日本の政府開発援助(ODA)予算に変動が起きた。09年度政府予算案で無償資金協力と国際協力機構(JICA)が行う技術協力の当初予算額が9年ぶりに1・3%とわずかだが、前年比増加に転じた。ODA事業量も08年度当初の1兆5724億円から09年度は1兆8000億円程度に増やされた。
昨年5月末の第4回アフリカ開発会議(TICAD4)や同7月の北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)で、ODAの増額を公約したことなどに対応した措置だ。
2000年まで世界一だった日本のODA実績は07年には5位まで転落している。欧米諸国が援助予算を増やす中で、財政再建路線に基づき、援助予算もほかの経費と横並びで減らされてきたためだ。
09年度予算でも政府全体のODA予算は前年度当初比4%減の6722億円と、減額の基調は変わっていない。
では、アフリカなどが中心となる無償資金援助の増額はどのようにしてできたのか。ODA事業量の増大は本当にできるのか。
日本の援助実績の半分近くを占める有償資金協力(円借款)の原資のひとつである過去に実施した円借款の回収金が目覚ましく増えていることが最大の要因である。
09年度は前年度より約600億円多い3800億円が原資に充てられている。財政投融資資金も増加した結果、一般会計から支出する円借款向けの出資金などは大幅に圧縮された。事業規模も7700億円から8200億円に500億円の増加である。
ODAは日本の有力な国際貢献策である。したがって、実績が減少したり、順位が大きく下がることは望ましくない。予算でODA全体の事業量確保が打ち出されたことは、一歩前進と言っていい。
では、これで日本は胸を張ることができるかといえば、とてもそうは言えない。国民総所得に対するODAの比率も米国と並び、先進国では最低水準のままだ。
しかも、予算段階での事業規模はあくまでも見通しである。円借款では計画から実施まで長い時間を要するため、すぐに成果が出るわけではない。実績の国別順位を反転させるためには、数年にわたりそれ相当の資金を確保しなければならない。そのためには、一般会計からの支出である出資金の増額も必要になる。
ここ数年、日本の援助の存在感が低下していることは間違いない。経済規模に見合った援助を展開していないからだ。援助の質を高めることは当然として、量も伴わなければならない。
ODA再生に向け、09年度の無償援助などの増額を一時的なものに終わらせてはならない。10年度にはODA予算全体を増やすなどの措置も講ずるべきだ。
毎日新聞 2009年1月10日 東京朝刊