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【コラム】音楽会で目の当たりにした秩序と無秩序(上)

 今月2日夕刻、ソウルの世宗文化会館ではソウル市立交響楽団による新年の音楽会が開催された。演奏されたのはベートーベン交響曲第9番の『合唱』。指揮者の鄭明勲(チョン・ミョンフン)氏率いるソウル市交響楽団は日々成長を重ねている上に、昨年放映されたドラマ『ベートーベン・ウィルス』の反響もあって、前売り券は早くから売り切れとなった。

 そのため会場にはクラシック音楽のファンだけでなく、普段は音楽会など見向きもしないであろう市民や子供たちの姿も数多く目についた。そのため演奏中に騒がしくならないか心配もしたが、幸い曲の合間に拍手が起こったり携帯電話が鳴り響いたり、また子供の泣き声が聞こえるようなことはなかった。ステージの上に「ソウル市立交響楽団」が登場したとしたら、客席には「ソウル市民教養楽団」のメンバーともいえる観客が座っていたのだろう。ある大都市を代表する交響楽団の演奏を、以前よりもはるかに成熟した市民と共に鑑賞できるという楽しさは、ある意味音楽を通じて得られた喜び以上のものだった。

 ところがこの幸福感は会場を出た瞬間にもろくも崩れ去った。

 公演終了後の世宗文化会館ロビーには、観客のための特別な席が準備された。複数のテーブルに果物やジュースなどが置かれ、呉世勲(オ・セフン)ソウル市長と指揮者の鄭明勲氏が登場して挨拶をしたのだ。

 その場にいた人たちは二つの種類に分かれた。一つは内側で二人を囲む人たちで、彼らは一斉に携帯電話を取り出し、市長と指揮者の写真撮影に夢中だった。写真を撮るために後ろから押し寄せ、「失礼します」の一言もないまま周りをかき分ける無礼な人たちも数多く目についた。彼らから押しのけられ、その場には到底立っていることもできなくなった。

 もう一つの種類は後ろにいた人たちで、彼らは準備された果物や菓子にしか関心がなかった。誰かに食べられる前に自分が食べることに熱中していたのだ。ウエイターたちは「市長と指揮者の挨拶が終わってから召し上がってください」と制止したが、彼らの行動を止めるには到底役不足だった。「皆様のために準備されたものです。どうぞお召し上がりください」という案内が終わるころには、テーブルの上はイナゴの大群が過ぎ去った後のように食い荒らされていた。音楽会の感動と余韻を分かち合おうと待っていた人たちは、苦々しい表情でその場を後にした。

姜京希(カン・ギョンヒ)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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