麻生太郎首相と韓国の李明博(イミョンバク)大統領がソウルで会談し、北朝鮮の核問題やアフガニスタンの復興支援、世界的な金融危機への対応などで協力を強化していくことで一致した。昨年4月に日韓が合意した「成熟したパートナーシップ」関係を今後は実践を通じて確かなものにしてもらいたい。
今回の首脳会談は20日に発足する米国のオバマ新政権を意識したものになった。麻生首相と李大統領がともに、北朝鮮の核問題で日米韓の3カ国連携の必要性を強調したのがそのあらわれといえる。
北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議は核計画の検証方法に関する文書化問題で手詰まり状態が続いている。これをいかに打開するかの大きなカギは米新政権が握っている。
首脳会談で李大統領は「米国を含めた3カ国の協力が非常に重要だ」と述べ、麻生首相は「米新政権発足を受け北朝鮮は日米韓の分断を図り揺さぶりをかけるかもしれない。3カ国の緊密連携が必要だ」と応じた。
米新政権の発足を前に、日韓首脳が歩調を合わせて米国との連携を図っていくことを確認したのは意味がある。両首脳はこの確認を言葉だけでなく実行で示していく必要がある。
アフガニスタンの復興支援で日韓協力の方策を検討していくことで合意したのも米新政権をにらんだものといえる。
オバマ次期大統領はアフガン問題を重視する方針を示している。しかし、人的貢献の分野で日本は、自衛隊派遣へ向けた新法づくりの環境は整っていない。軍隊を復興支援に当たらせてきた韓国もいまは部隊を撤退させている。
両首脳が検討することで合意した日韓の復興支援協力は、日本の国際協力機構(JICA)と韓国国際協力団(KOICA)などによる職業訓練や農業協力などを想定しているようだ。自衛隊派遣に比べれば地味かもしれないが、実効あるアフガン支援の一方策として意義があろう。日韓共同の国際協力をぜひ実現させてほしい。
日韓関係は昨年4月の李大統領訪日後も新学習指導要領解説書への竹島問題記載でぎくしゃくしたが、首脳交流はその後も頻繁に行われている。麻生首相にとっては今回が首相就任後初の訪韓だったが、李大統領との顔合わせは昨年10月以降すでに5回にのぼる。
李大統領は共同会見で「近くて遠い国から近くて近い国として発展していることを象徴している」と述べ、首脳会談では年内訪日を約束した。今回、大統領が竹島問題などに言及しなかったのも未来志向の両国関係に配意してのことだろう。
首脳が相互に訪問し合う「シャトル外交」の定着を通じた関係強化は国際社会への貢献での日韓共同作業にもつながるはずだ。
毎日新聞 2009年1月13日 東京朝刊