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2009-01-10 11:20:37 stanford2008の投稿

桜井淳所長の最近の講演内容-物理学者アルビン・M・ワインバーグの「超領域科学」の歴史構造-

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【講演要旨】


Ⅰ. はじめに


アルビン・M・ワインバーグ(Alvin M. Weinberg、核物理学者、1919.4.20-2006.10.18、享年87歳)は、戦時中の1945年に米テネシー州オークリッジにあったクリントン研究所(戦後の1947年にオークリッジ国立研究所に改名)に26歳の時から勤務し始め、1945-1948年の4年間、物理部門の管理職の職位に(26-30歳)、その7年後の1955年から1973年までの18年間、研究所長の職位にあった(36-54歳)。彼は、若くして際立った能力を有していたため、研究所の重要な職位に抜擢され、研究者や研究管理者として能力を発揮したばかりでなく、科学哲学の分野でも優れた業績を残し、世界をリードした。


我々が彼について認識している特筆すべきことは加圧水型軽水炉の概念の提案者であることとTrans-Scienceの概念の提案者であることであろう。


前者に対してはつぎのように評価されている。「しかし戦時中に「マンハッタン計画」で濃縮技術が開発され、核分裂性のウラン235の濃度を高くした濃縮ウランが利用できるようになり、軽水でも十分に減速材の役目が果たせるようになった。これに目をつたけオークリッジ国立研究所のアルビン・ワインバーグ(1946年、当時26歳)は、安価で使い方も熟知している普通の水、軽水を減速材として用いることを考えていた。しかも軽水はそのまま冷却材として燃料が発生する熱を取り出すこともでき、一人二役が可能である。人間が最も使いなれている無尽蔵の軽水を冷却材のみならず、減速材として用いることができれば、コスト的にも、取り扱い上でも、また原子炉システム設計上も極めて有利になる。・・・・・・しかし、水は温度が上がって沸騰すると、水と蒸気の混じり合った複雑なものとなり、原子炉内のウラン燃料の周囲で減速材兼冷却材として計算どおりの性能を出してくれるか、という点で自信がなく、おそらく原子炉が不安定になるのではないかと考えられていた。一方、水を沸騰させないようにするためには、沸点以下の低い温度で用いねばならず、そうなるとたくさんの熱を原子炉から取り出せず、動力源としては魅力がなくなり、実用的でないと考えられていた。これに対し、ワインバーク等は、それでは水を沸騰させずに温度を上げればいいのだから、水の圧力を高くして高温・高圧の液体状としてもちいればよいと、という結論に達し、ここに後に世界中で最も普及することになる加圧水型軽水炉(PWR)の概念が誕生した。・・・・・・当時まだ高圧技術が十分に発達していなかったので、水の圧力、つまり温度をあまり高くできず、熱効率が悪くなるため経済性で不利と考えられていた」(西堂&ジョイ・イー・グレイ 1993 76-77 91)。ただし、( )内は、引用者が補足した。


後者については1972年(オークリッジ国立研究所所長時代の53歳の時)に刊行された論文に記されている(Weinberg 1972)。今回は、その論文を基に、アルビン・ワインバーグが提案したTrans-Scienceの内容と歴史構造、今日的意味について吟味してみたい。Trans-Scienceは、Transに何々を越えてという意味があるため、通常、「超科学」と訳されているが、論文の内容と包含する範囲から意訳して、「超領域科学」と訳すケースもあり(藤垣 2002)、むしろ、後者の方が適切であるように思えるため、以下、後者を採用する。


Ⅱ. アルビン・ワインバーグ「超領域科学」の内容と時代背景


Ⅲ. 歴史構造と今日的意味


Ⅳ. 考察



文献

西堂紀一郎&ジョイ・イー・グレイ 1993 ; 『原子力の奇跡-国際政治の泥にまみれたサイエンティストたち-』、日刊工業新聞社。

Weinberg, Alvin M. 1972 ; Science and Trans-Science, Minerva, Vol.10, pp.209-222.

藤垣裕子 2002 ; 「第6章科学政策論」のp.150、『科学論の現在』のpp.149-179、勁草書房。

2009-01-09 22:11:30 stanford2008の投稿

今後採り挙げるテーマ-学術セミナー開催案内・セミナー改善内容・桜井淳所長講演内容等学術活動-

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今後、本欄で採り挙げるテーマは、いま以上に、非常に硬い内容に限定し、学術セミナー開催案内やセミナー改善内容、それに、桜井淳所長講演内容等学術活動にしぼります(あくまでも、ビジネス中心であり、社会背景からして、特に、重要な問題でもない限り、時事問題等の一時的なテーマは、採り挙げません)。

2009-01-09 20:30:54 stanford2008の投稿

「第6回核燃料サイクル施設の核的安全性セミナー」申込者の傾向-原子炉メーカーのエンジニア3名等-

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原子力学会から開催案内のメーリングリストが配信されてからまだわずかしか経っていませんが、今回の申込者の際立った傾向は、国内の代表的な原子炉メーカーの原子燃料サイクル課のエンジニアが3名も含まれており、講義内容の質の高さが認識されつつあり、主催者としては、狙い通りの結果に、満足しており、これに甘んじることなく、さらなる努力を積み重ねます。
2009-01-09 18:46:49 stanford2008の投稿

「第2回科学哲学セミナー」開催案内

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「第2回科学哲学セミナー」開催案内



(1)主催 桜井淳水戸事務所(代表 桜井 淳)
(2)実施概要


10:00-10:30 物理学と方法―古典力学・相対性理論・量子力学・場の理論の構造―(柳瀬睦男『科学の哲学』岩波新書(1984)と著書20冊を基に論理化)
10:30-11:00 物質の階層的構造―原子・原子核・基本粒子(クォーク等)-(柳瀬睦男『科学の哲学』岩波新書(1984)と著書20冊を基に論理化)
11:00-11:30 科学革命の歴史構造(トーマス・S・クーン『科学革命の構造』『構造以来の道』と著書20冊を基に論理化)
11:30-12:00 自然科学と社会科学の構造(著書20冊を基に論理化)
13:00-14:00 論理学-演繹法と帰納法・唯我論・不可知論-(柳瀬睦男『科学の哲学』岩波新書(1984)と著書20冊を基に論理化)
14:00-15:00 代表的研究機関の科学方法論(1)―原研の事例研究―(著書20冊を基に論理化)
15:00-16:00 代表的研究機関の科学方法論(2)―高エネ研の事例研究―(著書20冊を基に論理化)
16:00-16:30 自由討論


(3)講義担当者 桜井 淳(日本科学技術社会論学会会員。2004年4月より東大で科学技術社会論の研究を行い、社会科学で学位論文作成中)。
(4)配布資料 書き下ろし論文(当日配布)。
(5)応募資格 科学哲学に興味を持っている者(大学院生歓迎)。
(6)定員 20名
(7)実施日時場所 2009年1月27日(火)、水戸市民会館3F小会議室(水戸市中央1-4-1) 水戸市役所隣接施設(水戸駅南口徒歩5分)。
(8)申込先 セミナー事務局(申し込み先は原子力学会HPのメーリングリスト送信済み資料の関連セミナーの記載内容参照)。
(9)参加費 10000円
(10)締め切り 2009年1月26日(月)

2009-01-08 16:55:07 stanford2008の投稿

桜井淳所長から京大原子炉実験所のT先生への手紙-JCO臨界事故被ばく線量の不確実性について-

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T先生



茨城県那珂郡東海村でJCO臨界事故が発生したのは、1999年9月30日10時35分頃でしたから、今秋で、まる10年になります。


私は、事故直後、新聞社からの情報で、概要を知ることができました。しかし、被ばく線量について、信じがたい数値を耳にし、何度も聞き直しました。桁の違う値に、"ありえない"との直感が働いたためです。最初は、記者に理解力がないために、"おかしなことを言っている"と受け止めていましたが、何度聞き直しても、その数値は、放射線医学総合研究所が公表したものであることが分かり、受け入れらずを得ませんでした。それでも、事故後、わずか約2時間で評価したことに、その手順・方法・不確定要因に、疑問を持ちました


いちばん多く被ばくした従事者の被ばく線量は、16-20Gy・Eq(等価吸収線量、吸収線量(Gy)に放射線の種類によって決まる荷重係数をかけた値)であり、Gy・Eq=Svであるため、16-20Sv(ひとむかし前の単位では1600-2000rem、なお、放射線従事者の年間被ばく線量は5rem以下です)としてもよく、これまでの、広島・長崎被爆疫学調査から、6Sv(600rem)以上が致死量になっているため、その時、16-20Svの値というのは、ひとりの人間を約3回殺せる値であるということがわかりました。そして、大変なことが発生してしまったと沈痛な思いでした。それでも、重い気持ちをひきずって、私は、その日だけでも、新聞・テレビからの数十件のインタビューに答えました。


放射線従事者は、作業中に、ポケットチェンバーとフィルムバッヂを携帯することが義務づけられていますが、それらは、通常時の比較的少ない被ばく線量の測定はできるものの、臨界事故の時のような、極端に多くの被ばくの場合には、測定上限をはるかに超えてしまい、何の役にも立たなくなってしまいます。原子炉の炉心の中性子やガンマ線のような大線量の測定には、唯一、任意の金属の任意の核反応を利用した"箔放射化法"が利用されます(たとえば、熱中性子に対し、Au197(n,γ)Au198等、1MeV以上の高速中性子に対し、Fe54(n,p)Mn54等)。


JCO臨界事故の被ばく線量は、"人間放射化法"により、"中性子エネルギースペクトル"を考慮した上で、吸収線量(Gy)を評価し、急性放射線症の荷重係数をかけて、最終的な、等価吸収線量(Gy・Eq=Sv)を評価しています。"人間放射化法"とは、血液成分のNa23の存在に着目し、Na23(n,γ)Na24(半減期15時間)反応で生成されるNa24の放射能絶対値から求めます(Na23(n,γ)の中性子断面積は、小さく、臨界事故のようなわずか数msecでは、わずかな放射能しか生成できません)。


しかし、この方法は、単純ではなく、まず、手順として、(1)患者から血液を採取、(2)1cc中の構成元素の個数密度を算出(標準的な人間に対してはすでに用意されています)、(3)Na24から放出される1.369MeVのガンマ線をゲルマニウム検出器で測定することにより1cc中の放射能を測定、(4)患者の全身の"中性子エネルギースペクトル"(標準的な人間に対してはすでに用意されています)を考慮して(3)の結果から全エネルギー範囲にわたる吸収線量を評価、(5)急性放射線症の荷重係数を利用して(4)の結果から等価吸収線量を評価となります


問題点は、(a)人間の体は、大部分が水であって、高速中性子は、水で減速されるため、"中性子エネルギースペクトル"は、人間の体格によって異なり、JCO臨界事故の時のように被ばく線量を短時間で評価する場合には、個別のものを計算できる時間がないため、標準的なものを利用せざるを得ず、そのことに起因する不確定、(b)Na24の放射能は、主に、臨界事故の短時間(数msec)、熱中性子と熱外中性子によって生成され(A(E,t)=∫Nσ(E)Φ(E)dE(1-exp(-λt)))、それによって評価される中性子束から、"中性子エネルギースペクトル"を考慮し、全エネルギー範囲の中性子に対する中性子束を評価しなければならないが、個別の人間を考慮した"中性子エネルギースペクトル"が評価されていないために、ここで大きな誤差が発生しやすく、放射能測定と"中性子エネルギースペクトル"から吸収線量を評価するのは、たとえるならば、像の尻尾の大きさから、像全体を推定するような暴論です。


(c)急性放射線症の荷重係数として1.7を利用していますが、それは、放射線医学総合研究所が蓄積した知識・経験とノウハウによるものでしょうが、1.7というのは、小さ過ぎます、(d)"人間放射化法"では、中性子被ばく線量しか評価できませんが、公表値には、ガンマ線被ばく線量も含まれているとされていますが、事故後、短時間では、核分裂の時に発生する中性子とガンマ線の割合から、ガンマ線による被ばく線量を推定し、加算しているものと推察されますが、そこでも、中性子の場合と同様、"ガンマ線エネルギースペクトル"の不確実性が伴うために、誤差要因になります


JCO臨界事故の被ばく評価法は、現象を物理で考えた場合、受け入れがたいこともありますが、現場で、短時間に、即刻対応できる方法としては、唯一、実用的なものと推察します。しかし、厳密な誤差評価をしたならば、意外と大きな誤差が推定されるでしょう(公表値は誤差が小さ過ぎます)。私は、核医学が専門でないため、核医学分野のノウハウに通じていませんので、今回は、このくらいの問題提起に留めます。



桜井淳

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