【第35回】 2008年12月22日
総集編~あの作り方は今
2009年は「古いしがらみ」を捨てる勇気を持とう!
それは「日本郵政」。世界に類を見ない300兆円もの資金を持っています。しかもこれはもう民営化されているので、アメリカから見れば「安心して受け入れられるおカネ」なんです。アメリカの金融機関に出資すれば、日本にとっても色々なノウハウを受け入れられるメリットがある。だから、民営化された郵政は、アメリカに投資したほうがよいのです。
上田 しかし、もしあのとき日本郵政がアメリカに出資していたとしたら、その後の株価の暴落で大きなダメージを被っていたのでは?
竹中 現在は民間や外国のおカネだけではにっちもさっちもいかないほどのキャピタルクランチが起きています。もはや政府が公的資金を注入する以外に救済の方法はなくなった。日本郵政があの時もし出資していれば、資本を大きく毀損された可能性は確かにあります。
しかし、資本注入はあくまでも「一時しのぎ」の対策。長期的に見れば、やはり今後も日本郵政による出資は継続して考えて行くべきでしょう。
上田 なるほど。でも国民は「大丈夫なのか」と心配しませんか?
竹中 そこはもう、経営者の判断次第でしょう。逆に言えば、金融危機の前に郵政は出資をしなかったので、経営判断は正しかったことになる。だから市場の「底値」をちゃんと見極めて、よいタイミングで、相手にも感謝される方向で出資をすればよいでしょう。
欧米への金融機関への出資は、郵政ばかりでなく、日本の証券会社、保険会社、銀行など全ての金融機関についても言えることです。
上田 諸外国の政府系ファンドは、現在も活発に活動しているんですか?
竹中 そうですね。金融危機の影響で一部運用損が出ているとはいえ、今でも産油国にはおカネが集まっているので、それを何らかの形で運用しなくてはならない。このような状況下、投資状況を慎重に判断することは重要ですが、「投資熱」そのものは変わっていません。
上田 では、来年以降、アメリカ経済は回復基調に乗るんでしょうか?
竹中 公的資金注入によって金融危機は収まり始めても、その一方で経済が悪化しています。来年は先進諸国がゼロ成長かマイナス成長に陥ると見られており、特に前半はとても厳しい状況になると予測されます。
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竹中平蔵
(慶應義塾大学教授 グローバルセキュリティ研究所所長)
1951年生まれ。一橋大学経済学部卒業後、日本開発銀行に入行。ハーバード大学、ペンシルバニア大学客員研究員、大阪大学助教授、慶應義塾大学教授などを経て、01年より小泉内閣で金融担当大臣、経済財政政策担当大臣、郵政民営化担当大臣、総務大臣を歴任。04年から06年まで参議院議員。
上田晋也
(タレント)
1970年生まれ。お笑いコンビ「くりぃむしちゅー」メンバー。早稲田大学教育学部中退。91年に有田哲平とコンビ結成。レギュラー出演番組多数。
経済学者・竹中平蔵と、くりぃむしちゅーの上田晋也が、毎週楽しくわかりやすく日本の経済を解説。同名テレビ番組(BS朝日、朝日ニュースター)の一部を再構成してお届けします。