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もうひとつの医師不足 解剖医、学会が専門のセンター設置提言へ (1/3ページ)
このニュースのトピックス:病気・医療
産科や小児科で医師不足が叫ばれる中、もうひとつの医師不足が、暗い影を落としている。遺体となった人がなぜ亡くなったのかを調べる解剖医だ。警察が扱った異状死体が、10年前に比べて約1.5倍に急増する一方、医者の数は年々減少しているという。欧米と比べ、極端に低い解剖率は犯罪の見落としにもつながり、「死者の尊厳」が保たれない。こうした現状に、日本法医学会は月内にも、国の予算で都道府県への「死因究明医療センター」の設置などを求める。(長島雅子)
病死が事件に
東京都府中市で昨年夏、自宅で死亡した女性が「病死」と判断されたケースが一転、傷害致死容疑事件の捜査に切り替わった。
「自分が殴った」。女性が火葬される直前、同居していた男がこう告白し、司法解剖の、死因は外傷による脳内出血と判明。警察は当初、「病死」とみて、解剖していなかった。
時津風部屋の力士暴行死事件も当初、警察は「病死」と判断。遺族が解剖を要請し事件となった。
これらは、警察で扱われる異状死体のうち、約9割は外表検査のみで死因診断が行われている実態を浮き彫りにしている。
日本法医学会によると、平成19年に警察が扱った異状死体は15万4579体。うち司法解剖が実施されたのは4.2%。行政解剖などを含めた解剖率も10.1%にとどまっている。
受け皿減少
同学会が19年、大学の法医学教室を対象にしたアンケート(61教室回答)では、非常勤職員や大学院生らを含めた教室の平均人員数は平成6年と比較して4.7人から4.0人に減少。解剖医数も2.4人から1.9人と約20%減った。
解剖医は同じ医師でも外科や内科などのように開業したり、病院の勤務医になるといった選択肢がなく、基本的に大学の法医学教室にしか就職先がない。