失業者対策として、23区の区役所が年末年始から相次いで臨時職員の緊急採用に乗り出した。毎日新聞の集計では、荒川など5区が直接採用や雇用支援を打ち出し、7区が計画の具体化を進める。行政の対策は融資あっせんや公共事業発注が中心だったが、悪化するばかりの状況打開のため、緊急避難的に直接雇用を始める異例の事態となっている。【井崎憲、前谷宏、合田月美】
昨年12月にいち早く雇用対策を公表した荒川区は、今月から3月まで最長1カ月、150人を限度に臨時職員を採用する。先月末の募集開始から20件近くの申し込みや問い合わせがあり、これまで13人を面接。すでに1人が区立学校の用務員補助として働き、2人が区役所等の事務補助で採用される見通しだ。
品川区は7日に対策を公表。放置自転車の警備や環境実態調査のスタッフなどで採用を進め、来年度も含めて延べ1000人余の雇用を創出するという。
「内定取り消しや派遣切りされた若者をバックアップ」と、港区は2月から、臨時職員募集(約30人)のほか、内定を取り消されたり派遣契約を打ち切られた既卒者を対象にインターンシップを実施、時給や通勤費の支給で就労支援する。
目黒区は特養施設職員の正規採用化や臨時職員枠の増加で56人、板橋区は年度末の繁忙期対策スタッフを皮切りに計40人程度を臨時採用する。
このほか、来年度までに約290人の雇用を計画する練馬区をはじめ、大田、台東、中央、豊島、北、墨田区が対策の具体化を進めている。
東京労働局によると、昨年11月の多摩地区も含めた都内の有効求人倍率(季節調整値)は9カ月連続悪化の1・07倍。企業の本社が集まる都内では、他県での求人件数も本社扱いで都内分に加えることが多く、「都内で就業を希望する人の体感的倍率は1を切っているはず」(労働局職業安定課)という。
各区の対策では原則、区民優先で採用する方針だが、区をまたいだ問い合わせも多い。猪狩廣美・荒川区職員課長は「一つの区では限界がある。他区でも対策をやってもらい、雇用不安解消につなげたい」。一方、臨時職員に採用されると雇用保険の失業給付が中断されるため、ある区の幹部は「応募をためらうケースも想定され、どの程度集まってもらえるのか」と、短期中心の対策の実効性を不安視していた。
〔都内版〕
毎日新聞 2009年1月10日 地方版