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2009年1月12日

 復元工事の進む金沢城河北門で上棟式が行われた。数ある建築儀礼の中でも最も重要な式典であり、人間で言えば「成人式」にあたる

建築物は城郭や伽藍(がらん)など規模が大きくなればなるほど、工事途中での事故や崩壊の危険が増す。まず土台を固め、柱を立て、梁(はり)や桁(けた)が組み合わさった骨組みができて初めて安定した姿形になるのである

地鎮祭や立柱式など工事初期に安全を祈る儀式が多いのはそのためだ。上棟式を迎えれば「工事は7割方終えたに等しい」と言われ棟梁(とうりょう)の喜びもひとしおだが、完成までに残る3割は7割以上に重く、気を引き締める節目にもなる

人間も幼児は弱い。病気にもなり事故に遭う危険も多い。初誕生や七五三などの人生儀礼が幼い時に集中するのはそのためで、両親や祖父母は節目節目に無事の成長を祈る。成人式はその仕上げだ

二十歳の若者に人生の7割を終えた意識はないだろう。が、20年間で築いた土台と骨格が後の人生を大きく左右するのは間違いない。守り育て、骨組みを作ってくれた親に感謝し、試練と希望に満ちたこれからの時間を大切に使ってほしい。


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