新婚姻法を制定したノルウェー国会(中央奥)と、国会前の広場でスケートをする子どもたち。新法は子どもたちにとってもプラスとなった(オスロにて)
おそらくは世界で最も革新的な婚姻法が、この1月1日から、ノルウェーで動き出した。同性婚が、異性婚とまったく同等に扱われるようになったのである。
ノルウェーの同性カップルは、すでにパートナーシップ法と呼ばれる法律によって、1993年から多くの法的権利を認められてきた。しかし、「教会で結婚式をあげたり」「養子をとったり」「人工授精によって出産したり」「遺族年金を受け取ったり」「遺産相続をしたり」などは、同性婚の場合、望んでもかなわなかった。その諸権利が、新法によって認められたのだ。
新婚姻法の第1条には、「異なった性または同じ性の2人は、結婚できる」と、きわめて簡単明瞭に記されている。
左上の円形の建物が国会議事堂。すぐ前をベビーカーを押す女性が闊歩する
1年前、この新婚姻法案をノルウェー国会に上程した子ども・男女平等大臣のカリータ・ベッケミーラン(当時)は、次のように語っている。
「この法の目的は、ホモセクシュアルとレズビアンの権利と生活の質を確保することです。この法によって、我々は、差別に積極的に抗し、ホモセクシュアルとレズビアンのカップルが社会でオープンに暮らせるように支援することになります」
そして具体的には、
1)将来、養子縁組をする際、同性のカップルは、異性のカップルと同様の法的権利を持つ
2)レズビアンの伴侶や同棲者は、異性のカップルや異性の同棲者と同様に人工授精などにアクセスできる
3)レズビアン結婚における非生物的母親は、人工授精後に出産した場合、異性カップルに認められている親としての権利と同様に親の権利を自動的に認められる
3)は少しわかりにくいが、従来は、人工授精で誕生した子どもの母親が死んだ場合、その母親の配偶者である女性は、子の親であると認められなかったがために、子どもの養育などの面で親子ともどもさまざまな不利益をこうむってきた。それがすっきりと解消された。これに伴って子ども福祉法や養子法が改正され、同性婚の子も異性婚の子も、法的に同等になった。
1990年代、現職の法務大臣(労働党)がレズビアンであることを公表し、パートナーと同棲していることが大きく報道された。2000年代になると、保守党の財務大臣(男性)が、パートナーシップ法のもとで男性と結婚したことを公表した。このように、社会の大物が同性同士で家族を形成したことをオープンにして、社会の意識形成に大きく寄与した。
とはいえ、国教でもあるキリスト教(ルーテル派)内部には、「断固反対」を唱える教会が多々ある。しかし、政府は、各教会をとりまとめる教区に、マイノリティのセクシュアリティに関する研修を怠らなかった。
ノルウェーの出生率は1.9。先進国の中ではきわめて高い。それも、こうした多様な生き方が認められる風土と、無関係ではないように思われる。
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