長崎市の新市立病院と日赤長崎原爆病院を統合・移転する県の提案に、同市のプロジェクトチーム(PT)が懐疑的な見解を示したことに対し、県側は9日、「原爆病院と統合しなければ、高機能病院を運営するのは困難」と強調しつつも、市側が指摘した疑問点については従来見解を繰り返すにとどまった。市PTは1月末までに県案への評価をまとめる方針だが、両者の亀裂は深まっている。
市PTの高比良実市企画理事は同日の市議会厚生委員会で、市側質問に対して県が昨年末に示した回答について「医師確保の確証が得られるものではない」などとする見解を表明。委員からも県の回答に批判が上がった。
一方、県側は同日の県議会厚生環境委員会で「医師確保のためには(県案の)600床以上を確保して安定的経営をすることが重要」として、市が計画する現地建て替えでは対応できないと強調。ただ、医師確保などの市側懸念については「医師の研修後の行き先は本人の自由意志。そこまで縛ってしまうと長崎に研修医はこなくなる」(矢野右人病院事業管理者)などと、昨年末の回答以上に踏み込まなかった。
県は同日、年末の回答では保留していた質問項目に対する回答を、市PTに文書で提出。県が提案しているJR長崎駅裏への移転に際しては、県有地約4700平方メートルを無償貸与することや、現市民病院用地の買い取りを検討することなどを提案した。
市PTは引き続き検討することとしたが、高比良理事は「土地の面積すら説明がない。県提案が良い提案かどうかも判断しかねる」と話した。
=2009/01/10付 西日本新聞朝刊=