9日、ガザ地区に降り注ぐように落下するイスラエル軍が放った砲弾=ロイター
【エルサレム=村上伸一】国連安全保障理事会が8日採択したパレスチナ自治区ガザの即時停戦決議に対し、イスラエルのオルメルト暫定首相は9日、拒否する方針を表明した。ガザを支配するイスラム過激派ハマスも拒否し、双方の戦闘は同日も続いた。早期停戦は難しい情勢だ。
オルメルト暫定首相が出した声明は「(ガザからの)ロケット弾が今朝も続き、今回の国連決議は実用的ではない。パレスチナの殺人組織が(決議を)守らない」としている。
ハマスはエジプトが調停する停戦案を再び協議するため、代表団を10日にも同国に送る予定。ハマスは他のパレスチナ武装組織との連名でエジプト案拒否の声明を出したが、まだ最終決定ではないとの立場だ。停戦の行方はエジプト案が次の焦点になる。
レバノンからの報道によると、同国にいるハマス幹部のハムダン氏は国連決議が「(イスラエル軍の完全撤退やガザ封鎖の解除など)我々の要求を満たしていない」と述べた。
今回の安保理決議で、イスラエルの最大の後ろ盾の米国は拒否権を行使せず、棄権にとどめて採択に協力した。これまで米はイスラエルに不利な安保理決議案を拒否権でつぶしてきた。イスラエルが、敵対的なイスラム国が多い国連の決議に従わない傾向が強いのも、米国の後ろ盾があるとの安心感があるからだ。それだけに、イスラエル政府が動揺しているとの見方が出ている。
イスラエルの有力紙ハアレツのエルダール論説委員は「イスラエルは米に甘やかされてきたが、今回は様子が違う。一番甘かったブッシュ政権が圧力をかけてくれば、次のオバマ政権はもっと厳しく対応してくると心配しているはずだ」と語った。
それでもイスラエルが決議を拒んでガザ攻撃の続行を決めたのは、譲れぬ一線があるからだ。
最も重要なのが、決議にはガザからのロケット弾攻撃や、ハマスが武器密輸に使うエジプトとの境界の地下トンネル建設について、具体的な防止措置が示されていない点だ。イスラエルは強制力のある措置を求めており、決議内容を受け入れることはできない。
こうした状況下、イスラエルは9日の治安閣議で軍事作戦の最終段階となるガザの市街地侵攻の是非を検討した模様だ。ハマスのロケット弾は住宅の密集地に隠されており、侵攻すれば多数の市民を巻き込むのは避けられない。このまま戦闘が長引けば、国際社会でのイスラエルの立場はさらに不利になる。
一方、世論調査ではガザ攻撃開始後、現政権の中道・左派ブロックへの支持が盛り返し、右派ブロックとほぼ互角になった。今のところ攻撃続行が2月10日の総選挙に有利だという結果だ。現政権は、国際社会の圧力と国内情勢の両方をにらんだ対応を迫られている。