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多趣閑言:新聞とネット /静岡

 県内の事件で警察の発表により容疑者とされたが、その後不起訴となった本人から支局に電話をいただいた。「不起訴になったのに今もネットに容疑者で名前が出ている。就職もできない」。新聞記事は不起訴を報じているが、逮捕時のニュースがネットに残り、就職活動にも支障が出ているという。

 紙面では不起訴になったことを報じれば、新聞社として一応は該当者の名誉回復を図ったことになる。「一応」としたのは、読者が継続的に新聞を読んでいるのが前提で、「都合のいい論理」との批判も免れないからだ。ただ現実に根が深く問題なのはネットだ。

 新聞記事はさまざまな形でネットに流れる。毎日新聞は、不起訴や無罪となれば、出稿部から本社の記事管理部門に連絡。メディア部門からニュースをネットで扱う契約業者に記事削除を依頼している。「容疑者」の名前はネットから消えるはずだがそうはならない。記事を無断引用し、ネットにばらまく業者や個人が存在するからで、今回もそうだ。

 電話では、毎日新聞として対応できる限界(記事の削除依頼など)を説明したが、本人の気持ちを思い、「できるだけのことはする」と伝えた。消えた名前がなぜか復活することがあり、度々電話を受けた。本社への相談ぐらいで何ができたわけでもないが、年明け早々に名前が消えたと感謝する連絡を受けた。

 これまでのネット業者との交渉なども踏まえた本人の感想である。「ネットを使いこなす世代なら信ぴょう性がないのはよく分かっている」と言い、新聞の信頼性を再認識したという。「ネットは記事の羅列でニュース価値が分からない。新聞は記事を紙面のどこに配するかや大きさで示してくれる」とも話していた。あくまでネットとの比較だが、つらい体験から新聞の存在意義を感じてくれたことがうれしかった。【静岡支局長・照山哲史】

毎日新聞 2009年1月13日 地方版

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