◎人気の白山百膳 郷土料理にさらに磨きを
白山ろく地域で昨年十月からスタートした郷土料理尽くしの「白山百膳(ぜん)」が好
評を博している。今冬から熊鍋やしし鍋といった「鍋御膳」も始まり、スキーと温泉でにぎわう冬の山里に、食の楽しみが加わった。
食材から食器まで地元にこだわった「能登丼」、高岡市のコロッケ、氷見市のカレーな
ど、北陸各地で郷土色あふれる旬の食材や創作料理を見直す機運が高まってきている。まずは地元で愛される存在になるよう、積極的に食べて意見を出し合い、おいしさに磨きをかけたい。
旧白山五村エリアの三十一店舗で提供する白山百膳は、スタート月の十月だけで約五千
三百食が出た。売り上げは九百二十万円に上ったという。人気の理由は、白山の水で育った食材の素晴らしさだけではない。旬の食材を一番おいしく食べてもらうために、地元の人が知恵を出し合って味に工夫を重ねてきたからだろう。
先月末から始まった「冬の鍋御膳」は、熊やイノシシの肉を提供し、地元の「山の幸」
の豊かさをアピールしている。地元の郷土料理をたっぷり味わい、そのうまさを自分の言葉で語れるようになってこそ、胸を張って遠来の客にも勧められる。「地産地消」などと肩ひじ張らず、自分たちの秘伝の味を、おすそ分けするような意識で、客に提供してほしい。
冬・春メニューの提供が始まった「能登丼」は、コウバコガニを使った人気メニューの
ほか、シカやキジといった珍しい食材も登場した。二年目の今年は、マンネリ化に陥らず、「地域ブランド」としての知名度をさらに高めるための挑戦の年である。
能登は、食材があまりにも豊富なために、一つや二つに絞り込むのは難しい。ならばい
っそのこと、多彩な食材を、「丼」という庶民的な料理で一つにくくり、統一感を持たせる「逆転の発想」が能登丼の面白さである。
こちらもまだまだ研究の余地が多くあり、いろんな挑戦が可能だ。自分たちが食べてみ
たい料理のレシピを考え、食材を探す過程のなかから、意外なヒット商品が生まれるかもしれない。
◎ガス田開発問題 海底資源に本腰のとき
東シナ海の天然ガス田共同開発をめぐって日中両政府の対立が再び表面化し、次官級の
戦略対話が東京で開かれた。中国側が合意に反してガス田の単独開発を進めたことに日本側が抗議し、条約締結協議を加速させることで一致したが、この問題の背景には、海底資源開発に日本政府が及び腰であり、民間企業の鉱業権申請を長年棚上げにしてきたことがある。
日中の海洋権益が重なる東シナ海の中間線海域の資源開発は、政治問題化して困難なが
ら、これを機に日本の権益が明確な海域での資源開発に本腰を入れたい。日本周辺は海底資源が豊富であり、世界経済の転換期を迎え、新たなフロンティアとして本格開発に取り組む価値がある。
政府は昨年、国連に重要な申請を行った。大陸棚の拡大申請である。沿岸から二百カイ
リの排他的経済水域はむろん、それを超えて石油・天然ガスなどの海底資源権益を主張できる大陸棚を調べたところ、小笠原諸島周辺などに国土の二倍の約七十四万平方キロの大陸棚があることが分かった。それを国連に認めてもらうため、データなどを提出したのである。
日本は領海と排他的経済水域の広さだけで世界第六位の海洋大国であり、産業に欠かせ
ぬ希少金属(レアメタル)を含む海底熱水鉱床や、次世代エネルギーとして有望視される膨大なメタンハイドレート(氷結メタンガス)などが管轄海域で確認されている。
むろん経産省なども手をこまねいているわけではなく、昨年、海洋基本計画を策定した
。基本計画では海洋エネルギー・鉱物資源開発計画をまとめ、十年程度をめどにメタンハイドレートなどの開発を商業化する方針を示している。採掘の商業化は簡単ではないが、既に技術開発は進んでおり、本格的な試験採掘と埋蔵量調査の準備が整えられているという。
最も肝心なのは、政府の真剣さである。海底資源開発は、資源エネルギーを外国に頼る
日本の弱点を克服して、新たな地平を開く可能性が大きい。国策として推進すべきときと認識してほしい。