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【主張】中国の空母建造 軍事バランス変化を憂慮
中国が初の国産空母建造に乗り出している。2016年までに2隻の中型空母を完成させ、改修している旧ソ連空母ワリャーグとともに計3隻を運用する方針という。
これは海洋における軍事作戦能力が飛躍的に拡大することを意味する。遠方への戦略展開も可能だ。東アジアの軍事バランスを変えることになり、憂慮せざるを得ない。
空母建造の検討を初めて公式に認めたのは、昨年12月23日の中国国防省報道官の会見だ。報道官は「空母は国家の総合力の体現」と説明したうえで、「領海主権と沿岸部の権益を守ることは中国軍の神聖な職責だ」と強調した。
ハードルはある。潜水艦をはじめ護衛兵力を含めた機動部隊にすれば、後方支援や衛星網などの立体的な運用技術が欠かせない。これには膨大な費用と時間がかかる。艦載機を発進させるなどの技術的な問題も残っている。
一方で「戦わずして相手を屈服させられる」という中国側の発言がある。東シナ海などの海洋権益の確保が狙いである以上、日本はその動向に重大な関心を払わなければなるまい。
問題は日本の備えである。防衛費は平成14年度をピークに毎年減少している。来年度の防衛予算案も今年度に比べ、0・8%減らされた。14年度を100とすると21年度は95でしかない。
平成16年に閣議決定された5年間の防衛力整備を定めた防衛大綱と前大綱を比べると、海自の護衛艦約50隻は47隻、空自の約300機の戦闘機は約260機にそれぞれ減らされた。
これに対し、中国国防費は20年連続で2けたの伸び率を示している。公表ベースで既に日本の防衛費を上回っており、前述の比較を適用すると240以上だ。この国防費には装備購入費などが含まれておらず、米国防総省は公表額の3倍と分析している。
中国海軍高官は一昨年、訪中したキーティング米太平洋軍司令官に対し、太平洋を東西に二分して管理することを提案した。空母保有で中国の攻勢は強まろう。
政府は9日、有識者でつくる「安全保障と防衛力に関する懇談会」初会合を開き、防衛大綱見直しに着手した。これまではまず削減ありきで、日本を取り巻く戦略環境にどう対応するかの議論は欠けていた。現在の防衛力で日本を守れるのか、総点検すべきだ。