ガザ住民との団結を呼びかける集会で、大人に交じってイスラエル非難を叫ぶ子供ら=ヨルダン川西岸ナブルス、古谷写す
【ナブルス(パレスチナ自治区)=古谷祐伸】パレスチナ自治政府を率いる穏健派ファタハの地盤、ヨルダン川西岸地区で、ガザを支配するイスラム過激派ハマスへの支持が広がっている。
エルサレムから車で北へ約1時間、西岸の主要都市ナブルス。中心部の広場で8日、ガザ住民との団結を呼びかける集会があり、子供から大人まで約500人が集まった。
「ガザと西岸は殉教者の血でつながっている」「イスラエルは恥を知れ」。そんなスローガンが叫ばれた。設置されたテントには犠牲者の生々しい写真が展示された。
主催した「国際連帯運動」のムハンマドさん(29)は「ガザと西岸の住民は長い間、行き来しておらず、まるで別の国。それでいいのか。同胞が虐殺されている今、団結が必要だ」と話した。
パレスチナ自治区は、約30キロ離れたガザと西岸に分かれ、ハマスがガザを武力制圧した07年6月以降、政治的にも分断された。官僚主義や腐敗体質への批判に危機感を強める自治政府は、ハマス系の団体や施設の取り締まりを繰り返し、西岸ではハマス支持を公言しにくかった。
だが西岸住民の民族意識は確実に強まっている。ナブルス市内のナジャフ大学に通うレイラさん(20)はハマス支持者になりたてだ。それまで、ハマスは考えの偏った暴力集団と考え、ファタハ支持だった。
「ハマスは、罪のないパレスチナ人のために抵抗している。ファタハや自治政府はイスラエルに何も言えず、西岸での抗議集会を取り締まっている。そんなのおかしいわ」 市役所で技師として働く男性(40)は言う。「ハマスは嫌い。でも、この状況で抵抗を続けるあいつらは、イスラエルに協力するだけのファタハより尊敬できる。表立ってハマスを批判できる空気が今はないのが怖いね」