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【社会】

09年問題 春から失職激増

2009年1月12日 朝刊

 自動車などの製造業を中心に多くの非正規労働者が職を奪われる中、製造業に労働者を派遣できる法律の見直しが、大きな焦点になってきた。製造業に派遣された人たちの契約は三月以降に一斉に切れることから「二〇〇九年問題」と呼ばれていて、失職者が増えるのは避けられそうにない。

 製造業への派遣は、派遣法改正で〇四年三月に解禁された。〇七年三月以降は最長雇用期間が一年から三年に延長され、〇六年三月にさかのぼって最長三年の派遣受け入れを始められる仕組みになった。この規定で〇六年に派遣労働者を受け入れる企業が急増した。

 それまでは、企業が別会社に任せる「請負」という形が多かった。しかし、請負は、仕事の指示を直接労働者にはできず、別会社を通じる仕組みになっていて、直接指示する偽装請負がキヤノンなどで発覚。社会問題化したことで直接指示のできる「派遣」への切り替えが進んだ。

 この結果、〇五年に約七万人だった製造業の派遣労働者は〇六年に約二十四万人、〇七年に約四十六万人と二年で六・六倍に膨れ上がった。〇六年に派遣となった労働者は今年三月以降、次々と契約の期限切れを迎えることになる。

 厚生労働省の調査では、三月末までに職を失う非正規労働者は少なくとも八万五千人(先月十九日現在)。厚労省は昨年九月、二〇〇九年問題で、派遣期間が満了しても、その仕事が一時的なものでなく、恒常的なら「本人と直接雇用契約するか、請負にすべきだ」とする通知を出したものの、効果は懐疑的。業績悪化を理由に雇い止めや契約の中途解除をする企業はさらに増えそうだ。

 大和総研の渡辺浩志エコノミストは「製造業への派遣が可能になったため『雇用の調整弁』として大幅削減ができるようになった」と指摘、「未曾有の生産悪化に連動して、昨年十一月から今年六月までの八カ月間で、百七十万人の雇用者が削減される可能性がある」と話している。

 

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