【第24回】 2009年01月09日
あなたは大丈夫?! ひとりメシ、ひとり暮らしの孤独男が「うつ」になるワケ
――「孤独」が男性のココロを蝕むとき
行きつけの蕎麦店は、昼食をとる男性たちで溢れている。そのうち半分くらいは一人で来ている客だ。中田堅司課長もこうして一人黙々と、きつね蕎麦をすすっている。
さっき、元部下のA君がうつで休職しているという話を耳にした。まだ独身で地方から上京しているという彼。実家には帰らず自宅療養を続けているそうだが、生活の面倒は誰が見ているのだろう。万が一、自殺願望に駆られたとき、止めてくれる人はいるのだろうか?
あいつも、休職する前はこうして一人で昼食をとっていたのかな――黙々と食事する男たちを見ながら、ふと中田課長は不安に駆られた。
心の病にとりつかれても、本人自身はなかなか自覚できないという。とはいえ、仕事中はパーテーションで区切られたデスクに座ったきりで、他人の顔色などわからない。日頃一緒に食事する仲間なら異変をキャッチできるかもしれないが、あいにくたいていはひとりだ。家族とじっくり顔を合わせる時間もそうない。つくづく生きづらい時代になったものだ。
突然店内にはなやかな笑い声が響いた。奥のテーブルを陣取る女性グループからだ。「もしかして髪型変わった?」「その口紅、色キレ~イ」などと、しきりにお互いの様子をチェックしている。
やれやれ、孤独なのは男だけか――年明け早々、なんだかブルーな気分になってしまう中田課長だった。
ひとりメシにひとり暮らし
男性に増える「孤独死」
「彼女や妻がいない」「友達がいない」「職場や学校で孤立している」といった男性をインターネットの世界では「孤男」と呼ぶそうだ。2ちゃんねるには「孤独な男性板」という掲示板も存在している。
「孤男」を自称する男性の多くは独身若年層のようだが、既婚であっても残業残業の日々で家族との時間が持てず、「気が付くとなんとなく孤独」という男性も少なくないだろう。職場でもメールでのやり取りが多くなり、同僚と雑談する機会が減っている。
たとえば冒頭のような「ひとりメシ」は、圧倒的に男性に多い。第一生命経済研究所が2007年12月に発表したアンケート調査では、昼食を一緒にとる相手として、女性では「同性の同僚」が62.5%と最多。これに対し、男性は「ひとりで食べる」が50.2%とトップだった。
ひとり暮らしも男性に目立つ。2005年に実施した総務省国勢調査によると、単身世帯総数は男性が766万世帯、女性が679万世帯。高齢女性の単身世帯が含まれるためさほど大きな差はないが、若い世代では男性のほうがぐっと多い。年齢ごとの単身世帯数をピンポイントに見ていくと、30歳では男性が19万世帯、女性が10万世帯とほぼ倍。40歳では男性が13万世帯、女性が6万世帯だ。
家族もなく、職場でも一人ぼっち――中には孤独からうつを患ったり、看病する人もいないまま病気を抱えこむ人もいる。日本民医連の調べ(2007年発表)では、70歳未満と比較的若い層の孤独死は、91%が男性だった。
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西川敦子
(フリーライター)
1967年生まれ。上智大学外国語学部卒業。編集プロダクション勤務を経て、独立。週刊ダイヤモンド、人事関連雑誌、女性誌などで、メンタルヘルスや介護、医療、格差問題、独立・起業などをテーマに取材、執筆を続ける。西川氏の前作「『うつ』のち、晴れ」は、ダイヤモンド・オンラインで人気No.1連載に。
出産後も辞めないアラフォー女、3年で辞める腰掛け男 etc・・・、時代が変われば、働くルールも様変わり。働く男女にまつわる悲喜こもごものケースを多数紹介。男女が共存共栄していくための新たな職場のルールを提案します。