円は昨年1年間でドルに対し20%程度強くなった。特に9月のリーマンショック以降、一時的に円は独歩高となり、80円台の円高となった。今年に入り円は90円台でやや小康を保っているように見える。日本経済に大きく影響する円ドル相場はどうなるのか。
相場を左右する要因を見ると、日本の貿易収支は従来、大幅な黒字を計上してきたが、ここへきてこの傾向は修正され、ほぼ収支が均衡している。次に日米の金利差を見ても、米金利高の状況だったが、両国とも大幅な景気減速の中、超低金利政策によりほとんど金利差はなくなった。これにより円キャリー取引は終息したといえる。
資本の動きを見ても、世界的な景気低迷で、海外投資も慎重になるだろう。日本のバブル崩壊後に期待できた海外から日本への投資も期待できず、為替相場に影響するような大きな資本の流れも起きようもない。購買力平価で見ると、1980年からの輸出物価ベースで、円は80円あたりの水準でもおかしくないとの見方もある。
こうなると、今の90円前後の相場で落ち着くのか。筆者の予想は、オバマ次期大統領の金融・経済対策に対する期待が強い中、目先、米国自動車大手3社の金融支援に注目しつつ、やや円安ドルしっかりの動きとなろう。だが、日米両国の景気対策次第でやはり大きくぶれることもあり、今年は75円〜105円のレンジと予想する。
いずれにせよ米側は、オバマ次期大統領の政策が奏功するかにかかっている。日本側は外需頼みの経済体質から、いまだ実現していない内需拡大路線への転換に真剣に取り組まなければ、円高の恐怖から逃れられないと思う。(QJ)