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韓国の鉄鋼業界に押し寄せる寒波

40%減産・年棒の返納など、来年の不景気に耐える踏ん張り

輸出も内需も10%減、加えて為替レートで被害…構造調整の可能性も 

過去10年間好況に沸いた韓国の鉄鋼産業が、最近の世界的な金融危機による輸出不振と急激なウォン安により収益性までもが悪化し、大きな困難に直面している。写真は全羅南道光陽のある製鉄所の作業風景。/朝鮮日報DB

 東部製鉄は今年1年間、課長級以上の幹部社員と役員200人余りが年棒の30%を自主的に返納することを決定した。人的な構造調整をする代わりに賃金を減らす「ジョブ・シェアリング」方式で2009年を乗り切ろうという構想だ。

 東部製鉄がこのような困難に直面しているのは、国内外の景気沈滞によって鉄鋼の国内需要および輸出が大幅に減っているのに加え、忠清南道唐津の電気炉工場の新設投資により資金事情が苦しくなっているからだ。東部製鉄の関係者は「まだ最終決定されてはいないが、係長級以下の一般社員の賃金もある程度下げることが避けられないようだ」と語った。

 昨年第3四半期(7-9月)まで高い成長傾向を示していた鉄鋼業界だが、第4四半期(10-12月)に入り世界的な不況が押し寄せる中、年棒の削減や休職、減産を行うなど非常事態経営に突入している。

◆年棒の返納、有給休暇の実施に走る企業が続出 

 ポスコなど溶銑を作る企業からホットコイル(熱延鋼板)の供給を受け冷延鋼板に加工・生産している冷延メーカーの状況は最も厳しい。冷延鋼板を買う必要がある自動車・家電・建設など主な業種が不況に見舞われ、需要が大幅に減ったからだ。その上、世界的な金融危機により海外への輸出も思わしくない状況にある。

 冷延業界のビッグスリーといわれる東部製鉄、現代ハイスコー、ユニオンスチールは先月から減産などにより在庫減らしに乗り出しているが、売り上げの不振に金融市場の冷え込みまで重なり、一部には資金調達が困難になるメーカーまで現れている。

 冷延メーカー各社にホットコイルを供給しているポスコもまた、売上債権(受取手形や売掛金)の急増で頭を痛めている。ポスコの売上債権の規模は、上半期の2兆2000億ウォン(現在のレートで約1432億円、以下同)台から最近では3兆5000億-3兆6000億ウォン(約2278億-2343億円)台に急増した。企業別で見ると、最近1-2カ月の間に売上債権が1000億ウォン(約65億円)以上に膨れ上がったところもある。

 ポスコ側は「金融市場の冷え込みで代金の支払いを延期するものであり、返せないわけではないことから、大きな問題ではない」としているが、内部では売上債権への対策に腐心している。

 現代製鉄も、原油価格が下落する中、中東向けの輸出が大幅に落ち込んだのに加え、韓国国内の建設景気が冷え込んだことにより、品目別に10-40%の減産を行うなど、非常事態経営に突入した。

 鉄鋼業界はこれまでの好況で積み上げた現金が十分にあるため、当面は構造調整に乗り出すことはない。しかし、年棒の返納、賃金3割カットでの有給休暇の実施などの手法で人件費の節減に乗り出す企業が続出している。

 今年は、アジア通貨危機当時の1998年以来11年ぶりに韓国国内での溶銑生産量が1.6%程度減少すると予想されており、一部構造調整が避けられないという見方も出ている。韓国鉄鋼協会も近々、自動車業界や石油業界などと同様、政府に対し鉄鋼業への対策支援を要請する方針だ。

 サムスン証券のキム・ギョンジュン・アナリストは、「今年は輸出・内需いずれも10%程度市場が縮小し、鉄鋼業界にとっては苦しい年になるだろう。取り扱い製品により、一部の業種では過剰な設備投資に対する構造調整が避けられない可能性もある」と語った。

◆原材料輸入の比重が高く、ウォン安の被害は雪だるま

 鉄鋼業界を悩ますもう一つの変数は為替レートだ。主な鉄鋼メーカーは、原材料である鉄鉱石や有煙炭、中間材のスラブ(厚い鉄板で、鉄鋼製品の中間素材)などを海外から輸入しており、ウォン相場の下落による直撃弾を浴びている。

 ポスコや現代製鉄、東国製鋼など韓国を代表する鉄鋼メーカー各社は、昨年第3四半期に各社2000億-6000億ウォン(約130億-390億円)もの大規模な為替差損を出した。鉄鋼メーカーは、原材料を輸入する際の金融負担を減らすため、まず銀行から代金支給をしてもらい、6カ月-1年後に返済する輸入ユーザンスという手法を利用している。

 その結果、一昨年や昨年初めごろ1ドル=900-950ウォンで輸入した鉄鋼材の代金を、現在の1ドル=1400-1500ウォンで決済することで、損失が雪だるま式に膨れ上がっているというわけだ。

 鉄鋼業界は、来年にはこうした為替差損がさらに膨らむことを懸念している。外国為替の事情により、レートが1ドル=1500ウォン以上になる可能性もあるということだ。

 鉄鋼業界の関係者は「ウォン相場が現在よりもっと安くなると、来年の第2-第3四半期までに1兆ウォン(約651億円)以上の為替差損を被る鉄鋼メーカーが続出するだろう。政府は、貿易金融を通じ支援する策を取るべきだ」と語った。

崔有植(チェ・ユシク)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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