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【発明の名称】 歯科用インプラント及びその製造方法並びにその製造に用いる鋳造模型パターン
【発明者】 【氏名】増田 信義

【氏名】金田 克宣

【氏名】林 靖

【氏名】佐宗 隆正

【要約】 【課題】フィクスチャ−とアバットメントのネジ係合を省略してネジの破損を防止すると共に、丈夫で使い易く、しかも作りやすくて経済的に作ることができる歯科用インプラントを提供する。

【解決手段】フィクスチャ−(20)と補綴物(22)を備え、該フィクスチャ−の上部に非円形部(23)を有する孔(21) を形成すると共に該孔に対応した軸部(34)を補綴物(22)の下部に設け、該軸部をセメント接合剤を介して上記孔(21)に挿入しフィクスチャ−(20)と補綴物(22)を接合している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 顎骨に植立されるフィクスチャ−と該フィクスチャ−に装着する補綴物を備え、そのフィクスチャ−の上部に少くもその一部に上記フィクスチャ−の軸心まわりの回動を阻止するよう非円形部を有する孔を設け、上記補綴物の下部にその孔に対応して形成した軸部を設け、該軸部をセメント等の接着・接合剤を介して上記孔に挿入しその補綴物を上記フィクスチャ−に接合した歯科用インプラント。
【請求項2】 顎骨に植立させるフィクスチャ−の上部に非円形部を有する孔を形成し、加熱によって焼却可能であり該孔に対応する軸部を下部に形成し上部に印象材を保持するよう軸心方向に凹みを形成した鋳造模型パタ−ンを用い、該パタ−ンの軸部を上記フィクスチャ−の孔に挿入し、そのパタ−ンの上部に印象材を付設し、該印象材とそのパタ−ンを連結した状態でフィクスチャ−より取り外し、その印象材とパタ−ンの下に仮座を形成し、該印象材を取り除きこの位置に歯相当部分をワックスアップし、該ワックスアップした歯相当部分下の仮座を取り除き連結した状態の歯相当部分とパタ−ンを鋳型の模型として歯科用金属で鋳造し、この鋳造した金属本体に仕上げ加工を施して補綴物を形成し、該補綴物を上記フィクスチャ−に接合する歯科用インプラントの製造方法。
【請求項3】 加熱によって焼却可能な材料で本体を形成し、該本体の上部に印象材を保持するように周面に凹みを設け、該本体の下部にフィクスチャ−の上部に形成した非円形部の孔に対応するよう軸部を設けた請求項2記載の歯科用インプラント製造に用いる鋳造模型パタ−ン。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は歯科用のインプラント及びその製造方法並びにその製造の際に用いる鋳造模型パタ−ンに関する。
【0002】
【従来の技術】歯科用インプラントは、手術の回数及び使用する部材の数によって、1回法(1ピ−ス)インプラントと、1回法2ピ−スインプラントと、2回法(2ピ−ス)インプラントの3種類に分れている。
【0003】その中、1回法2ピ−スインプラントと2回法(2ピ−ス)インプラントは、顎骨に植立するフィクスチャ−と、補綴物を装着するアバットメントの2つのピ−スを用いており、そのフィクスチャ−にアバットメントをネジで止めている。
【0004】即ち、図1に示す1回法2ピ−スインプラントでは、1回の手術によってフィクスチャ−(1)を顎骨(2)に植立させ、そのフィクスチャ−の上面を歯肉(3)の表面の高さにほぼ一致させておき、このフィクスチャ−にアバットメント(4)をこれに設けたネジ(5)で固定している。この場合、アバットメントに補綴物(6)をネジ(7)で固定しており、その補綴物のマ−ジン(8)(補綴物の下端部)がフィクスチャ−とアバットメントの接合部(9)の位置になっている。
【0005】又、図2に示す2回法(2ピ−ス)インプラントは、1回目の手術でフィクスチャ−(1)を顎骨(2)内に埋入しその歯肉(3)を縫合して約3ヶ月間(骨とフィクスチャ−との癒着が完了する間)静置する。その後2回目の手術を行い歯肉を切開し、歯肉を貫通するための金等で形成したアバットメント(10)をフィクスチャ−(1)にネジ(11)止めする。次に補綴物接合用のアバットメント(4)をフィクスチャ−(1)に上記歯肉を貫通するためのアバットメント(10)を介してネジ(12)で固定する。その際、該アバットメント(4)に装着した補綴物(6)のマ−ジン(8)はフィクスチャ−(1)と歯肉を貫通するためのアバットメント(10)の接合部(9)の位置になっている。
【0006】このように、1回法2ピ−スインプラントと2回法(2ピ−ス)インプラントは、フィクスチャ−(1)とアバットメント(4)をネジ(5,12)で固定しているが、このネジはフィクスチャ−の太さが約3.5〜4mmであるために(日本人は欧米人に比べ顎骨が小さいのでフィクスチャ−を太くすることができない)約2mmと細いものになっており、又補綴物(6)のマ−ジン(8)の位置がフィクスチャ−(1)とアバットメント(4)の接合部(9)の位置になっているので、該補綴物に作用した外力がその接合部に集中した際、上記の細いネジではその外力に耐えることができず破損するということが生じている。
【0007】更に、図1に示すようにアバットメント(4)に補綴物(6)をネジ(7)で固定する場合は、このネジの締付けがしにくいと共にネジが緩むことがあった。更に図2に示す2回法(2ピ−ス)インプラントにおいては、別途に歯肉を貫通するためのアバットメント(10)を設けているのでパ−ツ量が多くなり、しかも補綴物接合用アバットメント(4)を取り付けるネジ(12)を該フィクスチャ−(1)に設けたネジ(11)にネジ込んでいるためにネジの締付強度を更に低下させている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、フィクスチャ−とアバットメントのネジ係合を省略してネジの破損をなくすると共に、丈夫で使い易く、しかも作り易くて経済的に作ることができる歯科用インプラント及びその製造方法並びに製造の際に用いる鋳造模型パタ−ンを提供しようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、フィクスチャ−と補綴物を設け、該フィクスチャ−の上部に非円形部を有する孔を形成すると共に該孔に対応して形成した軸部を補綴物の下部に設け該軸部をセメント等の接着・接合剤を介して上記孔に挿入し補綴物とフィクスチャ−を接合するようにしたものである。又その補綴物を形成する際に鋳造模型パタ−ンを用い、該パタ−ンとこれにワックスアップした歯相当部分を鋳型の模型として使用し鋳造によって形成するようにしている。
【0010】
【発明の実施の形態】顎骨に植立されるフィクスチャ−(20)の上部に、孔(21)が形成されている。該孔(21)は、上記フィクスチャ−(20)に補綴物(22)を接合するためのもので、図示のものでは上方が円錐形状に、下方が六角形状に形成されているが、これは接合する補綴物の回転を阻止するものであればよく、例えばその他三角形, 四角形等の多角形, 楕円形等の非円形部(23)を一部にあるいは全体に形成したりする。なお、フィクスチャ−の外周面は、図示の場合ネジ状(24)に形成されているが、これは平滑な軸状に形成してもよい。
【0011】歯科用インプラントには、骨量や骨質により様々な径や長さのフィクスチャ−があるので、この孔(21)をすべてのフィクスチャ−で同じサイズにしておくと、規格化されて便利である。
【0012】フィクスチャ−(20)と補綴物(22)の接合は、セメントやその他の接着・接合剤で合着され、その際合着性を高めるために歯肉縁上の露出部分を酸処理やサンドブラスト処理により粗面(25)にするとよい。
【0013】実施例では、上記補綴物を形成するために鋳造模型パタ−ン(26)を用いている。該パタ−ンには、その下部に上記フィクスチャ−の孔(21)に対応し嵌合可能に軸部(27)が形成されている。
【0014】上記パタ−ン(26)の上部には、後記のようにこれに印象材を付設したりワックスアップしたりする際にこれらを保持できるようにその周面に凹み(28)が設けられる。なお図示の場合はリング状の凹み(溝)になっている。
【0015】上記パタ−ン(26)は、成形時 熱収縮を起こさないもので、又鋳造時(後述)に容易に焼失され無害のものが好ましく、例えばポリメチルメタクリレ−ト(PMMA)等のメタクリル樹脂やAS樹脂,ポリプロピレン,ポリエチレン(LDPE)等のプラスチック材やろう材等が用いられる。
【0016】インプラントを施工する際、フィクスチャ−(20)をその上部が歯肉(3)より2〜3mm程度露出するように顎骨(2)に植立させる。
【0017】植立して約3ヵ月経過後、骨性癒着が完了したら、図4に示すようにフィクスチャ−(20)の孔(21)に上記パタ−ン(26)を挿入し、その状態で印象を採る。
【0018】印象採得後、この印象材(29)を取り外し、該印象材に上記パタ−ン(26)が付いた状態でフィクスチャ−(20)より外す(図5)。
【0019】次に、図6に示すように印象材(29)とパタ−ン(26)の下に、石膏,石灰,白亜等で固めて仮座(30)を形成する。
【0020】ここで、その印象材(29)を取り外し、図7に示すように歯相当部分(31)をろう材等でワックスアップする。
【0021】ワックスアップした歯相当部分(31)と上記パタ−ンを連結した状態で仮座(30)より取り外し、図8に示すようにこれを鋳型(32)の模型として鋳型に埋設し、これを加熱してワックスアップした歯相当部分(31)と上記パタ−ン(26)を焼却する。この焼却され空洞化した部分に、湯口(33)より溶融した白金加金合金, 銀パラジウム合金, コバルトクロム合金等の歯科用金属を注入し鋳造して金属本体(メタルフレ−ム)を作る。
【0022】鋳造後、割り出し、各種の研磨を施し、これにポ−セレン等を焼き付けしたりしてセラミックスコ−ティング等の仕上げ加工を施し補綴物(22)を形成する(図9)。この補綴物(22)は、下部に上記フィクスチャ−(20)の孔(21)に対応して形成された軸部(34)と、該フィクスチャ−の周囲に密接する側縁部(35)を有している。
【0023】この補綴物の軸部(34)をフィクスチャ−の孔(21)に挿入する。その際その接合面にセメント等の接着・接合剤を付設し補綴物をフィクスチャ−の合着接合してインプラントを完成する(図10)。
【0024】
【発明の効果】本発明は、上記のようにフィクスチャ−に形成した非円形部を有する孔に、これに対応して形成した補綴物の軸部をセメント等の接着・接合剤を介して挿入しそのフィクスチャ−と補綴物を接合するようにしたものであるから、技工し易く、かつ補綴物がフィクスチャ−に対して回転するのが阻止され使用中に緩んだり外れたりすることがなく、強固に接合され長期の使用に耐えることができる。又従来のようにフィクスチャ−とアバットメントをネジて止めるというようなネジ係合する部分がないので、ネジの破損を心配する必要もなく、丈夫である。しかも補綴物を形成するのに、鋳造模型パタ−ンを用い鋳造によって形成するものであるから、作り易い上にフィクスチャ−の各種サイズに対し少くも一種の上記パタ−ンを用いるだけで補綴物を形成することができ、経済的に作ることができる。
【出願人】 【識別番号】396006365
【氏名又は名称】株式会社ブレーンベース
【出願日】 平成8年(1996)8月26日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】井上 清子 (外1名)
【公開番号】 特開平10−57402
【公開日】 平成10年(1998)3月3日
【出願番号】 特願平8−241004