2007-03-25 私のサブカル史(1) Jean-Luc Ponty

別のブログに移したマンガネタ以外をどこに書こうかと悩んでいるのですが、まだここの閉鎖は考えていないので(一度整理してリニューアルしようかと思いつつ時間があまりない)、ここに書いてしまってもいいかなと思っています。
自分の音楽歴はバート・バカラックからはじまっているのですが、カーペンターズからシカゴを経由してなぜかフランク・ザッパに行ってしまったのですよ。小学生の頃はアメリカン・トップ40を聞いていて、日本語に翻訳したものがラジオ関東、たしかかなり昔にラジオ日本という名前に変わっていまどうなのかちょっと知らないのですけど、東京では在日米軍向けのFEN(現在AFNと改名)で原版を聞くことができたわけです。FENの深夜0時からのローカルプログラムで時々ザッパがかかっておりました。Montanaがよくかかっていましたが、「いたち野郎」の曲をかけたこともありました。それから「ロック・マガジン」というロック啓蒙誌がありまして、自分が小中学生の頃ってプログレとかフュージョン(最初はクロスオーバーと呼んでいた)がとても流行っていて、当時ギターを弾く少年といったらディープ・パープルかツェッペリンが定番だったんですが、自分は残念ながら楽器を買ってもらえて演奏を学ぶような環境には育たなかったので、図書館の本で知識を仕入れるというパターンで洋楽のお勉強をしていたわけでした。
フュージョンというとウェザー・リポートが新しいジャズの最高峰、という感じだったのですが、私はアメリカンポップス出身で、マイルスとの接点はまだ生まれておらず、クルセイダーズに親しんでいました。ラリー・カールトンが在籍していたグループです。
- アーティスト: クルセイダーズ
- 出版社/メーカー: ユニバーサル インターナショナル
- 発売日: 2000/05/17
- メディア: CD
ロックからフュージョンへの接点はまずボズ・スキャッグスとスティーリー・ダンだったといえるでしょう。ラリー・カールトンを日本で一躍有名にしたのはThe Royal Scam(滅びゆく英雄)の一曲目で、表題作のラスト・ナンバーも傑作で個人的にはこっちがスティーリー・ダンのベストだと思っています。
- アーティスト: ボズ・スキャッグス
- 出版社/メーカー: Sony Music Direct
- 発売日: 2004/12/22
- メディア: CD
- アーティスト: Steely Dan
- 出版社/メーカー: Universal Japan
- 発売日: 1999/11/23
- メディア: CD
- アーティスト: スティーリー・ダン
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ビクター
- 発売日: 2000/05/03
- メディア: CD
私がレコードプレイヤーを親に買ってもらって初めて買ったのはシカゴXだったのですが(4枚組のカーネギー・ホール・ライブを買ってもらおうと思ったのですがすでに入手困難でした)、まさにそのあとスティーリー・ダンの「彩(Aja)」を経て、フランク・ザッパのアポストロフィを入手、このアルバムのギターソロにころっとまいって下北沢で当時輸入盤しかなかったホット・ラッツを購入しております。おこづかいで高い買い物をしたのはこのへんから、というと中学生になってからですが、当時ザッパの日本盤というのは少数しかプレスしていないのですぐ品切れから廃盤になってしまってその前に入手するのが毎月の目標だったのでした。
- アーティスト: フランク・ザッパ
- 出版社/メーカー: ビデオアーツ・ミュージック
- 発売日: 2001/10/24
- メディア: CD
- アーティスト: フランク・ザッパ
- 出版社/メーカー: ビデオアーツ・ミュージック
- 発売日: 1996/06/01
- メディア: CD
アポストロフィはゲストにジャック・ブルース、ジム・ゴードン、あとジョニ・ミッチェルの恋人だったジョン・ゲランを迎えていますが、ゲランとマックス・ベネットはホット・ラッツに参加しており、日本ではあまり知られていないL.A.エクスプレスの主要メンバーでした。ロサンゼルスのスタジオミュージシャンを探ると、ザッパ、スティーリー・ダン、ジョニ・ミッチェル、さらにカーペンターズあたりまでさくっとつながったりするわけです。
- アーティスト: ジョニ・ミッチェル
- 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
- 発売日: 2006/09/27
- メディア: CD
http://en.wikipedia.org/wiki/The_Hissing_of_Summer_Lawns 参加メンバーの記載あり
しかしながらこの2枚に共通するもう一人のミュージシャン、それがエレクトリック・バイオリンのジャン・リュック・ポンティです。やっとタイトルにたどり着きました。
ジャン・リュック・ポンティの名はマハビシュヌ・オーケストラから知った人が多いんじゃないかと思われますが、あとチック・コリアのアルバムにも参加していてロック寄りのフュージョンミュージシャンというイメージが強いように思われます。私自身も実際によく聞いたのはほとんど早弾きバカテク系ということもありますので、60年代の活動については植草甚一氏が書いたものくらいしか覚えがありませんが、60年代後半以降のヨーロッパのジャズについてある程度知っておきたいとはずっと思っているのです。
ポピュラー音楽の領域でも60年代後半から70年代初めあたりは渾沌としていて入手が困難なアルバムも多いのですが、中古がけっこう手に入りやすくなったり、限定盤が出る機会も以前に比べるとかなり増えてきました。ポンティのディスコグラフィは検索でわりと簡単に見つかりましたが、万博の頃来日して佐藤允彦と共演したアルバムがあるのにちょっと驚きました。
渡米したポンティといち早く共演したのが誰あろうジョージ・デュークだったそうで、彼の紹介によりポンティはザッパの作品集を出して、1969年のアルバム、ホット・ラッツにも参加しています(ジョージ・デュークがザッパ&マザーズに参加するのはもう少しあと)。
ちなみにホット・ラッツに参加したもう一人のバイオリニストのシュガーケイン・ハリスはジャズ畑とは全く関係ないロックンロール、R&B出身で「ドン・アンド・デューイ」として知られていたデュオの一人でロックっぽいバイオリンは明らかに区別できます。ポンティがホット・ラッツで弾いているのは最後の曲It must be a Camelのみですが、当時のジャズがフリー・ジャズの袋小路からなのか、一方でビートルズナンバーに代表される当時のポップスをやたらとカバーする一方で現代音楽との交流からアブストラクトな演奏へと向かうような状況で、ザッパはまさに現代音楽の要素をロックバンドの中に持ち込んだ草分けであり、ホット・ラッツでのポンティの演奏はちょっと異彩を放っているのでした。
ジャン・リュック・ポンティの最もよく知られているアルバムといえば間違いなく「秘なる海」が挙げられます。日本では特にアラン・ホールズワースが自分の参加したアルバムの中でも気に入っているものの一つとしてあげていてホールズワース経由でポンティを知った人も多いでしょう。いかにもプログレっぽいフュージョンというアプローチは、ディスコグラフィによると1975年頃からジャズ・ロック寄りのソロアルバムを出し始めており、この作品の前作にあたるImazinary Voyageもそこそこ話題になりました。70年代のマハビシュヌ・オーケストラと、ジョージ・デュークおよびルース・アンダーウッドの在籍したザッパ&マザーズへの参加を経ており、そのバカテク路線を引き継いだようで本作でもテクニシャンをずらりとそろえています。
- アーティスト: Jean-Luc Ponty
- 出版社/メーカー: Atlantic
- 発売日: 1989/08/22
- メディア: CD
アラン・ホールズワース以外のメンバーとしては、まずダリル・スチューマーはDuke-Underwoodのマザーズに在籍していたチェスター・トンプソンとともに、3人が残っていたジェネシスのサポートメンバーに参加しており、キーボードのAllan Zavodアラン・ザヴォドは後にザッパのバンドに一時期参加しておりました。とにかく早弾きが取り柄のこの二人にポンティとホールズワースの4人で、ギターとバイオリンとキーボードで全部ギターに聞こえるかのように早弾き合戦をする表題曲はいま聴くと笑えるところもあるのですが、ジャーニー出身のスティーブ・スミスがスーパー・ドラマーとして有名になって、さらにこのアルバムを伝説的なものにしているようです。
ところでこのアルバムが発売されたのは1977年であり、ちょうど彩(エイジャ)が発表された年になっています。ザッパはDuke-Underwoodのマザーズが解散した後に、マザーズというバンドの名前を封印して、オーディションでテリー・ボジオを招いたりしていますがおそらく同時期にロキシー・ミュージックで活動していたエディ・ジョブソンも参加したのではないかと思われます。
ザッパのバイオグラフィはコレクター期にけっこう読んだと思うのですが、ザッパのバンドにおけるエディ・ジョブソンの活動には謎も多く(単にちゃんと調べていないだけかもしれない)、76年のライブアルバムやその後の作品の一部でバイオリンとキーボードを担当していました。とはいうもののポンティの後釜としてジョブソンを採用したという感じはしません。
- アーティスト: Frank Zappa
- 出版社/メーカー: Vido Arts
- 発売日: 1995/05/02
- メディア: CD
ジョブソンの公式サイトをのぞくと、アルバムカバーに写真の載っているZoot AlluresではMixing CompanionとHumoristを担当したと述べられています。同じくアルバム写真の載っているパトリック・オハーンもジョブソンもこのアルバムでは演奏に参加しておらず、クレジットも特にないようで、彼らは自分で作曲、演奏からプロデュースまでをするタイプであるので、イメージとしては弟子入りというか、すでに存在した音源に楽器をオーバーダブするために雇われたのかしらなどと思ってしまいます。その後ジョブソンはUKの結成のためザッパのもとを離れますがUKのファースト・アルバムは1978年で、パンク・ムーブメントの波と入れ替わるようにブリティッシュ・プログレは衰退してしまいます。
- アーティスト: U.K.
- 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
- 発売日: 2006/05/24
- メディア: CD
70年代後半以降のザッパのバンドからエイドリアン・ブリューが出世したり興味深いことはあるのですが、ポンティの話に戻ると、結局「秘なる海」のような路線もまた先が続かず、アラン・ホールズワースの人気にあやかるかのようにその後も日本盤のリリースはありましたが、80年代のポップとニューウェーヴの大波の中で私の中では古きよきプログレとフュージョンはいつしか薄れていきました。それが意外な形でよみがえってくるのは、パット・メセニーの登場です。ポンティやあるいはチック・コリアの経歴などをたどるとジャズからアブストラクトなほうにもちょっと入ったりしながらロック的なものも採り入れるという流れがありました。メセニーの時代にはもはや彼に対してロックというジャンルを必要としないくらいにロックは拡散しているのですが、なんとなくプログレ的な要素もあり、プログレとフュージョンの垣根を無効化しつつインストゥルメンタルの一つのスタイルを確立させてしまったという感じがしました。ただ、最近は年をとったのかこうしたものへの関心が全体に薄れている感じがします。
とりとめのないままに書き留めてみたのは思いついた時に書かないと2度と書く機会がないだろうなあと思ったというのが正直なところです。
2007-03-21 野生の思考と文化というもの

前に紹介した「アースダイバー」について何か感想を書こうと思ったが、たぶん東京を歩き回ったことのない人にはこの本のなんとも言い難い面白さはよくわからないような気はする。単に私が知らないだけかもしれないが、世界中の都会の中でも東京のような異様な都市はめったにないような感じがするのである。
ただ、人間がなぜ文化というものを生み出したのか、と考えた時、それが合理性によって生み出されたものとは少なくとも私には考えられない。文化を生み出すもとにはおそらくなにかしらの「野生の思考」がはたらいているのである。
父は電気系の仕事だったので子どもの頃からよく秋葉原につれて行かれたものだが、最初はアキバハラと呼んでいて、あとからアキハバラと呼ぶことを知ったけれども、もともとアキバハラが正しかったそうだ。いつごろ呼ばれ方が変わったのかが書かれていないので、そのへんがわかるとうれしいのだけど、どう考えてもアキバハラと呼ぶほうが自然であると思う。
それから浅草、多摩に住む自分にとって浅草へのアクセスは実に面倒くさいのだが、やはり浅草という場所も不思議な場所である。ここでエノケンについて語られていることに興味を持った。いまの吉本出身の芸人はしゃべくり芸が専門で、からだの動きを使った芸を見せる人がほとんどいないという指摘である。からだの動きというのはダンサーの動き、さらに人間ならぬ動物の動きであり、かつてはこのようなからだの動きがなければ人気は出なかったであろうという。たしかに、チャップリンのようなパントマイムとともに、ディズニーに代表されるような人間のように動く動物のアニメーションが生まれていたのではなかろうかとも思うのだ。
自分の記憶からすると、幼い頃本当によく動き回ったのを見たコント55号から志村けんまでという感じがする。もともとエンタツ・アチャコがしゃべくり芸で知られていたそうで藤山寛美はどうだったか、ダンスまではしなかったような気はする。特にテレビをほとんど見なくなったあとでダウンタウンが一世を風靡して、実際のところよくわからないけれどもいまは動きの芸そのものがあまりないような気はして、ビートたけし以降お笑いこそが最も知性的であるというような認識が行き渡るようになったような気がするのだが、特に最近は脳ばかりがクローズアップされて身体知のほうがなんとなく危うげになってしまったようにも思われるのである。あとエノケン自体が現在全く忘れられているのに気づいて自分もその芸を見たことがないのだが驚いてしまった。
私はかつて中沢新一氏への興味はほとんどなかったのだけど、最近は近代ってそもそもなんなのだと思いながら野生の思考ということについてちょっと考えてみたいという気分であったから、面白く読んだ。
http://www.1101.com/nakazawa/index.html
ちょっと関連して、たまたま以下の人気エントリを見たので追記。
http://d.hatena.ne.jp/ueyamakzk/20070315
ついでにラカニアンといえば、いま売れているこの本もたしかに興味深かった。
2007-03-18

マンガ関連の話はここでは今後しないと先に記したので、詳しくは記しませんけれども、私がここのブログで行ってきた活動がもしも何らかの形でマンガ関係者に結果的に迷惑をかけてしまう原因を引き起こしていたとしたらと思うと忸怩たる思いです。自分のネット環境もノートPCをネットに接続させるとクラッシュするなど最近また不調に陥っています。
マンガ中心の話題に仕切り直したブログを現在別の場所で運営していますが、更新頻度は昨年に比べるとかなり少なめです。ただ先月から今月にかけて研究書、批評書としてぜひ紹介しておくべきものが続けて出ました。まだ書評の類いは全部は書いておらずしばらく時間がかかるかもしれません。自分の興味を惹いたマンガやその周辺分野についても書き続けるつもりです。ここから特にリンクは貼りませんが、興味をお持ちの方はお探しいただければと思います。
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