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読むラジオ 特別記念号

「今日は一日“アニソン”三昧」 〜「アニソン三昧」3回の軌跡〜

今回は、NHK-FMの人気番組『今日は一日○○三味』から2008年大晦日にも放送し、大反響のあった『今日は一日“アニソン”三味』シリーズを追う―。

“アニソン”三味 第3弾『今日は一日“アニソン”三味ファイナル』レポート

 2008年の大晦日から2009年にかけて約15時間の生放送となった第3弾ファイナル。2008年12月31日。東京・渋谷のNHK放送センターは人であふれていた。「アニソン三昧」の収録スタジオ周辺にも、さまざまな年齢、雰囲気の人々がいる。実はみな「紅白歌合戦」の関係者たちだが、そんな彼らがスタジオ前の「今日は一日アニソン三昧Final」という表示を興味深そうに見ては通り過ぎていく。やはりアニソンは、年代、ジャンルを問わず関心を集めるようだ。

 朝9時15分、“目標200曲”を掲げてスタートしたファイナル。司会はアニキの愛称でおなじみアニソン界の帝王・水木一郎さん、声優・歌手の緒方恵美さん、そして藤崎弘アナウンサーだ。作家別特集を大きな柱にすえ、アニソンなんでもリクエスト、ガンダム大特集、マクロス大特集などをはさんだ構成に、次々とゲストが登場するという豪華な1日。午前中だけで1万通を超えるメールが殺到したことからもアニソンファンが待ちに待っていたことがうかがえる。

 午後の部のトップで登場したスタジオゲストは、この日、「紅白歌合戦」で『崖の上のポニョ』を歌う大橋のぞみちゃんと藤巻直哉さん。「すでに緊張しています」と言いながらも、楽しそうに「崖の上のポニョ」をめぐるエピソードを語りスタジオを去っていった。

 ここでファイナルの舞台裏をのぞくと、副調整室には膨大なCDが用意されていた。目標200曲だがリクエストに応えるためにはその倍以上をスタンバイ。それでも用意していない曲のリクエストがくるとスタッフがNHK内のアーカイブス資料室に走ることになる。またキャラソン(キャラクターソング)系のCDはNHKに保存されていないものが多いため、直接レコード会社から大量に借り出して準備をしていたが、それでもスタッフの意表を突くようなリクエストが来ることが…。そんなときは急きょ、レコード会社から放送中にCDを届けてもらうという光景も見られた。

 さて午後になって緊急事態が発生!!  なんと「アニソン三昧」のホームページアクセス数が1分間に1万件以上というすさまじい現象が起き、一時的にシステムトラブルが発生!!すぐに復旧したが、リスナーの反響の大きさに改めて驚かされた。

 午後の部、「ガンダム特集」に登場した2人目のゲストはアムロの物まねでおなじみの若井おさむさん。ラジオにも関わらず、アムロ風衣装を身につけ「この姿のまま地下鉄というモビルアーマーに乗ってきました」というノリのよさにトークも盛り上がった。

 午後4時過ぎには5万通を超えるメール、300枚近いファックスが届く。曲の合間、スタジオから出てきて、こまめにファックスをチェックする緒方恵美さん。「メールももちろんうれしいけれど、直筆のファックスからは送ってくださった方のエネルギーがバンッ!と伝わってくる感じがしてうれしいですね」とのこと。「この番組そのものが私の活力であり、元気の源。放送しているうちにどんどん熱くなってくるんです(笑)。みなさんにも元気になってもらえるんじゃないかな」と話してくれた。

 そのころ連続して曲がかかっている間に高山哲哉アナウンサーが現れた。2006年5月に衛星第2で放送した「アニメソング大全集」の司会をつとめた縁で、アニキの水木一郎さんに差し入れを届けに来たという。「局内でお正月番組の準備をしながら聞いていたんですよ。そろそろアニキの声のためにも甘いものが必要になるころかなって」と高山アナ。スタッフの勧めで予定外のゲスト出演を果たして再び局内に消えた。

 マラソンランナーのような司会をつとめる合間、ふと見ると進行表の片隅にさらさらと仮面ライダーの絵を描くアニキの姿が。放送はまさに「石ノ森章太郎特集」の真っ最中。「石ノ森先生、直々に教わりましたからね」と言うように巧みな筆致。

 そんなアニキにアニソンについて聞いてみると「アニソンというのは幅が広くてね。すべての音楽を集めているといっても過言ではないんですよ。ポップス、ロック、演歌もあれば音頭もある。そのうえ、テーマもロボットや宇宙、スポーツ、恋愛とさまざま。コメディーからシリアスなものまで人間の夢や希望をかなえてくれるのがアニメでしょう。僕も自分の歌に励まされることが多いんです」。

 この番組を「歌手冥利に尽きる」と言うアニキが、歌手生活40周年から41周年へと向かう年越しを「カウントダウンライブ」で飾ってくれた。

 そして2009年1月1日、午前0時30分。かかった曲175曲、事前メール2万通、当日メール8万通、当日ファックス約1000枚、放送当日(12月31日)番組ホームページアクセス数は紅白歌合戦に匹敵する334万強であった。

 「アニソン三昧」を送り出すスタジオは、ゲストを含め、めまぐるしい人の出入りや次々とはき出されるファックスとCDの山で雑然としていたが、実に楽しいワンダーランドのような場所だった。長時間のナマ放送にも関わらず、出演者もスタッフも決してテンションが下がることがなく、むしろ時間がたつほどいきいきとしてくるように感じられたほどだ。圧倒的な数字が語るリスナーの熱い思いが、見えないパワーを注入していたのかも知れない。

※当日のスタジオの様子はこちらから
(最新情報が表示されていますので、画面下へスクロールしてご覧ください)

15時間の放送も無事終了し、今や人気シリーズとなった『今日は一日“アニソン三味”』
制作者は、この状況をどうとらえているのだろうか? “アニソン”三味を担当しているプロデューサー澤口好夫さんは、過去2回の放送をこう振り返る。

“アニソン”三味 第1弾

 「今日は一日“アニソン”三昧」、その記念すべき第1弾は2006年5月3日。ゴールデンウイーク真っ只中だった。

 「メールでリクエストを募ったところ、何千通でもすごいと思っていたのに1万通を超えていました。パソコンを使う人とアニソンファンがリンクしていることは予想していたのですが、驚くほどの反響の大きさでした」NHKに送られるメールも大量だが、さらにネット上には「アニソン三昧」の掲示板が出現。生放送中、ラジオを聞きながら次々と書き込んでいくという現象が起きていた。

 第1弾では、TVアニメを放送したテレビ局ごとにアニソンをまとめてオンエアーするという企画を実施した。民放キー局からスタートして各局1時間ずつという構成だった。ところが「どんどん時間がオーバーしてNHKまで回らなかったんです(笑)」というハプニングも。「アニメはNHKが後発ですから、他局の時間を短くして強引にかけるというのも違うと思ったんです」

 午後12時15分、『鉄腕アトム』でスタートした「アニソン三昧」は、深夜1時までの放送で129曲をオンエアー。「できる限り、曲をかける」(同)という番組の基本姿勢が、これだけの曲数につながった。番組後半には、アニソンでもやや特異な『鳥の詩』をオンエアーしたところ、「まさかNHKで聞けるとは!」というリスナーの掲示板への書き込みが殺到。いい意味での期待を裏切ることになった。

“アニソン”三味 第2弾

 そして第2弾「アニソン三昧SS(セカンドステージ)」は、ゴールデンウイーク前半の2007年4月30日。この日は、第1弾で盛り上がったリスナーに、いきなりガツンと先制パンチを浴びせるかのような曲でスタートした。1曲目が『鳥の詩』、そして2曲目が『踊る赤ちゃん人形 NHKにようこそ!』というユニークな選曲。

「きっとこういう曲は深夜に近くなってからかかるだろうと油断していると思ったんです。ちょっと驚かせたくて(笑)」(同)と、送り手も楽しみながらの第2弾が始まった。実は第2弾の放送が発表されたとたん、ネット上の掲示板では第1弾を録音したテープを聴きながら白熱した討論が繰り広げられるといった現象も起きていたのだ。放送中、NHKに寄せられるメールも1秒間に100通を超えるなど、やはりアニソンファンの熱い声が続々と届いた。

 しかし「アニソン三昧」は、決してパソコンを駆使するリスナーだけが楽しんでいるわけではない。ファックスで寄せられるリクエストもユニークなもの、かわいいものとさまざまだ。精緻なイラスト入り、あるいは幼い字で書かれたリクエスト曲など年代も幅広い。それだけに選曲にも工夫をこらした。

「ゴールデンウイークの渋滞に巻き込まれて子どもも奥さんも不機嫌な顔をしている。そんな雰囲気が悪くなった車内に、お父さんの好きな曲が流れてきたら楽しいんじゃないか。そんな情景をイメージしたんです。昔好きだったアニメのことを子どもに話してあげる。今度は逆に、いま子どもが大好きな曲が流れてきて会話がはずむという感じですね」(同)

「80年代を2時間特集してほしい」と言った具体的なリクエストも多いが、「30分40分という単位で“金太郎飴”のような選曲」を心がけた。その結果、第2弾は151曲のオンエアーを実現した。

― こうして3回にわたって放送した「“アニソン”三昧」は、2008年12月31日(2009年1月1日前0:30)をもって幕を閉じたが・・・本当にファイナル???