており、成立には不確定要素も残っている。

 定額給付金は、早々に実施していれば、景気刺激に大いに役立っただろう。景気がこれ ほどまで悪化した今では、どこまで効果があるのか疑問もある。昨年中の成立が見送られたツケは重い。

◎アニメで城端ブーム 「恋の街」発信の追い風に

 南砺市城端地区の古い街並みを舞台にしたテレビアニメが火付け役となり、実物の街並 みを一目見ようと、全国から現地を訪れる若者が後を絶たないという。城端の伝統のたたずまいが、アニメという媒体を介して新たな脚光を浴びていることを、地域振興の一つのモデルケースにしていきたい。

 アニメは、城端に本拠を置く若手主体のアニメ会社が制作した物語だが、地元では城端 商工会青年部が「恋する城端」と銘打って昨年末、東海北陸自動車道サービスエリアに「幸せの鐘」を設置し、若者たちの呼び込みに乗り出している。恋をキーワードにして城端を発信する好材料が重なったことを追い風に、若者があこがれる「恋の街」として城端の新たな顔を発信してほしい。

 ブームのきっかけをつくったテレビアニメ「true tears」(トゥルー・ティ アーズ)は、高校生の恋愛模様をテーマにした人気作品で、旧城端町が新分野進出支援事業施設として整備した「起業家支援センター」に入居するアニメ制作会社「ピーエーワークス」が手がけ、むぎや祭りなども含め、街のリアルな描写が話題になった。

 同社は、この作品をはじめ、地方に腰を据えて良質な作品を発信していることで全国的 にも注目されている。起業家を育成する地元の町おこし事業が、結果として誘客効果を生んだことは、地方が才能ある人材を信頼し、存分に活躍できる場を与えることが、思わぬ活性化の呼び水になる可能性をも示している。

 地域おこしで言えば、「恋する城端」事業は、城端の市街地から望めるつくばね山の「 つくばね」が、百人一首の恋歌の枕詞になっていることから構想が持ち上がり、幸せの鐘のほか、独自のスイーツや地元関連商品、散策コースを設定して、若い城端ファンの開拓に乗り出している。

 こうした事業とアニメが相乗効果を生み出すように市としても一体感のあるPR戦術を 練ってはどうか。恋の街・城端を全国区にする絶好のチャンスを生かしたい。


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