小正月の行事といえば「とんど」だ。岡山では「どんど」「おかざりはやし」などと呼んでいるが、古式ゆかしい「左義長」という名前を残す所もある。
正月の松飾りやしめ飾りを集めて燃やす。とんどの火でもちを焼いて食べると風邪をひかないとか、書き初めを焼いて書の上達を祈るなど、さまざまな言い伝えがある。
十四日の晩か十五日の朝に行われるのが普通だが、今年は休日の関係もあってか、早めにしたところが多い。学校などではこれからだ。子どもたちが楽しみにしていることだろう。
とんどは平安朝の悪魔払いの宮廷行事が起源とされ、室町時代に都市から広まった。竹をやぐらに組んで焼いて、はぜる音で鬼を追い払うのが本来の姿だ。とんどという名は、その際の音を表していたとされる。
備後地方にはちょっと変わったとんどがある。先日の社会面で紹介された福山市沼隈町の「能登原とんど」だ。大きなやぐらに、弓の的や紅白の造花を飾り付け、とても勇壮で豪華なのが特徴である。
福山市中心部などでもかつては、とんどが華やかに行われていたが、戦後は廃止や縮小が相次いだ。しかし、最近になって世代間の交流やにぎわい創出を目的に復活が続いているという。伝統ある民俗行事に寄せる人々の思いを大切に育てたい。