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時評コラム

ニュース解説

医療崩壊 〜医師不足を切り口に〜(2)

救急医療に「採算性」は求められうるのか

 次は、救急医療の採算性について考えてみよう。

 救急医療では、瀕死の一人の患者に何人もの医療スタッフが昼夜を問わず、集中して治療に当たる。24時間365日救急医療を稼働させるには医師、看護師だけでなく、検査技師、放射線技師、薬剤師、医療事務のスタッフも同様に確保しなければならない。

 ただ、救急医療の性質上、そうした何人もの医療スタッフを確保していてもいつ患者が来るかわからない。十数人の医療スタッフを救急患者のために一晩中待機させていても、もしかしたらその晩はたまたま救急患者が来ないかもしれない。それでも当然ながらその日の晩の医療スタッフの人件費は発生するので、救急体制を充実させようとすれば、採算性の悪化は避けられない構造になっている。

 こうした収支の差はどう埋められているのだろうか。

 自治体病院は一般会計からの繰り入れを行い、収入の不足を補っている。また、都内のある有名総合病院は病院の所有する土地を貸し、そこに建った高層オフィスビルの土地代を病院本体に繰り入れて収支の差を埋めている。病院ランキングで上位に輝くようなブランド病院でさえも医業そのものの収入では赤字なのが、日本の医療の現状である。

 医療において経営的視点が欠けているという指摘がなされることはよくある。だが、経営的視点とはつきつめて言えば、適正な収入を得、支出を適正なものにし、適正な利益を上げることではないか。医療現場において支出の適正化はもちろん課題であるが、収入に当たる医療費をコストに見合った適正なものにしなければ、医療を立て直していくことはできないのではないだろうか。

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