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【主張】タクシー強盗 仕切り板で模倣犯防ごう
大阪や兵庫で年末から年始にかけて、タクシー強盗が頻発している。運転手2人が犠牲になった事件では、犯人はいずれも逃走中だ。再発防止のためにも、警察当局は犯人検挙に全力を挙げてもらいたい。
タクシー運転手の強盗殺人事件は昨年末、兵庫県稲美町と大阪府東大阪市で相次いで起きた。運転手はいずれも後部座席から刃物で首を切られて殺されたうえ、売上金が奪われた。年が明けても、大阪府内の4カ所でタクシー強盗が相次ぎ、うち2件については容疑者が逮捕された。容疑者の一人は「新聞でタクシー強盗を知り、金が手に入ると思った」と供述している。今後も各地で模倣犯が出る可能性もある。
運転手は「前方」だけでなく、「後方」の乗客にも神経を注がなければならなくなった。
防犯対策としては、運転席と後部座席との間にアクリル製の仕切り板や、防犯カメラの設置があげられる。車外に異常を知らせる非常灯の設置も効果的とされる。
平成16年にタクシー強盗が頻発した際、警察庁は仕切り板と非常灯の設置などを盛り込んだ「防犯基準」を定めた。しかし義務規定ではないため、最低限の防犯対策である仕切り板の設置率は全国で50%程度にとどまっている。
とくに関西府県の設置率は低く、事件が頻発した大阪は16%、兵庫は25%にとどまっている。東京の78%、名古屋の74%に比べて、極端に低い。
大阪の場合、数十年前まではほぼ全車に設けられていたが、対話を重視する地域性や運転席を倒せないことなどから、設置率は年々低下していったという。
大阪の業界では急遽(きゅうきょ)、全車に仕切り板の設置を呼び掛けることを決めた。国土交通省も全国の業界団体に改めて「防犯基準」を徹底するよう指示した。
タクシー業界は平成14年の数量規制の自由化によって、全国的に車両台数が急増し、現在は約20万台にのぼる。過当競争のうえ、景気の悪化が追い打ちをかけた。売上高の大幅な減少によって、運転手の労働環境など待遇も急速に悪化した。
頻発した事件で、全国の業界も危機感を募らせている。仕切り板の設置だけで犯行が完全に防げるわけではなく、業界を挙げて運転手の教育訓練などさまざまな安全対策にも取り組んでほしい。