2008年12月17日
株式会社野村総合研究所
「モバイル」がけん引し、
〜 2013年度までの国内IT主要市場の規模とトレンドを展望(2) 〜
オンライン決済市場は、5年後に4,500億円と倍増 2008年12月17日
株式会社野村総合研究所
株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、会長兼社長:藤沼彰久、以下「NRI」)は、2013年度までの国内を中心とするIT主要5市場の分析と規模予測を行いました。2008年12月15日に発表した、ブロードバンド市場、放送メディア市場に続く第二弾として、今回は、ネットビジネス市場7分野、モバイル市場4分野、ハード市場7分野についての予測結果を発表します。
【ネットビジネス市場は、2013年度には16兆円市場に】 ネットビジネス市場は、パソコン向けに加え、携帯電話向けの市場が伸びており、全体として順調な拡大が期待できます。ネットビジネスの市場全体では、2008年度の約9兆1,000億円から、2013年度には約16兆円へと、約2倍に拡大することが見込まれます。 ネットビジネス市場の中で最も大きな割合を占めるのは、BtoC EC(消費者向け電子商取引)の市場で、2013年度には11兆円を超える見込みです。これからの5年間、市場拡大を牽引するのは「モバイル(携帯電話向け)EC」であり、BtoC EC全体に占める割合は、2008年度の20%から2013年度には25%程度にまで増大し、金額で約2兆5,000億円規模となる見込みです。 インターネット広告市場は、成長速度を緩めつつも、2008年の約5,800億円から2013年には約8,400億円に拡大し、国内の総広告費の約12%強まで伸張すると予測されます。そのうち携帯電話向け広告の市場は、2013年に約2,000億円となり、インターネット広告市場全体の2割以上を占める規模に拡大すると見込まれます。 オンラインゲーム市場は、ブロードバンドやオンライン対応の家庭用ゲーム機の普及とともに、成長してきました。しかし、これらの普及が頭打ちになることで今後の成長は鈍り、2013年度には2,000億円程度になると予測されます。 インターネットオークション市場は、BtoCオークションの増加や、犯罪の減少などがネットオークションの信用を高めていること、および携帯電話等のモバイル端末経由での利用が増加していることから、成長率は7%程度ですが、2013年で約1兆5,000億円の規模となると予測されます。 オンライン決済市場は、EC市場の拡大にともなって、2008年度の約2,200億円から、2013年度には約4,600億円へと拡大が予想されます。このうち、携帯電話等のモバイル端末を利用したECの決済市場は、2008年度の約400億円から急拡大し、2013年度に約1,000億円となる見込みです。 情報セキュリティ市場は、2004年に施行された個人情報保護法への対応にともない、大きな成長を遂げました。それ以降も、度重なる情報漏洩事案の発生防止や、内部統制の強化に向けて、継続的な成長を続けています。2013年度の同市場は、約5,500億円に達するものと予測されます。 【携帯電話を取り入れた企業情報システムや、携帯電話向けコンテンツ市場が拡大】 日本の携帯電話契約数は1億を超え、利用者数という面では市場が成熟しつつあります。ただし、モバイルソリューションやモバイルコンテンツといった周辺市場の成長はまだまだ続くことが期待されます。また、携帯電話事業者が一体的に端末、ネットワーク、プラットフォーム(課金・認証、ポータルの運営など)を展開してきた携帯電話市場は、それぞれの機能を他社でも提供できるような「オープン化」の流れに進んでおり、事業構造や各プレイヤーのパワーバランスが大きく変わりつつあります。 モバイルキャリア市場では、低年齢層・高齢者層における携帯電話保有率の増加と、個人による複数台保有の増加、および法人契約の増加が牽引力となって、携帯電話の契約回線数は、2008年度の約1億700万回線から2013年度には約1億1,500万回線へと増加すると予測しています。 携帯電話事業者の収入については、台数が増えても現在生じているようなARPU(1契約あたりの平均利用料)の下落傾向が続けば、縮小に向かうことになります。下落傾向が改善され、2009年度までは年率−4%、それ以降は年率−3%となるシナリオの場合で、2013年度の収入は2008年度の9割程度に減ると予想しています。 一方、ワイヤレス・ブロードバンド市場は、次世代広帯域無線サービス(WiMAX、次世代PHS)が2009年度に開始されることで、2013年度には3,800億円程度の市場に急拡大することが期待されます。 モバイルコンテンツ市場は、2008年の約3,700億円から2013年には約4,000億円に拡大すると見られます。電子書籍市場やゲーム市場を筆頭に、「エンターテインメント系市場」は拡大するものの、情報サービス系市場の縮小もあり、長期的には市場は縮小すると見られます。 モバイルソリューション市場は、2008年度の3,000億円程度の規模から、2013年度には7,700億円規模の市場になると予測されます。これは、定額制のHSDPA(High Speed Downlink Packet Access:第3世代携帯電話方式W-CDMAのデータ通信を高速化した方式)など、移動体通信事業者のサービスの進化、端末の進化(スマートフォンの普及やMID(Mobile Internet Device:インターネット利用のための携帯端末)の登場)、企業内情報システムの高度化により、ユーザー企業にとって、モバイルソリューション導入に向けたハードルが下がっているからです。 【今後の薄型テレビ市場の拡大は中国など、日本、米国、西欧以外の地域】 薄型テレビの世界市場規模は、2008年の約1億1,400万台(推計)から、2013年には約1億9,900万台に達する見通しです。日本は薄型テレビ先進国であり、次の更新需要を迎えるまでに時間がかかるため、今後は需要の伸びが鈍化する見込みです。米国と西欧は、日本に遅れて薄型テレビの市場が離陸し、成長が続いています。今後、最も市場成長が期待されるのは、ブラウン管テレビの需要が高い中国などの地域と考えられます。 携帯電話端末市場は、日本では新料金制度の導入(端末価格は上昇)に伴い、需要が一気に冷え込むと予想されます。 一方、世界全体の出荷台数は、途上国需要が順調に伸び、2008年度の約10億3,000万台という推計値から、2013年度には12億台を超えると見られます。 デジタルカメラ市場は、日本と北米では成熟期を迎えつつあります。今後の世界需要は、欧州・アジア・南米などが、全体を牽引すると考えられ、2013年度には全世界の年間出荷台数が約1億7,800万台になると予想しています。 デジタルビデオレコーダーの出荷台数は、今後の機器の低価格化、ハードディスクの大容量化、アナログ放送の終了、Blu-rayへの買い替え需要によって、2013年には日本で約340万台、世界全体では約2,900万台までに拡大すると予測されます。 カーナビ等の車載情報端末市場は、自動車販売の低迷や装着率の飽和化に伴い、今までのような大きな伸びは期待できないと考えられ、2013年度における国内市場規模は約540万台になると予測されます。 日本国内のロボット市場(工場で使われるものやエンターテインメント系を除く)は、2008年度の約40億円から2013年度で約140億円に拡大すると予測されます。要介助者・要支援者が自立するのを支援する福祉・介護目的など、補助金による助成を基に開発・実用化されたロボットから、市場が立ち上がる可能性が高いと見られます。 今回のIT市場予測は、2000年以降8回目となります。市場分析や予測の詳細は、単行本「これから情報・通信市場で何が起こるのか 〜IT市場ナビゲーター 2009年版〜」として、東洋経済新報社より12月18日に発売される予定です。 【ニュースリリースに関するお問い合わせ先】 株式会社野村総合研究所 広報部 馬場、瀬戸 TEL: 03-6660-8370 E-mail:
【ご参考:各市場・分野の定義】
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