毎日新聞の小ネタになりました。
テーマ:ブログ毎日新聞の石戸記者から掲載連絡メールをいただきました。
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きび談語:警察に逮捕された容疑者が… /岡山
警察に逮捕された容疑者が軽度の知的障害者だったと報道された事件に関して、知人からこんなメールをもらった。「障害への理解が浅はか。なぜ社会的な支援から漏れてしまったのかが大事なのでは」▲知人の指摘はもっともだ。実際に、同じような障害の子供がいる人に話を聞いたことがある。日常生活の大部分は支障なくこなせるため、かえって理解が進んでいないというのだ。「相談できる場所はどこにあるのか。周囲の支援がもう少しあれば」とも話していた▲望ましい支援や福祉について考えてしまう。容疑者の言動をこれ見よがしに伝えるニュースが、障害者の“不審者扱い”や排除につながらなければいいのだが。問題は別にあると思う。【石戸諭】
毎日新聞 2009年1月9日 地方版
http://mainichi.jp/area/okayama/news/20090109ddlk33070486000c.html
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この知人が私のことだそうです。
ちなみに私のブチブチ言ってた実際のメールはこんなかんじです。
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同じ毎日の東金の殺人事件なのですがほんとこれどうなの?です。
http://mainichi.jp/select/today/news/20081207k0000m040111000c.html (リンク切れのため以下抜粋)
『捜査本部によると、〇〇容疑者は、逮捕の瞬間「うん」とうなずいた。その後の調べで、遺棄を認め「(〇〇ちゃんが)ぐったりしていて怖かった」と説明した。また、〇〇容疑者の部屋には、女児向けアニメのポスターが壁に張られ、本棚にも「プリキュア」シリーズなどの少女漫画が並んでおり、部屋一面が漫画に囲まれた状態だった。
○○容疑者が「仕事がいやになった、もう行かない」と3年間勤めた会社を辞めたのは事件前日の9月20日。事件後には、報道各社の取材に何度も応じる一方、女性記者や同じマンションに住む若い女性をつけ回す不審な行動もあった。
〇〇容疑者は、母親と2人暮らし。母親は自宅近くの飲食店に勤めており、息子のために店の残り物をよく持ち帰っていたという。女性従業員は「(〇〇容疑者が)店の前で母親を待っている姿をよく見た。母親は息子を溺愛(できあい)していた」と話した。
〇〇容疑者は、地元養護学校高等部を卒業後の05年4月から、学校の紹介で隣の市の寝具会社に就職した。志望動機には「会社のためにいっしょうけんめいがんばりますので、よろしくお願いします」と書かれていた。
平日の午前8時~午後5時半、主に布団の綿の打ち直し(修理)作業に従事していたが、勤務態度はまじめとはいえず、従業員から「会社は仕事をする場所、仕事をしなさい」としかられると、ふてくされたような態度をとったという。
直接取材していた毎日新聞の女性記者が、現場近くで取材をしていると、出会った○○容疑者が後をつけてくることもあり、10月上旬には1日10回以上、無言電話などをかけてきた。』
上杉さんは怒ってますが…。
http://diamond.jp/series/uesugi/10057/
これ、不審者情報の聞き込みからあがってるんですよね。私は匿名報道っていうよりも、この毎日の記事は知的障害者に理解の欠片もありません。
先日仕事で飛行機使ったんですが知的障害者のグループの優先搭乗がありました。ボランティアが障害者1人に対して1人、もしくは2人ついてました。ある知的障害者がふつうに女性に声をかけてましたがまわりのフォローがあれば、まったく混乱はありませんでしたよ。
「この知的障害をもった彼はどうして社会的なフォローからこぼれてしまったのかを考えないといけないのでは?」という話にしなくちゃいけないんじゃないかなあと思います。そういった記事を取材されて書いてみてはいかがでしょう?
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無言電話って・・・、連絡先教えてるからかかってくるんですよね。それってほんとに「つきまとい」なの?。さすがにこの事件は「プリキュアだ、少女漫画だ」といおうが、はあ?って思った人が多いと思いますが、石戸さんもさすがにひどいと感じられたようで、お正月から取材に取り組まれているそうです。ほんとがんばってね。
以下のような事件もありますから、気をつけたほうがいいと思います。
知的障害者の誤認逮捕 国賠訴訟で100万円賠償命令 宇都宮地裁
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/080228/trl0802281350012-n1.htm
昨年の石戸さんの連載、ウェブから消えてるので、もったいないので、ここにメモしておきますね。
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安心の風景:1/県警の「ももくん安心メール」
「子供の安全」を守る活動は多彩だ。町内会やPTAなど組織同士が連携する取り組みも行われている。警察が地域での不審者情報を希望者に配信するシステムも完成し、防犯意識は官民を巻き込んで高まりを見せる。地域防犯の現場を歩いた。【石戸諭】
今年8月、県警が不審者などの防犯情報を提供する「ももくん安心メール」に「知らないうちにはさみを持った男に髪を切られた」という情報が流れた。不審者は男性で45~50歳、身長は160~165センチ。メールに添付された地図が表示した現場は、岡山市内の古書店だった。通報を受けた県警は捜査に乗り出すが目撃情報はなく、店内の監視カメラにも、それらしい映像はない。切られたはずの髪の毛も現場から見つからなかった。ある捜査幹部は、こう明かす。「事件なのか何なのか分からない段階でメール情報が流れる。あいまいな内容でも捜査員を出さないといけない」。情報に振り回される戸惑いから、現場の捜査員からは「確実な情報だけを流せばいいのでは」との声も漏れる。「ももくん安心メール」は07年8月から配信が始まった。県警によると、08年9月現在で約1万702人(今年8月現在)が登録、約7割強が保護者だ。利用規約によると、警察に届け出があった18歳未満の子供への声かけ、わいせつ事案のうち、県警が必要性を判断し、登録者に送信する。情報の対象地域は県全域から各警察署管内などの範囲で選ぶことができる。運用開始から1年間の情報件数は833件だった。県警生活安全企画課は「二次被害を防ぎ、県民の利益を守る」と説明。「プライバシーや通報内容も考慮するが、被害報告があった時点で直ちに流すのが基本。事件内容が確定するまで待っていたら、時間がかかる。そういう性質のメールではない。"早く流して"という県民の要望に応えないわけにはいかない」と強調する。
岡山市郊外で地域防犯活動に取り組む会社経営者(45)によると、駅前で検分のため写真撮影していた私服警察官を不審者と間違え、「子供を勝手に撮影している」と学校や保護者に通報した母親もいたという。体感治安の悪化が、こうした反応に拍車をかけているようだ。
警察庁の統計によると、07年の殺人事件数は1199件(未遂含む)。年間3000件前後発生していた1950年代をピークに減少傾向にある。厚労省の人口動態統計によれば、殺人事件の被害者になった子供(0~9歳)は85年の212人から、06年は78人。県内統計で見ても、02年の刑法犯総数約4万5300件が07年は2万9200件。データには表れない"不安"が社会を覆う。11/1岡山版
以前、川崎市の講座でお話させてもらったときに、参加者の方から聞いたんですが、「公園に不審者がいる」と父兄から学校に連絡があって、その学校の教頭先生が、その公園で見張ってたら、その教頭先生が通報されたという泣ける話をおうかがいしました。
安心の風景2:/岡山の庄内学区安全・安心ネットワーク
岡山市郊外で古くからの農村地域と新興住宅街が共存する庄内学区は、市内でも熱心な防犯活動で知られる。住民による、青色の回転灯を装着した青色防犯パトロールカー(青パト)による巡回も盛んだ。町内会やPTA、警察などで組織する「庄内学区安全・安心ネットワーク」が活動の核になっている。
9月上旬、庄内小の下校時間を迎える午後4時前、同ネットワークの三垣貴さん(45)の巡回に同行した。
「自営なので、この時間帯は体が空いていることも多いのです。娘も小学校に通っており、何か地域のためにと思って始めました」。
06年末から始めた青パトは、41台から71台まで増えた。パトロール員も当初の72人から、今や150人。三垣さんの青パトに乗り込むと、パトロール中に手を振ったり、頭を下げる子供も目立つ。
「待ち合わせ場所に行きましょう」と青パトは近くの駐車スペースに。そこでは、黄色のジャンパーやベストを着込んだお年寄りが待っている。グループに分かれて自転車や徒歩、青パトで通学路に向かう。
「枝分かれした道もありますから、地域の方々と協力しなければ」。
それにしても、それほどまでに学区の治安に不安を感じるのだろうか。皆が口をそろえるのが、「新しく家や施設ができて、街が変わった」。目立った事件は起きていないが、三垣さんはこう言う。
「昔は、どこの誰かがすぐに分かった。今はいろんな人が出入りします。『悪さをする人が入りづらい街』にしたい。何かあってからでは遅いですから」。
加えて、巡回に参加するお年寄りからは「子供とのふれ合いが楽しい」という声があがる。小野恭順さん(79)は「子供たちがあいさつしてくれたり、つながりができると一番うれしい」と話す。「黄色のユニホームを着れば、堂々と子供に声をかけることができる」という意見もあった。このユニホームや懐中電灯類は、防犯活動が国の「地域安全安心ステーション」のモデル事業に選ばれたことで、警察庁から貸与されたものだ。
午後7時、高松交番前に続々と青パトが集まる。この日は6台。交番のパトカーを先頭に二手に分かれ、約1時間かけて学区内を回る。駐車場では警察が1台1台に声をかけるという。公園にある身障者用トイレの前を通った時、三垣さんがこんな話をしてくれた。「ここを路上生活者が住居にして、住民が不安がったことがあったんですよ。でもパトロールしたらいなくなりました」。11/8岡山版
その川崎の講座でも話をしたんですけど、「子どもとふれあいたい」とか「地域の間で人のつながりが欲しい」というのを犯罪と結びつけるから変だと思うんだけど。「地域安全マップ」とか「地域安全パトロール」とかやるより、学校が主体で同じリソース割くなら「地域学習」のほうがいいと思うよ。わたしも小学生のときに地域学習があって、「児島の干拓による土地開発」に興味を覚えて、地域に調べに行ったんだけど、よっぽど楽しいし、地域のことがよくわかるし、結果的に地元とつながりもできると思うんですよ。
今でもひとつの事象について、長軸から社会をみたいなというときに、地方史を調べたりするんだけど、大学の先生だけじゃなくて、地元の趣味でいろいろ調べてる学校の先生とか、地域のおじいさんとかのほうがよく知ってたりするなあと思うことはよくあります。当然かもしれないけど。へえーそうだったのかーと。資料も地元の図書館にきちんとあったりするし。子どもの興味の持ち方って多様だと思うんだけど、私がなんで「干拓」に最初興味を覚えてかというと、「私が住んでるところって海だったんですねー」というシンプルは驚きだったかな。「どうして、ここに人が住まなくちゃいけなかったんだろう・・・・?ここらへんはサトウキビ植わってらしいけど、なんで育ててるの?」とか、そこから疑問がいろいろとあとから見えれば道がそれながら、増えていくところが楽しいんじゃないかなあと思うんだけど。そういうのを調べたことって、けっこう今でも役立ってます。
安心の風景:3/官民挙げて防犯活動
岡山市中心部の三勲学区。同学区防犯協議会は、下校時の自転車パトロールなどに加え、小学校内での"見送り"をしている。低学年の児童とじゃんけんしたり、ハイタッチをする姿が目立つ。「子供とふれあうのが、何よりいいみたいです」と同会パトロール隊副隊長の坪田博史さん。ここでも、子供たちとのふれあいが原動力になっているようだ。
坪田さんは「最近は『不審者を見たら逃げろ』の時代。
私服なら顔見知りの子にしか声をかけられないけど、ユニホームなら大丈夫」と話す。子供たちと学区内を歩き、周囲から見えにくい--など危険が予想される場所を写真に撮って「地域安全マップ」作りにも取り組んでいる。
こうした動きを行政も積極的に支援している。岡山市は各小学校区・地区ごとに安全・安心ネットワークの組織化を呼びかけ、06年度から1学区・地区ごとに「子供の安全を守る活動用」など計45万円を出している。これまでの補助総額は約4300万円。県も防犯団体への補助制度のほか、パトロール時に使うスピーカーなどを貸し出している。
官民挙げての防犯活動が、地域の安心を担保している側面があるのは確かだ。一方で、その"副作用"を懸念する声もある。
自身のPTA活動をつづった「PTA再活用論-悩ましき現実を超えて」(中央公論新社)がある作家の川端裕人さんが住む東京都内の小学校周辺では、何か事件がある度に防犯活動の声が高まるという。川端さんは、まさに"悩ましげ"だ。「親が子供を守りたいのは当たり前の感情。統計的に事件が減少していても、ゼロにしたいのが親だ。けれど、『他人を信じるな』と教えられた子供がどんな風に育つのだろうか」
京都造形芸術大講師などを務める社会学者の芹沢一也さんは指摘する。「今の社会でセキュリティー分野は(官民を含めて)あらゆる利害が一致する。誰もが顔見知りで声をかけられる地域社会を復活させるカギが防犯活動。ところが、行き過ぎてしまうと、ユニホームを着ないで子供に声をかけたら不審者扱いされてしまう--という本末転倒の事態も起きかねません。これでは、子供が悪さをしても怒れない」
川端さんは言う。 「犯罪ゼロを求める声は強いが、いくら時間と労力をつぎ込んでも、リスクはゼロにはならない。24時間監視体制を作るくらいなら、子供の自立心を養う方法を議論した方がいいと思う」。11/15岡山版
安心の風景:/4 報道などで「犯罪多発」 不安感じる住民
防犯活動を通じた地域の子供たちとの“ふれあい”は、大人たちが活動を長続きさせるカギのようだ。その一方では、「ユニホームを着ないと、子供にあいさつもできない」という皮肉な事態も起きている。奈良県では05年7月、幼児連れの母親に「誘拐するぞ」と声をかけた脅迫容疑で男性が逮捕、起訴されるケースもあった。裁判では「母親が聞き間違えた可能性が高い」として無罪が確定したが、不審者かどうかが当事者の主観に委ねられる以上、初対面の相手すべてが不審者として扱われる恐れはないのだろうか。
統計上、子供が殺人事件の被害者になる事件は戦後、大幅に減少した。「地域の絆(きずな)があった」と言われる昭和30年代の方が、子供が犠牲になる陰惨な事件が多発していた。「警察白書」によると、19歳以下の少年が被害者になった粗暴犯認知件数も01年の2万5200件から、07年は1万5775件にまで減った。だが、県警生活安全企画課は「(殺人のような)凶悪事件だけが犯罪ではない。刑法犯が減っていても、ももくんメールで伝えている事案は、一歩間違えれば凶悪事件につながりかねない」と説明する。
県警が配信するももくんメールは、県下の不審者情報などを入手できるシステム。地域で自主防犯活動にあたる住民は「直接、地元に関係することは少ないが、県内でどんな事案があったのか、いち早く知ることができるのはいい」と評価する。
住民はなぜ不安を感じるのか。06年に内閣府が公表した「子どもの防犯に関する特別世論調査」では、子供が犯罪被害に遭う不安を持つ人が7割強いた。その理由は、「テレビや新聞で子供が巻き込まれる事件が取り上げられている」がトップで8割を超えた。防犯活動の参加者からも「凶悪犯罪では細かい報道が多くて不安になる」という声があがる。
帝塚山大の中谷内一也教授(社会心理学)は、科学警察研究所の島田貴仁研究官と共同で、学生160人と平均約18年のキャリアがあるベテラン警察官259人を対象に犯罪発生に関する意識調査を行った。警察官の推定は実際の統計数値に近かったのに対し、学生は統計より殺人事件が多く発生していると思い、窃盗など多発している犯罪を低く見積もる傾向があった。中谷内教授は「一般の人は、めったに起きない犯罪を多く発生していると感じています。珍しさから心が揺さぶられ、感情に訴えられやすい」と指摘する。11/22岡山版
安心の風景:/5 際限のない不安 犯罪を“正しく”恐れる
犯罪不安が高まる背景を大阪大大学院の阪口祐介さん(27)=社会学=が07年、インターネットを使って調べた。18~76歳まで1338人からの回答を分析した結果、「子を持つ親」や「結婚している男性」はニュースを見る度、自分が犯罪に遭う不安よりも「子供や配偶者が犯罪被害者になる不安」が高まる傾向にあることがわかった。阪口さんは「子を持つ親は、家族を守ろうとする責任感から不安が増強するのでは。まさに『他人事じゃない』と感じているのでしょう」と話す。
一方、龍谷大法科大学院の浜井浩一教授(犯罪学)は「防犯対策で忘れてはいけないのは、犯罪を“正しく”恐れること。現実のリスクを正確に把握した上で対応しなければ、いたずらに不安がって対策を立てたのでは効果はない」と指摘する。さらに、岡山をはじめ各自治体が取り組んでいる不審者情報の配信についても、「子供の被害は発生場所や被害の程度、当事者の関係を詳細に分析する必要がある。不確実な情報を流すより、犯罪解決情報に限定した方が体感治安の改善に意味がある」という。
防犯活動を科学的な観点からとらえ直そうという動きもある。26日、東大柏キャンパス(千葉県柏市)であった「電子タグを用いた測位と安全・安心の確保」をテーマにした研究会。科学警察研究所(科警研)犯罪行動科学部の原田豊部長は「子供の防犯活動には実証的な研究が不足している。せっかくの防犯活動に無理、ムラ、極端--がないようにしたい」と語った。科警研は衛星を使って現在地を捕捉できるGPSを子供に持たせ、行動パターンを調べるなど実証的なデータを集めている。多角的なデータを積み上げることで、防犯活動をより効果的にする狙いがある。また、別の調査で判明したのは「登下校時より、帰宅した後の方が子供1人になる時間帯が多い」ということだった。登下校のみならず、帰宅後に外出する子供への対応は今後の課題だろう。
それにしても、子供は一体、いつまで見守ればいいのだろう。地域防犯活動の背景には際限のない不安が透けて見える。作家の川端裕人さんは、記者の取材に「見知らぬ人を不審者として他人を信じるなと教えられた子供がどんな風に育つのか」と指摘した。子供の命にかかわるリスクは、犯罪より交通事故や災害、疾病のほうがはるかに高い。将来的には科警研の研究成果を活用するなど、客観的な証拠とリスク評価を基にした防犯対策が必要だ。11/29岡山版
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PTA再活用論―悩ましき現実を超えて (中公新書ラクレ)/川端 裕人