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社説

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日本と韓国―国際舞台で協力広げたい

 ともに支持率の低迷にあえぐ日本と韓国の政権だが、こと両国関係では新たな可能性が広がりそうだ。そんな期待を抱かせる展開となった。

 麻生首相が就任後初めて訪韓し、李明博大統領と会談した。

 北朝鮮の核問題で日米韓が結束する大切さを確認した。国際金融危機にも連携して対処することで一致した。

 これらは当然のこととはいえ、米国でオバマ新政権が発足する直前のこの時期に日韓首脳が改めて確かめ合った点に意味があろう。

 より注目すべきは、国際社会のいろいろな課題に対し、日韓が手を取り合って協力していく方針を鮮明に打ち出したことだ。これまでは二国間問題にばかり偏るきらいがあっただけに、新鮮な方向として歓迎したい。

 とくに話し合われたのは、アフガニスタンの復興へ日韓がどう協力して支援できるかということだった。

 各国とともに日本や韓国の人たちも現地で支援活動に汗を流している。

 だが、アフガンの情勢は混迷の度合いを深めるばかりだ。この問題を重視するオバマ新政権は、日韓にもより多くの貢献を求めてくるだろう。今度の首脳会談で検討したのも、それを念頭に置いたことは間違いあるまい。

 日韓が協力して何をするのか、まだ具体的には決まっていない。軍事面の貢献には厳しい制約や難問が多いだけに、民生分野でともにできることを早急に詰めていくべきだ。

 アフガン以外にも、途上国の開発や安定化への支援をはじめ、地球温暖化や環境問題など、日韓が協力して対応すべき国際問題は少なくない。

 その意味から、「日韓新時代共同研究プロジェクト」の立ち上げを首脳会談で合意したのは評価できる。

 「国際社会にともに貢献する日韓関係」をテーマに、両国の有識者らが研究していくものだ。さまざまな可能性を探り、成果をあげてもらいたい。

 国際舞台で協力を積み重ねる。日中韓首脳会議なども生かして地域の安定を目指す。こうした取り組みは日韓関係そのものの強化にもつながる。

 今回の首相訪韓は、隣国の首脳同士が気軽に往来して率直に意見交換し、信頼を築こうという「シャトル外交」の復活と定着をも意味する。

 日本の首相の靖国参拝へのこだわりと韓国側の過剰なナショナリズムから首脳往来もできなかった一時期の惨憺(さんたん)たる経験を繰り返してはならない。

 朝鮮半島を日本が植民地にした「韓国併合」から来年で100年だ。「過去を直視し、未来を見据える姿勢が重要だ」と、首脳会談のたびに強調されはするが、歴史や領土をめぐるわだかまりが消えたわけではない。

 今回の会談がそこから一歩でも踏み出すきっかけになってほしい。

公務員改革―新たな体制で仕切り直せ

 現状を改める必要性では与野党の多くの議員が一致しているのに、具体的な動きとなると足踏みしているのが、国家公務員制度の改革である。

 政府は昨年、公務員の幹部人事を各省任せにせず、首相官邸で一元的に管理するための「内閣人事局」の09年度中の発足をあきらめ、来年4月へと先送りした。そのうえで、労働基本権の拡大なども含めた改革全体の工程表を近く決めるという。

 来年4月といっても、任期満了を今秋迎える衆議院の総選挙がそれまでに必ずある。ことは日本の官僚制度の基本にメスを入れようという大改革だ。あたふたとスケジュールにこだわることなく、新たな政権のもとで仕切り直すのが賢明だ。

 内閣人事局は、与党と民主党の合意で、昨年6月に成立した国家公務員制度改革基本法に盛り込まれた。各省ごとにやっていた幹部人事の原案づくりを、官房長官のもとに一本化することが柱になっている。

 「省益あって国益なし」と言われるほど、中央省庁の官僚には縦割り意識が染みついている。そこに風穴を開けなければ、国民のための行政はできない。ねじれ国会の中、与野党がそういう問題意識で一致したのは意味のあることだった。

 これを受けて有識者による顧問会議が昨年11月に報告書をまとめた。人事院や総務省、財務省の、公務員人事にかかわる部門を内閣人事局に移すという内容だ。ところが、これらの役所との折衝が難航し、それが09年度内の発足を断念する直接の理由となった。

 ただ、この顧問会議では、人事局に幹部人事の原案をつくるだけの実質的な権限をどうやって持たせるかという中身の議論が極めて不十分だった。麻生首相への政権交代もあって検討開始がずれ込み、実質的な議論の期間が1カ月しかとれなかったからだ。

 このため、基本法を推進した自民党議員からは「拙速に形ばかりつくるべきではない」と骨抜きを警戒する声が出たし、基本法案の修正協議に加わった民主党からも、蚊帳の外に置かれた不満が出たりしていた。

 政府は昨年末、安倍政権下で新設が決まった天下りあっせんのための「官民人材交流センター」を発足させた。だが、天下りを承認する監視委員会の委員が野党の反対で決められないままの見切り発車だった。本来やめることになっている「わたり」と呼ばれる再々就職のあっせんを認めるかどうかもあいまいなままだ。

 次の衆院選にあたって、各党は、天下り問題も含めた公務員制度全体の改革案を、政権公約として改めて示すべきだ。そのうえで新たな政権のもと、与野党で強力な体制をつくり、実行に移すしかない。

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